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アリエルとアリル  作者: 第三者臨海


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11/21

10 卒業式予行練習と二度目の事件



 冬から春にかけて、気候が穏やかに変わっていく頃。


 卒業式に向けて学園の講堂での準備が進められていく。


 アリエル達は椅子やテーブルなどを講堂に運び込む。


 アリルは(自称)友人やとりまき達にちやほやされながら、複数人で一つの物を運んでいたが、アリエルは椅子もテーブルも全部一人で運んだ。


 エイガスが手伝おうかと申し出たが、それも断って。


 それらの準備が終わった後、式の練習を始める。


 準備の最中、出勤するはずのカイラスの姿が学園にない事が教師たちの話題に上っていた。


 アリエルはその話を耳にしつつも、特に深刻な事ではないと聞き流す。


 その後、本番の式の流れを把握するために、教師の指示と説明を受けながら式を親交していった。


 入場と学園長からの祝いの言葉、教師や来賓の言葉。

 などなど。


 後は、卒業証書の授与や、在校生のお祝いの言葉なども。


 全部で二時間ほどあるその工程は、生徒達を退屈させるのには適役だった。


 換気のために開けられた窓から、ちょうど良い感覚でそよ風が吹いてくるのが眠気に拍車をかけるのだろう。


 アリエルの横に座った生徒も、時々頭をかくりと下に落としては持ち上げている。


 アリエル達は基本的には、椅子に座って話を聞くだけだが、だからこそ退屈が睡魔を育てるのだ。


 船を漕ぐ生徒達が非常に多い。


 何度か教師が叱責するのをアリエルは見ていた。


「あなたたち、気を引き締めなさい。大事な卒業式だと言うのに」


 立っている教師達は、責任ある立場という事と、やる事が多いという点で、さすがに眠くなる事はなかった。


 しかし、生徒達の近くで着席している足の悪い教師などは、船を漕ぎ始めている。


 それを見たアリエルは、何か引っかかるものを感じる


 アリエルは首を傾げながら、自らの鼻を鳴らす。


 なぜなら、かすかに匂うからだ。


 講堂には花などはなく、部屋の空気は基本的に無臭。


 だというのに、かすかに柑橘系の果物のような匂いがしていた。


 アリエルは風の流れが低い位置に流れていくのを感じる。


 考え事しながらもアリエルは、匂いの元を探すために周囲に視線を動かす。


 しかし、何が原因なのか分からなかった。


 そうこうしているうちに、少し離れたところで座る生徒達が3人まとめて頭の位置を落とした。


 深い眠りについているのか、教師に叱責されても起きない。


 それを無感情に見つめていたアリエルは、原因に思い至り立ち上がった。


 すると、柑橘系の匂いがしなくなる。


「アリエルさん?」

「どうした。座りなさい」


 生徒達を見張っていた教師達の不可解そうな言葉を聞きながら、アリエルは空いている窓の近くへと向かう。


 そうこうしている間にも、さらに何人かの生徒が眠りについた。


 周囲がざわめきうるさくするが、彼らは目覚めない。


 アリエルが窓に近づき、そこにあるものを観察する。


 窓際に、小さな花束が置いてあった。


 その中は、スリープレモングレード。


 柑橘系の果物のような匂いを発する花が束ねられている。


 スリープレモングレードは、薬草の一種で、人を眠らせるために使われる事が多い。


 異変を察知したエイガスが、こちらに向かってくる。


「どうしたアリエル」

「これ、人を眠らせる薬草よ。誰かが置いたみたい」

「悪戯か?」

「だといいんだけど」


 アリエルは教師達にも、エイガスに話した事を説明する。

 みな、一斉に窓を開けて、換気を促した。


 眠っている生徒達は起こされて、卒業式は中断。


 教室で待機するように命じられた。


 花は教師達に回収され、アリエルも教室に行くように命じられる。


 後でアリエルは、カイラスが今回の件や不審者侵入の件に関わっているとされ、指名手配されているという噂を聞いたのだった。


 そして、その日姿を見なくなったのは彼だけではなかった。


 情報通のレオンも、同時に学園に来なくなった。


 変人であるものの、他の生徒と分け隔てなくアリエルに対して平等に接するカイラス。


 情報通として金になるならどんな人間でも依頼人として扱うレオン。


 その二人はただでさえ交友関係の狭いアリエルの、顔も知りの大部分だ。


 そのため、彼らの顔を見なくなったアリエルは、寂しさを感じていた。


 そんなアリエルを気遣って、エイガスがよく話かけてくれるようになったのが、彼女にとっての救いではあった。




 卒業式まで残りわずかとなった日の事。


 アリエルは学園の教室で次の授業の準備をしていると、変な集団が入ってきた


「大人しくしろ!」


 30代から40代くらいの男性たちだ。


 全員武器を持っている。

 様子からして、訓練とかではなさそうだとアリエルは推測する。


 そう思った理由はそれだけではない。


 時計塔の上で見た顔が混ざっていたからだ。


 教室に入ってきた彼らは、アリルの命を狙っていた。


 彼らは、アリルに改造した猟銃を向ける。


「アリル、お前に話がある。他の生徒に危害を加えられたくなければ、俺達についてくるんだ」


 アリルは震えながら、真っ青になった。


 アリエルはまたなのかと呆れる。


 アリルはまるで物語の主人公のようだと、アリエルは思った。


 しかし物語と異なるのは、アリルの性格が主人公のように善良でも正義感に満ちあ増えているわけでもないと言う点。


 何かしらの恨みを買ったのだろうと推測して、観察し続けるが。その点についてはよく分からなかった。


 犯人たちは余計な事は離さなかったからだ。


 理解しているのは、アリルが敵に回したのは複数人で、おそらく何らかの組織であること。


 なおかつ、社会の闇と呼ばれるような部類である事だ。


「また、アリルさんが狙われるなんて」

「一体どうしてなんだ」

「この間も、似たようなことがあったばかりじゃないか」


 クラスメイト達が騒ぐが、不審者集団に武器を向けられて静かになる。


 正直アリルはどうなっても良いが、進んで巻き込まれる人間が多すぎるとアリエルは思った。


 アリルはともかく、クラスメイトを見捨てるのは後味が悪いと思ったのだ。


 目の前でアリルが武装集団に連れていかれながら、クラスを出ていこうとする。


 アリルはこんな時でも演技が徹底しており、成すすべもないか弱い少女を演じている。


 連れていかれたアリルの未来を憂いてか、生徒達が小声で何かを言っていた。


「おい、どうする?」

「決まってるだろ。アリルさんを助けないと」

「どうやってだよ」


 下手に暴走されたら、死人が出てしまうだろうとアリエルは推測する。


 武装集団はアリルに話しかける。


「アリル・ティアホープ。おかしなことをしようとするなよ。お前のようなクズ女でも、こんな状況で生徒達を巻き込めるわけはないだろう?」

「何を言っているのかわかりません。ですが、お友達を巻き込むわけにはいかないというのは同感です」


 そう言った後、アリエルは大人しく、彼らに従い教室の扉から出ていった。


 そんな彼女達の姿を見届けたクラスメイト達がこれからの事で話し合う。


「アリルさんを助けににいくべきだ」

「先生に知らせるべきよ」

「それより警備の人間だろ!」


 だが、彼らは冷静ではいられない。


 割れた意見がまとまるにはまだ時間がかかりそうだった。


 アリエルは、自分の席を立ち、教室の扉へ向かう。


 非常に面倒くさいものの、アリル達を追いかけるしかないと判断した


 アリルがへたな行動に出た結果、他の生徒に被害が出たら後味が悪い思いをするからだ。


 アリエルは教室を出て、こっそり移動。


 校舎の外へ出る。




 他の教室はまだ騒ぎになっていなかった。


 校舎も静まり返ったままだ。


 まだ、アリエルのクラスメイト達は教室内で言い合いを続けていた。


 アリエルはクラスメイト達の判断力のなさを嘆くと同時に、余計な手出しをしでかさない事にほっとしていた。




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