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親の心子知らず
「今お帰り? 忙し過ぎるお仕事ね」
小枝子が皮肉っぽく言った。10月中旬の月曜日。24時(午前零時)近くに帰宅し、こっそり譲一のビールを拝借していた時、小枝子がトイレに起きて来た。
返す言葉も見付からず、黙って背を向ける。
「最近は家にも帰らない日があるみたいだけど?」
小枝子の口は止まらない。
「夜中に打合せがあったりするんだよ。台本の手直しならメールで送れるけど、打合せはそうは行かないだろ?」
「それは良いけど、身を粉にして満足な給料は得てるの?」
またそれか……。
でも、親にしたら当然な心配だとも思う。幾ら本採用されても食べて行けなかったら、どんなに美辞麗句を並べても、小枝子を黙らせる事は出来ないだろう。
「……もう寝る」
そう返すのがやっとだった。




