事件 2
あたしとカイとフローラは西支部と北支部で起こった 暴動を調べてみる事にした。南支部と東支部で育ったあたし達は、守る為に行方不明になってしまった子供達と同じ年代でありながらその概要さえ殆ど知らない。自分達が育った所を調べてみたが、その記録に詳細はなかった。西支部 北支部でも調査し情報を集めてもらった。記事にはただ暴動が起きた事と子供達も襲われた事、終結したが犠牲者と行方不明者がいる事が記載されているだけだった。
あたし達と同じ年代の者達は幼かったせいか、覚えている人は少ないようだ。上の年代の人達は口が重く、その事は思い出したくもないと言って話してくれなかったそうだ。
もっと詳しくと思って調べていたが、話してくれても記事の内容と同じだったようだ。そんなある日 酒場の隣りの席で酔った人が小声で何か言っていたので気付かれないように聞いていたら
「俺は 長い時を生きる一族の一人なのに何故 認められない。魔力が僅かだからか!それでも俺は覚えている。皆んなはあの暴動を思い出したくないって言っているけど、本当ははっきり覚えてないからだ。目の前で魔法の閃光が走り多くの人が傷ついて倒れていくあの惨状を‥俺は両親に抱き上げられ逃げた。何故 皆んな覚えてないんだ。」
と言っていたと報告を受けた。気になった情報員はその者と飲み友達になって、両親とも親しくなったと言っている。見張りはついていないらしい。
年代はあたし達と同じ年代位 そして一族の名前が出ている事‥あたし達はその人と両親と会う事にした。
場所は南支部と西支部の境界の街フロン‥南支部のメンバーが経営しているサンというホテルにあるレストランの個室。
あたし達は約束の時間よりも早く来て部屋で待っていた。ドアがノックされる。情報員に案内されて男性とその両親が入ってきた。両親は入って来るなり言った。
「私達と同じ長き時を生きる一族の方々ですね。それも語り継ぐ者の名称を持つ方々。」
「はい そうです。」
あたしは答えた。
「始めまして 俺はチャーリー・スペクターです。」
「あなたは まもなく魔力が解放されます。」
「中央西の長となる方です。俺達と一緒で同じ時を生きる者となります。」
フローラとカイが言う。
「やはりそうでしたか。この子は本来 西支部の長となる者でした。しかし あの暴動で中央西の長となるべき者の人生が絶たれたのです。そしてその証しとなる魔力がこの子に降り注がれたんです。その時この子の魔力は心の奥底に隠した後だったのです。ですからその魔力が残っていた為、忘却の薬は効かずこの子は全てを覚えていた。それを隠しながら過ごしてきたのは辛かったと思います。」
「でも 暴動の事を残さなくてはなりません。その恐怖もその時の彼の思いの全ても、覚えていた辛さも…あたし達は語り継ぐ者として残さなくてはなりません。同じ様な事が起こった時 少しでも早く対処出来るように…でもあたし達が一緒にいる事で辛さが少しづつ緩んでいけばとも思っています。」
あたしは言った。
「時は満ちたようです。俺が魔力が解放される手助けを少ししますね。」
カイが言った。
カイは自分の魔力をほんの少しチャーリーに流した。それがきっかけとなってチャーリーの体の中に魔力が蘇っていった。
「これでわたし達が誰だかわかるようになったかしら?」
フローラが聞く。
「はい。」
チャーリーが返事する。
チャーリーの両親から暴動の事を詳しく話してもらい、それを魔法で自動書記し暴動の記録として残した。チャーリーの両親はそのままフロンに居住する事となった。
チャーリーを連れてあたし達三人は南支部の街に戻った。
あたし達が街を離れていた間にフォルセティの潔白は証明され、結婚しないですんだようだ。
チャーリーと交流を深める為、四人で行動していたあたし達はある日 気づいてしまった。西支部と北支部の暴動は本当は次世代の東西南北の支部の長となりそうな者と中央の長となりそうな者を狙った暴動ではなかったのかと…それに気づいたからこそ一族の大人達は次世代のリーダー達を守る為 子供達の魔力を体の奥深くに眠らせて存在を隠したのでないかという事に…もしあの暴動が成功していたら次に狙われたのは…南と東のあたし達だっただろうと思った。もしかしたら暴動を起こした者達は今も次世代のリーダー達を狙って潜んでいるのではないかとあたし達は思っている。それからあたし達は警戒レベルをあげて日々を過ごす事にした。
その日チャーリーを含むあたし達四人はフォルセティとザックと一緒にランチをした。カイはチャーリーを彼等二人に友人として紹介して仲良くやっている。あたしはフォルセティと少し距離を保ったまま彼の様子を見ていた。楽しいランチを過ごし外に出たら、突然魔法閃光があたし達に向かって放たれた。魔力のないフォルセティとザックを背中に庇い結界でその攻撃を防ぐ‥カイとチャーリーが魔法攻撃を相手に放つ…その攻撃で魔法を使った者達を倒した。剣での攻撃の相手はあたしとフォルセティとザックでしていた。フローラが戦っている場所と他の街の人達との間に守護結界を張っている。また別の方向から魔法攻撃が飛んでくる。あたしはその攻撃を自分の魔法攻撃で打ち消しそのまま相手に攻撃をした。あたしが魔法攻撃をすると同時にフォルセティに向かって矢が放たれたのがわかった。矢はフォルセティの背中に刺さった。フォルセティは崩れるように倒れていく。
あたしは矢を射た者を魔法で倒し残りの者達も一気に動けなくする。そのままフォルセティに駆け寄った。
「フォル フォル‥」
あたしはフォルセティの体を抱き起こした。そして治癒魔法をかけ忘却の魔法もかけた。そこに他の皆んなも駆け寄ってきた。あたしはカイに耳打ちした。
「フォルセティさんには、忘却魔法をかけたわ。ザックさんにお願い」
カイは頷くとザックに忘却魔法をかけた。
「これで よかったのか?」
カイがあたしに聞く。
「ええ これでいいの‥わかっていた筈なのに‥あたしの側にいたら危険な目に晒される事を…あたしが自分の感情を優先したからフォルセティさんがこんな事になってしまった。あたしはフォルセティさんから離れる事にするわ。後はお願い…」
あたしはその場から立ち去った。




