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Femto Boy  作者: 弘田宜蒼
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仕事復帰

 翌週から、<レッドマウンテン>にて作家見習として雇われる事になった。

 陣内さんが教育係を務めてくれる事になり、構成会議、収録現場へ同行。他には、台本ホンを執筆するのに必要な資料をリサーチして来る。ロケハン(ロケーションハンティング)で現地へ出向き、そこで出演者にどういう事をさせるか、何処の店でロケをするか、ディレクターと打ち合わせをする。それ以外の時間は、クイズ番組などのリサーチャーを任された。


 見習とはいえ、作家に成ればノートパソコンが必要だという事で、新しい物に替える陣内さんのお古を譲受けた。

「見習だから給料は期待するな」

 坂木社長の言葉通り、仕事量にしては、3、4時間の日雇いアルバイトと殆ど変わらない。拘束時間も長く、午前中から仕事をしていようが、夜中でも構わずディレクターからお呼びが掛かる。そんな生活が、オレにも始まる訳だ。


 リサーチャーという仕事は、只椅子に座って調べていれば良いというものではない。ネットで調べ、目当ての情報が見付かれば、電話なり現地に出向いて裏を取る。中には専門家に話を聞きに行く事もあるから、一定の知識は頭に入れておかなくてはならない。

 他にも専門の図書館へ行き、資料となり得る箇所をプリントアウトして戻る。

 そうやって東奔西走して集めた資料でも、「使えねえ」と判断されれば即ボツにされる……。そんな世界だ。


「お前ここの住所確かか?」

 坂木社長が血相を変えている。

「確かですよ。直接聞きましたから」

 某キー局の深夜番組のディレクターからクレームが入ったという。

 番組は、普段見る事のないあらゆる分野の機器や職人を取り上げ、本来の用途とは違う事に使用して貰い、それが成功するか否かを、スタジオの出演者達がカジノ式に賭けるバラエティだ。


 オレはどんな難所でも進行出来る工事用機材をリサーチした。会社名は<吉村組>。23区内にある会社、の筈だった。所がADが行ってみると、「組」は「組」でも、チン&ピラの方々が集まる「組」になっていたというのだ。

「移転するなんて言ってませんでしたけど……」

「あわや入ろうとした所を、寸前で気付いて逃げ帰ったそうだぞ! ちゃんと確認して(情報を)上げろよ!」

「……済みません」

 オレがわりーのかよ……。でも、そんなコントのオチみたいな事が……あるんだねえ。そっちをネタにした方が面白いのではないか。


 クイズの問題作成も、只難易度が高ければ良いというものではない。

「1945年8月に発足し、戦後初の短命内閣となったのは何内閣でしょう?……ってお前なあ」

 ディレクターがしかめっ面をする。因みに正解は、東久邇宮ひがしくにのみや内閣で、54日間。

「こんなの誰が知ってんだよ! 解答者の世代考えてみろバカ!」

 バカとは何だよ! むしろ博識だろう。


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