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Femto Boy  作者: 弘田宜蒼
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心機一転

 翌日の構成会議。のっけから笑顔と相槌を心掛けた。毎回話をいつ振られるかどきどきものだが、今日はスルーされて2時間が経った。企画が頓挫し、室内に沈黙が流れる。

 プロデューサーからしりとりでもやるか? と提案が入った。停滞した時のリフレッシュタイム。だが、普通のしりとりではございません。


「回遊して日本近海に来たのだが、温暖化の為北上しようか南下しようか迷っている鮭」

 と作家A氏。

「穢れた愛人を想いながら人妻が握っている、おにぎりおかか」

 と作家B氏。一回りしてまた……。

「態度と身体はでかいくせに、蚤の心臓の毒舌タレント某氏」

 と作家A氏。

「喋りは下手くそなのに何故か売れている芸人某」

 と作家B氏……なんじゃいそりゃ!


 他の人もツッコミたくなるような答えばかり。だが、場はツッコミ合いながら嬉々とした雰囲気が漂っている。放送作家は会議を盛り上げる事、既成概念を壊す事も仕事。だからこれで良いのである。

「鉢植えに使われ「これは本当の自分の姿じゃない!」と訴える洗面器」

 と作家C氏。

「水捌け出来ないだろ!」

 プロデューサー氏がツッコむ。

「ドリルか何かで底に穴開ければいけるんじゃないですかね?」

 作家C氏が自分で笑いながら抗弁する。今まで普通に答えていたオレも、一発噛ましたくなった。


「き……奇妙な物!」

「いきなりどうした?」

 ディレクター氏にツッコまれ室内に「失」が付くが笑いが起こる。たったこれだけの事でも、ちょっと自信が付いた気がした。

 

 7月に入り、木の葉は青々と輝き、夜になれば家の近くで虫や蛙達の音色が響く。今月の14日で25歳。四半世紀も生きたか……などと感慨に浸っている暇はなし。

 最近、「行くとこまで行ってしまえ!」と開直る気持ちが涌いて来た。縁起でもない。オレよりうつで苦しんでいる人達を、逆撫でする考えだとは承知している。


 でも、「規則正しい生活」が治療への第一歩の病ではあるが、不規則な環境でも不思議と気落する時は何度もあっても、仕事を早退とか欠勤は今の所一度もない。自分が知らずに何かに吹っ切れたのか、見習でも放送作家の環境が性に合ったのかは分からないが、「辞めたい」と思った事も一度もなく過ごしている。


 罷り症状が出たとしても、自分は今やりたい事をやっている。それで倒れる事態になっても、致し方ない。そう思って、残り一ヶ月の見習期間を過ごす事にした。


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