二人の想い…
フォルセティとあたしは中央の統括者の部屋で向き合っている。何度も出会い別れを繰り返して‥同じ時を生きる者としてまた出会った。これから先は一緒の時を生きる。
「エイル 久しぶりだな。元気そうで良かった。」
「ええ 元気よ。ありがとう‥全て思い出したのかしら?」
「ああ全て‥魔力も戻った。まずは皆んなと同じ様に襲撃事件から語ろうと思っている。自分の手で自分の感情とその時の思いの全てを自分の言葉と文字で…」
フォルセティは語り出した。自動書記の文字が紙に言葉を綴り出した。
襲撃事件のある少し前からフォルセティは感じていたのだという。魔力が何かにピリピリと反応しているのを‥ザワザワとする感覚があるのを‥幼かった彼は急に怖くなって両親に伝えた。両親はそんな反応をする我が子の様子を見て異常を感じその原因となっているだろう魔力をもう少し大きくなる迄、抑えておこうと思いその魔力を体の中に眠らせその時がきたら自然に蘇るようにしたという。そのニ日後に襲撃事件が起きた。突如 爆発音が聞こえ地鳴りがして大きな振動を感じた。部屋で遊んでいた彼の耳に外の悲鳴や名前を呼ぶ声が聞こえた。彼は耳を塞ぐような仕草をした。
そして彼の両親が慌てて彼の部屋に飛び込んで来ると、父親が彼を抱え込むように抱き上げ魔法で彼を自分の身体に括りつけた。そして母親の手を引くと家の外に出た。フォルセティの目に街のあちこちから上がっている炎が見えたという。(話す彼の声に震えが混じる。)その中を逃げ惑う人達。泣き叫ぶ子供の声‥襲われている街の人‥(彼の手がガタガタと震え出した。あたしはその手を自分の手で優しく包む。)父親はそれを遮るようにマントを被せたそうだ。それでも焼け焦げる臭いや熱さは彼に恐怖を覚えさせたらしい。水の魔法の使い手だった父は自分達の周りに水の結界を張り、風の魔法の使い手だった母はその風の力を自分達に纏わせかなり早いスピードで裏道から森へ抜けたという。
「追手はいないようだ。でも早目にここから離れよう。」
そう言った父の声が幼かった自分の中で印象に残っていると言った。
「あれは 俺が狙われているだろう事を両親は分かっていたのかもしれない‥」
フォルセティは言った。
そしてそこから南支部へ入り実家へ逃げ込んだようだとフォルセティは語った。
「俺は襲撃事件以降は南支部で生活していたから、その後の様子はわからない。だから俺の体験した襲撃事件はここまでだ。事件が収まるまで街にいた人達はきっと大変だったろうと思う。今の平穏な毎日が続く事を願っているが怪しい動きは確かにある。全員が揃った今 皆んなで協力してこの平穏な毎日を守っていきたいと思っている」
宙を見てフォルセティは言った。その声に力強さが戻っていた。
沈黙が少し続いた後、不意に彼の眼差しがあたしを捉えた。
「エイル 俺達は何回も出会った。そして俺が十九歳の時 君は俺の彼女になった。あの頃 俺は君に会えればそれで幸せだった。でも時間と共に一緒にいたい‥離れたくない‥離さないへと気持ちは変わっていった。でも俺達の付き合いは両家から反対された。俺の両親は魔力の強い君が俺を狙っている者たちの仲間ではないかと疑ったから‥君の両親はすでに中央に入っていた君のパートナーが魔力が全く無く魔力を注いでも、それを保てない俺ではパートナーとして務まらないと思ったから‥そして俺達は忘却の薬を飲まされてお互いを忘れた。」
「いいえ 忘れたのはあなただけ…あたしも薬は飲まされたけど目が覚めても忘れていなかった。あたしには忘却の薬は効かないのだと神殿の妖精が教えてくれた。あたしは忘れた振りをして過ごしてきた。でも再び出会った時は心が弾んだ。でもその気持ちは持ってはいけない感情なのだと、許されない想いなのだと自分を律した。そしてあなたに会わないように会わないようにと行動していた。それでも会ってしまうのがあたし達のようで‥そしてあなたは矢に射られた。あなたが危険に晒されるのはわかっていたのに…自分の気持ちで動いてしまったあたしは、忘却魔法を使って再び忘れさせた。ごめんなさい。あなたを守りたかったの…」
フォルセティはあたしの隣へと移動すると、あたしの手を握って言った。
「でも俺は自分の力で記憶を取り戻した。そして魔力を解放した。俺は君と同じ中央の統括者‥これから長い時を一緒に過ごして行く。それは俺が望む生き方だ。」
彼が優しくあたしを抱きしめた。




