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アリエルとアリル  作者: 第三者臨海


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19 あやしげな雰囲気の店



 裏社会の人間に会い、護衛として雇う。


 アリエルのその提案を聞いたシャナは、驚き、硬直した。


 奇人と言われる事の多いシャナでも、その提案はまったくもって予想できなかったからだ。


「本気なのか?」


 シャナの言葉にアリエルは応える。


「冗談を言うような性格に見えますか?」


 アリエルが本気だと答えると、シャナは難し気な表情で考え込む。


「貴族社会の人間がそういった者達と繋がりを持つーーなんて事は珍しくはないが、それでも抵抗感はある」


 その言葉を聞いてアリエルは意外な思いを抱く。


 アリエルの想像以上にシャナは人の道をしっかり歩いているようだったからだ。


 効率やメリットを追い求めるなら、そういった人間の手を借りる事も厭わないタイプだとばかりに思っていたため、意外だった。


 自分の意見を口にした後、たっぷり数十秒悩んだシャナは口を開く。


「だが、今のままで良いとも思っていない。分かった。ついていこう」


 彼は、アリエルが裏社会の人間とつながりを持つ現場に立ち会うと言った。


 アリエルは、シャナがそこまで人の事情に首を突っ込むとは思ってはいなかった。


「私だけが行動すれば、いざという時に切り捨てられるはずですが?」

「君は私の婚約者だろう? 愛はないかもしれないが、運命共同体だ。迎え入れておいて、君が危険な事に遭っていたのに無関心でいられるわけがない」


 アリエルは目を丸くしながら「ありがとうございます」と言った。

 



 数日後。


 アリエルはシャナと共に領地内にある小さな村を訪れていた。


 特に特徴のない村で、目立つところがないが、だからこそ闇組織の隠れ蓑として使われていたのだった。


 アリエルはシャナと共に村の通りを歩き、目的地へ向かうために、裏路地へ。


 そのまま数分進んだのち、村の片隅に建つ、怪しげな見た目の店に入る事を決める。


 その店を見たシャナが、さすがに頬をひきつらせる。


「本当にここであっているのか?」

「はい、残念ながら」


 入りたくない気持ちはアリエルも同じであった。


 その店は紫とピンクの色で描かれた看板を掲げている。


 それだけで、奇天烈な印象を見る者に与えるが、アリエル達は入店に対して拒否感を示すのは別の理由がある。


 店の前に、無視の死骸を加工したオブジェが並んでいたからだ。


 一般的な少女の歓声から少し離れていると自認するアリエルも、さすがに躊躇った。


 店の看板にかかれている店名を確かめると、「黄泉の入口」と書かれていた。


「入ったらどうにかなりそうな名前だな」

「そうですね」


 嫁いでから初めて、アリエルとシャナの心が一つになった。


 躊躇いを覚えつつもそのままじっとしているわけにはいかないため、二人は店の中へ入る。


 扉を開けると、何とも言えない香りが鼻に着いた。


 それは、媚薬の薬品の匂いだった。


 薬草に詳しいアリエルだが、媚薬については専門外だったため、何の匂いかわからなかった。


 しかし、シャナは一瞬で正体が分かり、顔を顰める。


 ホムラン邸では、シャナの呪いをとくためにありとあらゆる薬品を研究していた時期があったため、知っていたのだ。


 当時子供だったシャナは理解していなかったが、大人になってからその正体に気づいたのだった。


 シャナには匂いに心当たりがあったが、さすがに妻になる女性にこのような場所で言うことではないと思い、口にはしなかった。


 アリエルとシャナは、店の中を進んでいく。


 店内には、いくつもの棚があったが、みな埃をかぶっていたり、汚れたりしていた。


 店の管理が杜撰であることは、店主の性格が大雑把である事を示した。


 商品を見ていくシャナは、いくつか規制されている品を見つける。


 ここにあるものは、正規ルートから仕入れた商品ではないのだろうと、シャナは結論付けた。


 シャナが見ていくと、中には盗品もあったからだ。


 店の奥に向かうと、椅子の上で眠りこけている男性がいた。


「用があるのだけど……」


 アリエルが声をかけると、眠そうに瞼を上げる。


 腹の出た中年男性で、年は40ほど。


 眠たげな垂れ目が特徴的だった。


 そんな男性店主が腹をかきながら、アリエル達に声をかける。


「いらっさい」


 彼の口から出た言葉はたどたどしく、発音も怪しかった。


 そんな店主は、この辺りでは見ない髪色と瞳の色だ。


 それは当然で、異国から流れついてきた人物であったからだ。


 彼は住民票がないため、普通の仕事ができなかった。


 だから裏路地に怪しい店を出し、秘密の仕事でお金を稼いでいたのだ。


 彼の店には裏組織の人間や、遠くから来た貴族などが足を踏み入れる。


 店の外観や内装のセンスが受け付けないというのもあるが、そういった事情があるため、アリエルはあまり長居したくはなかった。




 アリエルは懐からずっしりとした重みのある袋を取り出して、店主に闇組織の人間を紹介してほしいと伝えた。


 言葉を飾らず、まわりくどい表現を使わないストレートな要求だった。


 店主はカウンターに積まれた金貨に驚いて、椅子ごとひっくり返る。


「こりゃ、たまげたなあ。おどろきますた。事実は小説より奇なりだなあ」


 レムスターにはない言葉を口にした店主を見て、シャナは少しだけ認識を改める。


 男性店主は、アリエルが出したお金を素早く数えて計算していく。


 シャナはその男性店主について、非合法な店を出してはいるが、この地に流れてくるまではそれなりに学問を学んでいたようだと考える。




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