事件
先日 フローラから新居ができたから遊びにおいでとお誘いを受けた。
あたしは喜んで彼女の家に行った。
彼女とは小さい頃から一緒にいる事が多かった。彼女もまたあたしと同じ一族だ。そして彼女の婚約者も‥
我が一族は東西南北の部所に分かれて統治されている。そしてあたし達の世代は語り継ぐ者として、他の一族の者より永い時を過ごす者がいる。その者達は中央という特別な部所に所属する。あたしは中央に所属する者だと生まれた時から決まっていたらしい。だから魔力も大きい。今では自分の思い通りに魔力を操れるが、小さい頃は何度か魔力を暴走させた。だから魔力が落ち着く迄 別の場所で育てられた。彼女フローラとはそこで出会った。彼女の婚約者は現在は北支部のリーダーで、既に中央に所属する事が決まっている。もちろんフローラも‥中央所属が決まっているのは、まだあたし達三人だけだ。後はどんなメンバーになるんだろう‥なんて話しをしながらお茶を楽しんだ。その後 新居を案内してもらった。新居を案内してくれるフローラがとても幸せそうで それが嬉しかった。
夕飯も誘われたので、二人のお邪魔になってはと思い断ろうとしたら 既にあたしの分まで用意してあるというのでご馳走になる事にした。
ご馳走になるだけでは悪いのでデザートを作る事にした。二人で用意していたらカイ君が帰って来た。
「お帰りなさい。カイ‥あのね エイルがデザート作ってくれるって‥」
「えっ エイルちゃんのデザート!やったー」
「ラッキーだね‥エイルの料理は何でも美味しいのよ。」
フローラが言った。
「それは 聞いた事がある。楽しみー」
「えっ 何 言ってるの。」
あたしは聞いた。
「だってエイルの料理の腕って本当に凄いじゃない。魔法使わないで作ってるのに、もの凄く美味しいのよ。」
「ありがとうございます。今日も腕前 披露しますよ。本日はデザートをね‥」
「わーい やったー」
フローラとカイ君がとても喜んだ。
その様子を見てあたしは聞いた。
「もしかして 料理も目的の一つ?」
「あったりー さすがです‥」
笑い声がリビングを包む。
温かさと優しさがあたしを包んだ。
こんな空間にずっといたいな‥と思って目を閉じたらラングレー氏の顔が浮かんだ。
(フォル…)
心の中で呟く。
ご飯を食べながら、いろんな話しをした。ふと思って二人に聞いた。
「ねえ ねえ 所で式はやるの?」
「やろうと思っている。今 友達がゴタゴタしているんで、それが落ち着いたら日付け決めようと思っている。決まったら連絡する。」
あたしは返事をする。
「分かった。」
「エイルちゃん このデザート 本当に美味しい‥周りに自慢できる。エイルちゃんの手作りデザート 食べたって…」
カイ君が言った。
「またヨロシクね‥」
フローラが続けて言う。
「もう‥フローラったら‥」
あたしが言う。
その時 カイ君の電話が鳴った。
「もしもし どうした?‥何! フォルセティが‥分かった もう一度 調べてみよう…」
カイ君が電話を切る。
「もしかしてフォルセティさん不利な状態なの‥だってあの写真だって合成でしょ。」
フローラが聞く。
「ああ そうだ。俺達だから分かるが、普通は分からないかもしれない‥強力な魔法で合成してある。解除できない。」
「何があったの?フォルセティさんてもしかしてパーティの時に会ったフォルセティ・ラングレー氏?」
あたしは聞く。
(心の中がざわついている‥)
「ああ そうだ。覚えているのか?」
カイ君が言う。
「ええ カイ君の親友だって紹介された人でしょ」
あたしは答える。
カイ君は頷く‥
「実は彼の恋人の座というより妻の座かな…を狙う家門と女性が多くてな…」
「そういえば パーティの時も女性に囲まれていたわね‥」
「そうなんだ‥何と言っても家柄 立場 財産‥は文句無しの最上級…それに加えて能力はあるし、あのスタイルにルックスだ‥分かるだろう‥前に薬も飲まされたそうだ‥媚薬をね…」
「媚薬!…それは大変ね‥」
「気づいた彼は自分の家に戻り、ドアに鍵をかけてシャワーを浴びて事なきを得たそうだ。」
「そこまでやる人がいるのね…もの凄く大変そうね‥政略結婚に押し掛け結婚‥うわー気の毒ね。その上合成写真って」
(そんな事になってるなんて…)
あたしは思う。
「その合成写真はあるの?」
「ああ俺が持ってる。」
「持ってきて‥あたしが解除してみるわ。」
「分かった。」
カイ君は写真を持ってきた。
それを魔法分析してみた。やはり合成写真だった。
魔法が薬によって強化されていた。
まず合成写真を撮影する。そして写真の合成を解除する。写真の上で指を鳴らす。写真は合成前に戻った。
「さすがエイルちゃん 語り継ぐ一族の後継者」
「何 言ってるの‥カイ君もフローラも同じ一族でしょ。」
「そうだな‥俺達三人は同じ時を過ごす者。」
「ええ‥では 関わったついでにラングレー氏の現状を教えて‥」
どうやらラングレー氏は罠に嵌り、朝早くの時間帯にある令嬢と一緒にホテルから出てくる所を写真に撮られた。でもラングレー氏はその事実はないと否定している。先程の合成写真を証拠として既成事実で結婚を迫られているらしい。
「ホテルの防犯カメラの映像は?」
「何故かカメラが故障してたそうだ。」
「よくある手ね…だったらその日の行動をラングレー氏に聞けばいいじゃない。」
「聞いたんだけど‥夕食は女性と一緒だったらしいけど九時頃には別れて、その後は一人で過ごしたって言ってるんだ。確かに夕食は二人だったって証人もいるんだけど‥その後が分からないんだ。」
「そうなのね。一回調べているんでしょ。」
「ああ‥」
「その時の資料を見せて‥」
(うん?…これって‥この日って‥)
資料を見ながら思う。確かあたしと会った日じゃない‥?
「ねえ、カイ君。ラングレー氏はこの日 夕食後は一人だって言ったの?」
「そう言ってたけど‥どうした?」
「もしかしたら あたしに迷惑をかけない為かな‥日付は覚えていないからはっきりとは言えないけど、この夕食を一緒に食べたのってあたしだと思う‥もしそうなら その後二人でカラオケ行って朝五時まで歌ってたよ。カラオケで防犯カメラ見せてもらえば立証できるんじゃないかな‥それに合成写真の時間が五時五分でしょ。カラオケから写真のホテルまで五分じゃ行けないと思う。もし本人だと相手が主張しても絶対無理じゃないかしら…誰かを変装させたか、幻影魔法かなぁ」
「そいう事か‥」
「多分‥」
「あたしとラングレー氏が一緒にいるカラオケのビデオ調べてみて…日付の特定ができると思うし洋服の違いもわかると思うわ。合成写真の日付けとカラオケのカメラの日付けが同じならそれでラングレー氏の潔白を証明できるんじゃない?証言必要ならいつでもするわよ。」
「サンキュー エイルちゃん 直ぐにカラオケ店の防犯カメラの映像調べさせるよ。もう少しいてもらえるか?データ送ってもらうから‥」
「いいわよ。」
「さっき 電話してきた友達に何とかなるかもしれないと、連絡入れとくな…」
カイ君はその場で電話した。
少しするとカラオケの防犯カメラのデータが送られてきた。
「さすが カイ君仕事が早い‥」
あたしは言った。
「じゃあ 分析あたしとフローラでやっちゃうね。」
「任せた。」
カイ君が言う。
「カイ君 分析終わったよ。やっぱりホテルのこの写真とカラオケ同じ日付けだった。でも着ている洋服が少し違う。夕食を食べている方の洋服とカラオケの洋服は同じだった。カラオケから帰る前に着替えている時間はないと思うし車の中で着替えた様子もなかった。それも証言できるわ。洋服は指摘出来る部分だと思うわ。それと時間は一番 潔白を証明できると思う。」
「これで フォルセティの無実の証明が出来る。よかった。連絡入れておくよ。」
カイ君は連絡を入れた。
「カイ君 ちょっと心配な所があるのよ。媚薬まで使った人がいるってさっき聞いたんで、ビデオの映像と写真に全無効をかけていいかしら…そうすれば 薬を使っても魔法を使っても変更する事ができないから…」
「分かった。頼む‥」
あたしは全無効をかけた。




