人の本音
2月上旬の木曜日。『カフェラテ』のロケで横浜市内の屋内スキー場へ出向いた。去年の12月に初めてロケに参加した翌週、戸田さんが「直接局に来い。交通費痛いだろ」と言ってくれたおかげで、始めからロケバスに乗せて貰っている。
「1分じゃなくて1秒幾らって世界で勝負してる業界だからな。それを意識して(ナレ原を)書いてくれ」
最初に戸田さんに言われ、それからずっと胸に刻んでいる。最近はやっと訂正される事が少なくなって来た。
今月中旬放送のコーナーでは、春以降も楽しめる屋内スキー場を特集する。カメラが回り、村上がにこやかにスノーボードを披露したが、お世辞にも上手いとはいえない。そういうオレは、スキーもスノーボードもやらないのだけれど……。
子供の頃は降ると嬉しかった雪。だが年齢を重ねるにつれ、「電車は動くのか?」などと厄介な存在になった。でもこういう所の雪は、見ているだけで童心に返り、楽しい気持ちにさせてくれる。
「ああいう所にカップルで行くと楽しいだろうね」
移動中の車内で村上が言った。ロケに立会うようになって、村上の方から良く話掛けてくれるようになった。
「楽しんで楽しんで結婚。その後は、現実に戻されるってか……」
「中山さんって夢ないね」
村上は口に右手を当てて笑う。
「大学時代の女友達が結婚するんだけど、村上さんは結婚考える」
オレの質問に、村上は少し考えた。
「うーん。今は仕事かな? もっと私の事を色んな人に知って欲しいから。でも、結婚してて仕事をバリバリやってる人にも憧れる」
「キャリアウーマンか」
「今の彼、仕事に理解のある人だから」
村上は声を落とし、オレだけに聞こえるように言った。
「それは何よりだけど、今のオレが言わせたんじゃないから」
「良いよ、別に。でも……」
村上は、「他の人には黙ってて」と耳打ちした。それは言わずもがなだろう。
「了解……」
今まで色んな人の秘密や本音を聞いて来た。けど……言い易い顔してるのかねえ?
バスは交差点の信号で止まり、左に次のロケ先が見えていた。




