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アリエルとアリル  作者: 第三者臨海


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15 ボロボロの別邸



 アリエルはチータと共に、別邸の中を歩いていく。

 

 しかし、内部の設備が異常にボロいのを見て、再び天井を仰いだ。


 目につくところの多くが汚れていたり、壊れていたり、蜘蛛の巣がはっている。


 チータに自分の部屋を案内してもらっている途中のアリエルは、ここまでに起きた事を思い出す。

 

 ついさっきは、階段が崩れた。

 その後廊下を歩いていたら、床の板も外れた。


 通りかかった窓にはヒビが入っており隙間風が吹いてくる。


 廊下に飾られている絵画ははずれ掛かっていた。


 人が住んでいるとは思えない邸宅だとアリエルは思った。




 たまに使用人を見かけるが、話しかけてこなかった。


 それどころか、アリエルに冷たい視線を向けてくる。


「ねぇ見て。あれがティアホープ家の落ちこぼれの……」

「ぱっとしない人ね」

「見た目があれなら、やっぱり噂通り、大した事ないんでしょうね」


 彼女達は、ひそひそ声で話していた。


 アリエルの耳は詳しい内容が聞き取れなかったが、冷遇されているようだと気づく。


 落ちこぼれであるアリエルが、歓迎されるとは思っていない。

 しかし、使用人がこのような態度をとるのは問題だった。


 これは正直どうかと思いながら、アリエルはこれからの行動について考える。

 使用人の独断か、シャナがそう命じたかで、これからの選択肢が変わってくる。


 アリエルから見たシャナは、人を貶めるような悪い人には思えなかったため、この目の前の光景が不思議であった。




 そんな事を考えている間に、アリエルは自分の部屋に到着した。


 しかし、入室してすぐに肌寒さを感じた。


 窓が割れて、隙間風が吹いているようだった。


 アリエルの髪が入ってくる風で揺れている。


 しかしそれを誰かに指摘しても意味はない。


 アリエルはチータに礼を言って、部屋の前で待っていてほしいと言う。


「もう少し屋敷を案内してほしいから、荷物を解いた後、またお願いできる?」

「分かりました! 外に出てますね! あっ、お手伝いは要りますか?」

「大丈夫よ」


 アリエルの言葉を聞いた後、チータは部屋から出ていった。


 アリエルは手早く、部屋の中で荷物をとく。


 必要な物を出した後、再び邸宅の中を案内してもらうためにチータに声をかける。


「待たせてしまってごめんなさい。じゃあ、お願い」

「はい!」


 元気に声を出すチータの事をアリエルは好意的に見ていた。


 王都の子供達の事を思い出し、寂しい気持ちになる。




 邸宅は非常にどこもかしこもボロボロだった。


 どの部屋もまるで、手入れされている気配がない。


 アリエルは、自分をいびるためだけに建物の管理を怠るメリットはないと考えた。


 そのため、邸宅はずっと前からこうだったのだろうと推測する。


 アリエルは屋敷の状態についてチータに尋ねる。


「いつからこんな感じなの?」


 穴の開いた床を避けながら、チータが答える。


「ごほっ、分かりません。私は最近欠員を埋めるために雇われたので……。でも先輩達の話によると先代が亡くなられた後からだと。シャナ様は一度もこちらにこられないので、かなりの期間になるのではないでしょうか」


 その後、チータの話で先代が亡くなった場所がこの邸宅だと判明する。


 両親が亡くなった場所だからシャナは、長い間こちらに邸宅に足を運ばなかったのだろうと、アリエルは考える。


 主人の目がないため、その後からこの邸宅で働く使用達は、怠け放題だった。




 案内をしてもらった後、アリエルはチータに頼んで、夕食を私室に持ってきてもらった。


 食堂が埃っぽかったため、とても使える状態ではなかったからだ。


 アリエルの部屋も清潔とはいいがたい惨状であったが、食堂よりはマシだった。


「あ、あの。お食事をお持ちしました」


 チータが気まずそうに、部屋に入ってくる。


 チータが、食事のトレイをボロボロのテーブルに置いた。


 1時間も待った後、運ばれてきた食べ物はカビたパンと泥水のようなスープだった。


 とはいえ、チータに罪はないため、アリエルは「ありがとう」と礼を言う。


 チータは「ごめんなさい」と言いながら、泣きそうな顔で部屋から出ていった。


 アリエルは食事を見つめる。


 スープの湯気は立っていなかった。


 匂いも腐ったようなものだ。


 とても食べられるものではないと判断し、アリエルは手をつけなかった。


 だがその事で、チータが責められてはたまらないため、後で外に出て食事を捨てておく事にする。




 食事を捨て終えた後、アリエルは入浴のために別室へ向かった。


 チータには仕事があるので、アリエルは一人で昼間案内してもらった記憶を頼りに向かう。


 向かったお風呂はそこそこ清潔だった。


 汚れはなく、壊れている部分もない。


 来客用のものだったが、使用人が使ってるのかもしれないとアリエルは推測する。


 しかしお湯が出ないという不具合はあった。

 

 アリエルは、水だけ出して、体を濡らした布で拭う。


 冷たかったが、水があるだけマシと考え体を清めた。




 お風呂から出た後アリエルは、念のために王都から持ってきていた風邪薬をチータにあげた。


 獣人は基礎体力が高いため、風邪程度はすぐに治るはずだが、食器を下げに来たチータはかなり具合が悪そうだったからだ。


「これ、使って」


 アリエルから、薬を受け取ったチータは目を丸くする。


「良いんですか?」


 チータは一瞬だけ喜んだが、使用人だからと断ろうとした。


 しかし、人にうつすかもしれないものは、早く直さなければならないとアリエルが言いくるめる。


 チータはそれもそだと納得し、薬を受け取ったのだった。


「ありがとうございます!」


 チータの笑顔を見たアリエルは、将来薬師になるのも良いかもと思った。




 夜の時間。


 アリエルは、かび臭い部屋のベッドではなく、着替えの服を敷いた床で寝る事にした。


 室内には、明かりになるような物がなく、そういった物ももらえなかったため真っ暗だった。


 しかし、アリエルは、それに関しては慣れてるため、平気だった。




 眠りについたアリエルは、幼い頃の夢を見る。


 家族旅行で遠方の地を訪れた時の事だ。


 森の中を散策しているうちに、アリエルとアリルは家族とはぐれてしまった。


 歩き回っているうちに、文字のかかれた大きな石板を見つけたのだった。


 アリルはその後から、アリエルの事を嫌うようになっていった。


 最初にアリルに吐かれた暴言は「お姉ちゃんなんて、大嫌い」だった。


 言われたとき、アリエルは何が原因か分からずに、とても戸惑った。


 それから、両親もアリエルを嫌いようになり、アリルばかりを構うようになった。


「アリル一人で十分だったわ」

「アリエルなんて生まなければよかった」


 その頃のアリエルは、変わってしまった家族の態度にとても傷ついていた。


 元の中の良い家族に戻りたいと、色々な事をしたが結局努力は身を結ばなかった。


 手料理をふるまおうとして、包丁で大怪我をしても、家族はアリエルの事を嫌ったままだったのだ。


 そんな過去の事を思い出させる短い夢はすぐに終わってしまった。




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