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Femto Boy  作者: 弘田宜蒼
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女神の前髪

 11月23日土曜日。『カフェラテ』の会議と、担当コーナーの打合せを終えた時だった。

「再来週のナレ原(ナレーション原稿)、お前書いてみるか?」

 加藤さんの言葉に絶句した。

「どうですかね? 戸田さん」

 加藤さんは戸田ディレクターを丸め込もうとする。


「うーん。まだ早いだろうけど、書かせてみるだけでも良いかもね。使うかどうかは後で判断するとして」

「ありがとうございます。良かったな!」

 加藤さんはオレの背中を『ポンっ』と叩いた。オレとしては、良かねえよ!

「僕、採用されてまだ3ヶ月ですよ?」

 言い終わるなり加藤さんの顔が険しくなる。

「お前そんなんじゃ仕事なくすぞ! 3ヶ月って、普通書かせて貰えないんだぞ。逆に考えれば女神の前髪に触れてんだよ」

 良くも悪くも女神の前髪を憂いに変えてしまう。でもそれが巨大化するのが、オレの欠点。


「お前プロレス好きか?」

 加藤さんが話題を変えた。

「ボクシングならたまに観ますけど」

「それじゃあ駄目だな」

 戸田ディレクターが溜息交じりに言う。

「素っ頓狂でも良いから何でも答えるんだよ。最近の選手の名前知らなくても、「そうですね。馬場・猪木・力道山……」みたいにな」

 加藤さんは「解ったか?」というような顔で目を合わせた。


「相手に面白い奴だなって思わせると、仕事が回って来たりするんだよ」

 戸田ディレクターが畳掛けるように付加える。

 結局、12月8日放送分を、書く事に……書かせて頂ける事になった。ナレ原といっても、スタジオにコーナー担当の村上がいて、VTRを観ながら解説するスタイル。ロケは木曜日に行なわれ、放送まで約一週間。

 

 12月1日の放送終わりに貰った完パケ(完成VTR)、過去に加藤さんが書いたナレ原と資料を、残像になる程繰返し見て書き上げ、加藤さんにチェックして貰う。VTRは、神奈川県内のクリスマスデートスポットを特集する内容。商業施設や村おこし企画のイルミネーションと、周辺の店やレストランを村上が巡っていた。


「お前ちゃんと資料見て書いたかあ? こんなナレーション聞いたって、視聴者は「観りゃ解る」ってツッコむぞ!」

 頭ごなしに言われた。

「……資料は読みました」

「読んだんなら、何でもっと情報入れねえんだよ? 只映像にある事ばっかじゃねえか。画にない事もタイミング良く伝える。基本だぞ!」

 加藤さんは「それも解かんねえのか?」といった目を向けた。


 へこんでいる暇などない。もう一度完パケと資料をよく読んで書直し、漸く納得を得られた時は、本番前日の深夜だった。それに加藤さんが加筆して本番となった。


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