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Femto Boy  作者: 弘田宜蒼
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奮起した女

「あいつどんな感じ?」

 オフィスに戻ると社長に声をかけられた。

「まだ戸惑いの中にいますけど、私は乗越えられると信じてます」

 それは本心でもあり、希望でもあった。

 しばらくして中山君が戻ってきた。軽く気合を入れる素振りをして、ノートパソコンを起動させている。彼なりの結論がでたのだろう。


 新人の頃、私も会議で発言できなかった。デレィクターに話をふられても笑顔で返す。その繰り返し。

デレィクターは「かわいいなあ」と見逃してくれたけど、女性の先輩作家や女性ディレクターには嫌われた。

「あんたかわいさだけで乗切れると思ったら大間違いよ!」

 そう言われて落込むんだけど、微笑んで許してもらえることに甘えていたのも事実だった。


 それから1ヶ月ほど経って、先輩作家は結婚を期に退職した。内心ホっとしたのも束の間。その作家と仲の良かったディレクターが、会議が終わると不敵な笑みを浮かべて近づいてきた。

「黒木さん(辞めた作家)からの伝言。もっとしっかりした方が良い。だって」

「そうですか」

 とっさに意に介さない風を装った。


「そうですかって、あんたねえ。っま、良いけど」

 ディレクターは呆れた表情をして行ってしまった。

 私を親身に想った諫めとは思えなかったし、その言葉をそのままニヤニヤして伝えてくる方もどうなのか。辞めた作家がどういう口振りと表情で「しっかりした方が良い」と伝えたのか、容易に想像ができた。


 自分の言動が発端になっていることも棚に上げ、悔しさとやるせなさで、それから三3日間悶々と過ごした。

 でも3日目、アルバイト終わりに缶ビールを飲みながら、ある思いが涌いてきた。このまま打ちひしがれて逃げたら、私は負けたことになる。「やっぱりね」って、また嗤われる。絶対そうはならない!!

 飲み終えた缶を押し潰して誓った。それ以来、私はなにくそ精神で働き続けてきた。


 今思えば、あの時悔しい思いをしなかったら、私はとっくに辞めていたかもしれない。


 中山君、落込んだ時、嬉しい時は、気持ちを噛み締めて反芻しなさい。そうしたら、良いナレーションが書けるだろうし、共感を得る企画も生み出せると思うから。きっと。


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