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Femto Boy  作者: 弘田宜蒼
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美しいおばさま

「頑張るのは良いけど、ちゃんと収入がある仕事に就きなさい!」

 殆ど収入がない事を心配する小枝子は、最近口喧しさに拍車を掛けている。

「あんたがやってる事はボランティアじゃない。それで身体壊したらどうするの!? 企画なんていつ採用されるか分からないし、ギャンブルと同じよ!」

 これには流石にカチンと来た。


「ギャンブルと一緒にすんなよ! 遊びでやってんじゃないんだぞ!!」

 きっと小枝子を睨んだ。最近まともに小枝子の顔を見ていない。化粧品を変えたか? 譲一の退社後に始めたディトレードで利潤を得ているのか、息子が言うのも変だが、以前よりも若々しく「おばさま」といった感じだ。

「ハハハハハッ!」

 こんな状況でも、譲一はテレビを観て笑っている。国内外の珍事や超人を紹介する番組。あんたが笑う為にその裏側じゃ、作家やリサーチャーが血眼になってネタ探しに奔走して、使えなけりゃディレクターにこっ酷く駄目出しされてけちょんけちょんになってんだよ! 番組一本一本が汗と涙の結晶なんだ!


「遊びではないんだろうけど、賭けの世界である事は違いないでしょ?」

 小枝子が沈黙を破った。

「……もう良い!」

 リビングを出て自室に戻った。リサーチしたものをまとめる仕事が、十重二十重に残っている。

 母親に抗ってはいるものの、連日の寝不足と疲労から来る倦怠感とうつで、心身は限界ぎりぎりだった。プロセスを楽しむ余裕など、夢のまた夢……。


『自分のやってる事に誇りを持て!』

 と叱咤する自分と、

『この道を突進んで良いのか?』

 と将来を不安視する自分が格闘し、生身の自分を苛む。

 でも、オレはまだましだった。周りには作家とアルバイト、二足の草鞋の人が結構いる。陣内さんも、アルバイトをしながら見習期間を過ごしたんだ。

 

 世田谷区内にある、過去の雑誌を閲覧出来る図書館へ行き、何冊も読み漁ってプリントをお願いしている間、トイレに入った。

 鏡に映った自分。随分くたびれているご様子。歯を出してにこっとしてみた。これだけでも、幾分気が晴れる気がする。

『笑顔から始めて行ったら?』

 この前、陣内さんから言われたっけか。


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