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Femto Boy  作者: 弘田宜蒼
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行き遅れ

 そして現在。24歳の12月。

 早稲田が出演したラジオを聴いた翌朝、憂鬱を払拭させようと、ベッドの上で「っは!!」と声を張り上げたが無駄。暫くベッドでごろごろし、天井を見詰めて軽く舌を噛んだ。このまま噛み切ってやろうか? 無理すんなって。お前にそんな勇気はない。


 無職となった2ヶ月を思い返す。10月から始まったテレビの新番組。11月中旬のボージョレ・ヌーボー解禁の報道。今月に入り街で輝く、クリスマスのイルミネーション……。それらを見て、「そんな時期かあ……」と溜息を吐いた。そして止めは、昨日のラジオ。オレの人生って何なんだろ?


 1時間くらい経ってやっと起き上がり、パジャマからトレーナーとジャージに着替えて1階に降りた。時刻は10時を回っている。

 うつ病の改善は、規則正しい生活が必要不可欠。放恣に流れると社会復帰だって遅れる。自覚はあっても、現実はこの有様。


 コーヒーを飲みながらテレビを観ていると、昼になった。冷蔵庫からハムエッグと焼き鮭を取り出し、鍋の味噌汁を温め1人で食事をする。その時、昨日から泊り掛けで友人の農業を手伝いに行っていた譲一が帰って来た。「おかえり」とも言わなければ、向こうも「ただいま」とは言わない。

「お前に郵便だ」

親父の第一声。二つの封書を手渡して来た。見ると、年金についての役所からの通知と、スマートフォンの請求書だった。食事を終えて2階の部屋へ上がり、封書をベッドへ投げやった。


 ノートパソコンの前に座り、起動させてネットに繋ぐ。仕事を探す訳でもない。どのページを観るのかも決めていない。キーボードを打ち、頬杖を突いてマウスを動かすと、画面一杯にアダルト画像が映し出された。

 「気晴らし」などの言い訳はしない。「サボり」以外、何と表現出来ようか……。僕はこれを、「自覚ある腐れ」と申します。

 閲覧するのは「ギャル系」よりも「お姉さん系」。自分が如何に甘えん坊かが嫌でも解る。こういう人達と「付き合いたい」ではなく、「知り合いたい」の想いが強い。そこが、良く言えば「控え目」。悪く言えば「受身」の自分の性格を現している。


 後ろの請求書を見て、気持ちがダウン&溜息一つ。日が暮れた頃、タバコを買う序に請求書を持って外出した。銀行のATMで金を下ろす。減って行く残高を見て、気持ちがダウン&溜息。2発目……。

 コンビニでタバコを買い、スマートフォンの料金を支払った。出て行く時、雑誌コーナーに目をやると、カップルが笑顔で会話していた。正直羨ましいが、自分は彼女を作る次元にもいなければ、その器もない。気持ちがダウン&溜息。3発目……。


 夕食を済ませて薬を飲み、風呂に入ると、やっと気持ちが落ち着いて来る。夜の方がリラックスする理由、多分、夜勤の職場、残業の人、勉学に励む学生を除けば、会社や学校は動きを止める時間帯だからだ。その状態が安心に繋がる。

 皆が寝静まった頃に活動を本格化させ、世の中が教育、労働と、国民の義務を果たすべく喧騒に包まれる頃は、睡眠によって耳を塞ぐ。裏を返せば、それは自分の現状に負い目を感じている証拠でもある。引籠もりに夜型が多い理由が、何か解る気がする。


 負い目を感じるという事は、オレの心はまだ正常に動いている。という事か。

 この時になって、やっと仕事の情報を検索する。ハローワークには見向きもせず、派遣で目に留まった仕事があればWEB応募する。

 

 他に動画サイトなどを観て、午前1時頃に就寝し、午前10時前後に起床。幾ら夜の方がリラックスするからとはいえ。気持ちがダウン&溜息。4発目……。

逐一数えていたら、優に百発は超えているだろう。


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