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Femto Boy  作者: 弘田宜蒼
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ステキな友

「うーーん……」

 企画書を見詰めたまま凝固してしまう。一服でもする事にした。

 それから1時間以上が経過……書けと言われても何も浮かばず、夕起さんが去ってからは、ずーっとテレビ三昧である。

 

 それ以外はトイレに行く度、店員やコンパニオンに「誰だこいつは?」と言わんばかりの怪訝な目で見られるだけで、なーんの変化もない。17時になると、テレビはドラマの再放送が終わり、各局報道・情報番組の時間となった。その内の一局のトップニュースに釘付けになる。

『元人気女性アナウンサー自殺』。背中にゾクッと悪寒が走った。その人は局アナ時代、バラエティ系アナで有名で、よく観ていた。去年の3月一杯で、「報道の仕事がしたい」と宣言して退社。フリーと成ってからは夜のニュース番組を担当し、バラエティには出演しなくなった。


 傍から見れば念願叶って順調な滑り出し。なのに、最悪な結末を辿った。

 報道によると女性アナウンサーは、最近うつ症状に悩まされていたという。メディアや政治の世界は、一般市民が想像し得ない事、非常識な事が現実となり得る世界だろう。だから報道を鵜呑みには出来ない。

 でもそういった世界だとしても、まさか1年も経たない内に、自分が自ら命を絶つとまでは考えない筈だ。


 何で人間ってこうなるんだよ?……他人事だが嘆きにも似た、率直な感想。れっきとした仕事を持ちながらも命を絶つ人。片や浪々としてだらだらと生きている自分……。

『お前は、温いんだよ……』

 心の声がうんざり気味に呟く。


 5、6秒後、スマートフォンがバイブした。顔に一気に血液が流れる。

 見ると、夕起さんから夕飯は何が良いかとのメッセージ。有名ファストフード四社のハンバーガーを一つずつ。それと、ポテトのLを何処か一店でお願いした。

 細やか抵抗50%。旺盛な食欲50%。どんなに沈鬱になっても、必ず何かは食べている。


 2時間後、夕起さんが夕食の袋を提げてやって来た。各店のハンバーガーが四つ。そして、ポテトのLも……四つ。

「ポテトは一つで良かったんですけどね」

「食べられるでしょ? このくらい」

 夕起さんの細やかな応酬、っか……しかしまあ、ハンバーガーもポテトも揃ってみるとかなりの量だ。

「それで書いてる訳?」

「まだ考え中……」

「そう。っま、良いけど」

 何処か含みのある言葉。オレの頭が真っ白な事を看破しているようだ。


 午前零時時過ぎ。閉店となった店内は、帰宅するコンパニオン達でざわついていた。

 店内が静けさで包まれた1時過ぎ、外気に触れようと思い、集団待機室から外に出る。疎らになった夜景を見ながら一服していると、中からスーツ姿の女性が出て来たので、咄嗟に火を消そうとした。

「っあ、良いよ良いよ。ゆっくり吸って。君が裕介君?」

「はい」

「私、ここの店長の玲子。夕起から色々聞いてるよ」

面白おかしく言ってんだろうな。あの人の事だから。

「厄介になってます」

「水曜日に夕起から個室を一つ貸して欲しいって言われたの。電話でも良かったろうに直接ここに来て」

 玲子店長は呆れた笑みを見せた。


「あまり急だから「何で」って訊いたら、「放送作家に成りたいって子がいて、その子が集中して企画書を書ける場所を提供したい」って。「力になりたいから協力して」ってお願いされたの」

「そうだったんですか。ありがたい事ですけど、あの人昔から強引なとこありますよね?」

「そうだよねえ。十代の頃から変わんない。自分より人の事ばかり心配して。親切が暴走するタイプだよね?」

「本当そうですね」

 店長と一緒に笑った。


「でもさ、裕介君の友達の中でも、ここまで面倒看てくれる子は中々いないんじゃない? 私が知ってる中でも、あそこまで慈愛に溢れてる子はいないよ」

「……ですね」

 店長の言葉と、自分の相槌を噛み締めるように頷いた。


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