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アリエルとアリル  作者: 第三者臨海


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21 知識の塔での調べもの



 アリルから仕向けられた暗殺者を退けてから、数日後。

 アリエルは、知識の塔に赴いていた。


 それは、この世界の全ての書物があると言われる場所だ。

 とある魔法が、自動的に世界の要所に立つ図書館内部の書物を、コピーしているらしい。


 知識の塔は、国境近くにあり、雲まで届くかという高さだ。

 外見は石で作られた頑丈な塔で、一階層の広さは都の劇場並み。


 さらに空間を拡張する仕掛けが施されているらしく、塔内部全てを歩いたものはいないとも言われている。


 そんな塔に赴いたのはアリエルだけでなくシャナもだ。


 そもそもアリエルは、以前からこの塔に何度も訪れていたシャナの勧めがあったため、訪問したというのが事の次第である。





 知識の塔の前。


 馬車から降りたシャナが過去の事について言及する。


「ちょっとした体質の問題でね、幼い事は外に出られない子供だったんだ。そんな僕を不憫に思って、両親が度々訪れていたんだよ。けれど、やりたい事があって両親亡き今も、こうして訪れている」

「やりたい事ですか?」

「僕のような思いをする子供が一人でも減るように、って」


 シャナの想いに触れたアリエルは、彼の真剣な表情を見る。


 少しだけアリエルはシャナに好意を持った。


 すると、一緒についてきたチータとザイードが二人の背後で話をする。


「すごい大きな塔です。世界にはこんな建物があるんですね」

「そうだぞ。チビ太。中には、真っ赤な湖があったり、塩でできた大地なんかもあるらしい」

「チビじゃないです。チータです!」


 毎度のやり取りをしてチータを揶揄っているザイードは、それでも周囲を警戒する事を忘れない。


 あたりに危険人物が潜んでいない事を彼は確認していた。






 知識の塔の内部で、利用届なりものを記入してから内部にまわる。


 しかし良からぬものが良からぬ企みをする事もあるため、利用時間には制限がついて、案内役という名前の監視もついてまわった。


 知識の塔の中にある書物には、使い方を誤れば危ないものも存在する。

 この世界の基本的な技術よりもさらに何百年も進んだ情報も存在するというから、当然だろう。


 事実、百何年前までは知識の塔はこの国には二つあったが、犯罪者集団に占拠された際、内部ものたちが苦肉の策で爆破したというから、アリエルも監視の存在に苦言を呈する事はない。


 アリエルは知りたい情報を、眼鏡をかけた三つ編みの若い女性案内員に伝え、その案内員の案内にそって訪れた部屋で、目的の書物を捜索する。


 そんなアリエル達が訪れたのは、塔内部にあるいくつもの部屋のなかの一つ。


 貴族向けに内装を整えられているのか、豪華なシャンデリアがつるされていたり、絨毯などがしかれている。


 知識の塔建造時は無骨な部屋の内装だったと聞くが、国の要人あ富裕層の人間が訪れる機会が多いため、整えたのだと案内が教えてくれる。


 内装に数秒程目を奪われているうちに、案内員が仕事をしていた。


 魔法でどうやってか手元に招き寄せた書物が数冊。


 彼女はアリエルに手渡した。


「仕事が早いのね」


 案内員は「制限時間がありますから」と、アリエル達に配慮したことを伝える。


 それからアリエルは、ふかふかのソファーに座りながら、シャナと共にてわけして書物を読み込んでいく。


 ちなみに護衛要員でもあるザイードとは違って、純粋にの持つ持ち件、仕事の経験積つみのために連れてきたチータには、絵本を読ませている。


 その本は違う部屋のものだが、それほど重要度が高くない本であるため、アリエル達の部屋に持ってきて読むことができたのだった。




 



 1時間ほどかけて調べたのは、魅了の力について。


 シャナも時々アリルの力の事を調べていたようだが、参考にする資料が膨大であったため、有用な資料に出会えていないらしかった。


 もちろんアリエルも、王都にいたころに色々な書物を調べてみたがこちらも成果なしだ。


 今回で当たりを引けるとは思っていないため、また何度か足を運ぶ必要があるだろう。


 ちなみに、チータのために絵本は貸し出してもらった。


 大衆に広く出回っている絵本だったらしく、それほど希少性がないため、文字の読み書きを練習しているチータのためにと、配慮してくれたのだ。







 一度屋敷へ帰ると、訪問者があるとマーカスから言われた。


 それは、嫁入りの際にも話をした、元同じ学園の生徒だった男性レオンだ。


 アリエルは、シャナに紹介した後、彼と共に客室で話をする。


 レオンは、適当な最近の話題を一通り喋ってから、本題を告げる。


「アリルが、隣国に向かった」

「なんですって?」


 その内容はアリエルにとって初耳で、驚きのものだった。


「何があったのか知らないし、何が目的なのかも分からないけど、それなりの地位の家にかくまわれているらしい」


 アリエルは頭痛を感じながらも実家について尋ねる。


「大変な騒ぎなようだ。誘拐だって言って、アリルの両親は特に取り乱して、警察に捜査してもらえるように頼み込んでいるとか」

「何も知らされていなかったって事ね」


 アリエルが同じように行方をくらましたところで、両親は慌てたりしないだろう。

 慌てふためいているのは、対象がアリルだから。

 そして、何も知らされていないからだ。


「けど、国を出ていく前に、このあたりの出身の住人を使用人として何人か雇っていた時期があったとか」

「ああ、それで……」


 別邸の有様について心当たりがあったため、アリエルはやはりアリルが手をまわしていたのだと納得した。


「アリルは隣国で石碑っていう、古代の遺物をさがしているーーなんて情報もある。用心しなよ?」

「分かった。ありがとう。それで、いくらほしいの? さっき話してた最近の情報と合わせて、そこそこの値段になりそうね」


 アリエルが情報量について思いをはせていると、レオンは指をふった。


「今回はいいや。そういう気分でもないし」

「気分って」

「思ったよりあんたと話をしてる時間、気に入ってたみたいでね」


 料金を請求しないという、レオンらしくない言動にアリエルは驚くが、彼はそれ以上応えずに屋敷から去っていくのだった。








 その日の夜 来訪者の件でシャナに尋ねられたため、アリエルは特に隠す事もなく伝えた。


 領地に関する仕事を終えたばかりシャナは、若干頬がこけており、疲れが見られたため、細部ははしょりながらだった。


 話を聞き終えたシャナは「調べるべき事がまた増えたな」とつぶやいた。






 自分の国に帰ったレオンは、幼い頃から自分の世話をしてくれている女性に声をかける。


 宮殿の隅、人目につかない所で、平民の変装をといた彼は、疲れをにじませる声だった。


「少し動きたいが、石碑の確保にはどれだけ人員を避ける?」

「現在は、私も数人程度しか……」


 問いに答えたのはこれといって特徴のない地味な女性だ。


 だが、レオンの護衛もかねているため、腕は確かだ。


 彼女は、苦労の多い人生を送ってきたらしく、30代ほどであるというのに白髪交じりであった。


 目の下には化粧でごまかしている隈があり、夜はあまり眠れないのだとレオンは把握している。


 彼は、他国の学園で学ぶために裏から手を尽くしてくれた彼女の恩には報いたいと思っていた。


「この仕事が終わったら、どこか平穏な村にでも移り住むんだな。向こうの国でちょっと貧しいけど、気の良い住民が多く暮らしている村を見つけた。ホムラン領にも近いから、いざとなったら俺の名前を出せばアリエルが助けてくれるかもしれないぞ」

「御冗談を」


 しかし、レオンの提案は本気にされなかった。


「悩む間もなく返答するなよ。このために金を稼いでたってのに」


 レオンが情報屋をやっていたのは趣味でもあったが、村に移住する際の資金を貯める目的があった。

 アリエルと同じような事をやっていた彼の心には、件の女性の存在が色濃く残っている。


 それはレオンと親しい者が見れば誰の目にもあきらかであった。


「エメロード。お前は十分に働いてくれた」

「いえ、未だ不十分です。それに、私の命は、全てあなた様のものですから」

「頑固だな」


 彼女の眼差しには主従に向ける以外の感情がこめられていたが、レオンは気が付かない。








 それから一か月ほど、塔と屋敷を言ったりきたりする日々が続き、運動不足になった。


 体が訛る感覚がしてきたため、アリエルは何とか運動をしようとした。


 しかし、何も思い浮かばない。


 忙しいシャナの邪魔をするのは憚れたが、どうにも知恵が働きそうになかったため相談することに。


 執務室で難しい顔をしていたシャナの元へ窺う。


「少し意見を聞きたいのだけれど、どうかしら?」

「妻の頼み事とあれば、時間がなくとも強引にあけよう。何か困り事でもあったのか?」

「実は……」


 シャナは嬉しそうな顔でその相談にのり、アリエルへ乗馬はどうだろうと提案してきた。


 特に断る気持ちもなかったため、アリエルは乗馬にチャレンジしてみることを決めたのだった。


 屋敷で買っている馬がいるため、自分に合う気質の馬を選び、その道の技術があるものに教えをならってスキルを身に着けることに。


 馬小屋に行くと、様々な馬がいた。

 その中で目を引いたのは、一頭の馬。


 その馬の名前はブラウン。


 明るい茶色の毛が艶めく馬で、機敏な動きをする個体だ。


 ブラウンは一目でアリエルを気に入ったらしく、すり寄ってきた。


「私と一緒に走ってくれる?」


 ブラウンは、小さく頷いた。

 その馬は、人の感情の機微がよく分かる個体だった。


 ちなみにブラウンはオスで、他の馬よりは若い方だという。


 小屋の管理人が馬の種類や性格とともに、説明してくれた。


 それから数日間、乗馬の講師を招き、簡単な手ほどきを受けて、アリルはブラウンの背にまたがる。


 馬と一緒に風を感じる運動は、アリエルにとって良い気分転換になったのだった。


 たまにチータも一緒に乗せる事があるが、ブラウンは相手の体格や技量も分かっているらしく、無茶な動きはしなかった。


 機動力を手に入れたアリエルについていくためにも、ゼイードも必然的に乗馬を習う。

 ちなみにゼイードは、アリエルとは別の黒い馬を気に入って、ブラックと名付けていた。







 そんな日々を過ごしていたある日、アリエルはとうとう知りたかった情報を得た。


 魅了の力は、女神の力である事。


 そして、女神は神話の次代から何度も転生をしているという事。


 その女神を倒すためには、この世界のどこかにある石碑を壊す事が必要だということだ。


 時を同じくして、レオンから連絡が入り、隣国で石碑が見つかったという手紙をもらった。


 アリエルの行動指針が決まった瞬間だった。




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