彼女と繋いだこの物語LAST2
気が遠くなりそうな長い時間を過ごし、時計を見ると十二時少し前だった。
三十分も小銭を弄っていたのか、俺は!
宮川さんを窺うと、彼女は変わらず下を向いていた。
ダメだ。
心の中で呟いた声がうっかり外に出してしまったかと思ったが、大丈夫だったらしい。
宮川さんの顔の位置は変わらない。
ダメだ。
俺、もうダメだ。
「すみません、先あがります」
小銭をカウンターに叩きつけ、スタッフルームへ足を速める。
「え、ちょっと榎本?」
宮川さんが動揺した声を出すが、振り向かず乱暴にドアを閉めた。
「やべー、やってしまった」
椅子にもたれかかり、頭を垂れて天井を見上げる。
告白、してしまった。
あんな、最悪な形で。
しかもたぶん、フラれた。
なにとかも嫌になって無心に天井を見上げている俺は、まるで死体のようだっただろう。
次のシフトの人が部屋に入ってきて、不思議そうに首を傾げる。
扉の向こうから「榎本どうしたの」と尋ねる声と、微かな宮川さんの声が聞こえた。
そういえば少し前、「宮川さん可愛い」と連呼している先輩に「具体的にどうなのか。告白などはしないのか」と聞いたことがある。
その時の返事が、
恋愛対象は無理。
生真面目な性格や、意外と優柔不断なとこが面倒くさい。
そういう答えだった。
《蓼食う虫も好きずき》というけれど、俺はとことん物好きらしい。
それでも恋が実るのなら、俺だけが彼女を愛してあげることが出来ればいい。そう思っていたのに。
ダメなのか、それじゃあ。
手のひらで瞼を抑え、息を吐いた。