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Femto Boy  作者: 弘田宜蒼
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諸行無常

 「職場見学」を始めて一週間が経った土曜日。今日、陣内さんが所属する放送作家事務所<レッドマウンテン>の社長と初対面する事になった。


 夕方に陣内さんと港区南青山の事務所へ行き、入口を入って直ぐの休憩エリアで待たされた。椅子に座って待つ事約10分。

 『ガチャ』とドアが開き、陣内さんと共にトレーナーにジーンズ姿の男性? が出て来た。立ち上がって一礼する。陣内さんがオレを紹介し、改めて自己紹介した。


「社長の坂木です。宜しく!」

 宝塚の男役のような声。差出された名刺を見て訝しくなる。

 『レッドマウンテン代表取締役社長 坂木舞』……名前も声も女性っぽい。しかし、身なりは男性……みなまでは言わないが、オレは同姓として接する事にした。

「どんな作家に成りたいんだい」

 坂木社長に訊かれた。

「ナレーションを書ける作家に成りたいです」

「そうか。これからあらゆる面で厳しいと思うけど、今の言葉を忘れないようにな。覚悟も必要だけど、プロセスを楽しむ余裕も大事だから」

 

 自分にそれが出来るか、不安になるが「はい!」と返した。うつ病を患っている事は、社長と陣内さんにだけ告げた。

 陣内さんは一瞬困惑した後、

「辛いだろうけど、無理し過ぎないように頑張って、としか言ってあげられない」

 じっとオレの目を見詰めていた。

 坂木社長も、

「本当に辛い時は正直に言え。でもそれ以外は特別扱いしないからな」

 やっぱりオレから目を逸らさなかった。


 二人共正直な気持ちだろうし、本気で理解してくれようとしている事が伝わって、ありがたかった。告白するかどうか、かなり思い悩んだ。その末に告白しようと決意した理由は、以前別の患者さんから、

「会社に伏せて症状が出た時、何故黙っていたのかと問詰められた」

 と聞いていたからだ。


 黙っていれば何故早く言わないのかと叱責され、告げれば偏見を持たれる危険性も持つ「脳の病」。微妙な目を持つ社会が悪いのか、それとも、そんな疾病を患ったこっちに問題があるのか……。


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