1話-2
異世界ブラザーズ第二話です
魔物と主人公が織り成す物語を、どうぞお楽しみください。
異世界転移に成功してから1時間くらいが経った。
今私は拘束された状態で、魔物に運ばれている。
移動中に魔物達がが会話しているところを盗み聞きした所、私を脅したツノの男は『テフォンドール』という名前らしい。部下であろう男がそう呼んでいた。
怪しい者である私の前で堂々と言うのは良くないと思うけど。
(個人情報ダダ漏れだぞ!?気づかないのか…?
それはそうと、しばらく歩き続けてるが…一体どこへ向かっているんだろう…。)
その後、森を抜け、視界が開けたかと思った瞬間、見えたのはにぎやかな街と、宙に浮かぶ大きな城だった。
(し…城が、浮いてる!!!)
その城は土台らしき物の上に建っていて、かなり大きい。門は見えるが、階段のような、登る建築物は一切見当たらない。
(どうやって登るんだ…)
「そんなに城が気になるか?良かったな、貴様が今から行く場所はあの城の地下牢だ。堪能できるぞ。」
「 …は?地下牢?」
確かに城は気になるが、牢は流石に笑えない。
牢といえば拷問受けたり、酷い扱いされたりする所じゃないか。
(なんでこうなった…私の夢見た異世界ライフは何処へ)
流石にこの世界に無知な状態で逃げるのは得策ではないだろう。でもだからといって、一旦捕まっとこう!とはならない。
テフォンドールの足が止まった。どうやら門番に話しかけているらしい。
門番も、人間とはかけ離れた見た目をしている。
(鱗に覆われた体、長い尾。…ドラゴニュートとかそういう種族だろうか?かっこいいなぁ〜)
見つめていると、門番と目が合った。
その瞬間、ドラゴニュートの顔はみるみる険しくなり、殺気を感じる程こちらをひたすら睨んできた。
「っ……!(い、威圧感が半端じゃない、震えが…!)」
「…それくらいにしておけ、此奴は人間のように見えるが、魔力反応があった。人間である可能性は低いと思うぞ。」
「テフォンドール様…。そうでしたか。…す、すまねぇな、いきなり睨んじまってよ。」
「いえ、全然…!」
(え?私、ちゃんとした人間なんですけど!?それに私に魔力なんてものがあるはずもなく…。いや、あるなら嬉しいけどね?)
この世界の縮図があまり掴めない。
もしかしたら人間はかなり嫌われている存在なのだろうか。
人型に近いエルフのような存在はいたものの、すれ違った人々は皆人間ではなく魔物だったし。
「地下牢まで飛ばしてくれ。」
「承知しました。」
ドラゴニュートがパネルを操作すると、足元に複雑な魔法陣が展開された。
(あ、これで移動するのか)
そう気づいた瞬間、私がいたのは街の中ではなく、
―地下牢だった。
「…本当に私を閉じ込めるんですね…?もしかして拷問とか受けたり…」
「…貴様、記憶がないと言っていただろう?それが本当のことなのか分からない故、今は捕らえておくしかないのだ。人間のスパイかもしれんしな。だが、拷問はしない。」
「…そうですか」
テフォンドールは私を牢へ入れたのを確認するとどこかへ去っていった。
(尋問受けたりするのかな…。あまりにも分からないことが多すぎる。こういう時物語の主人公は情報を得ようとするはず。とりあえずやってみよう。)
私が入れられた牢は、思っていたよりも狭くなく、充実していた。
寝床は掛け布団つき、枕あり。そして驚くべきはトイレに壁があるということだ。一応囚われの身でもプライベートは守ってくれるらしい。
ありがたいことである。
何よりもありがたいのは、見張り役が先程のドラゴニュートということだ。意外と優しそうな魔物だったし、運が良ければ情報を聞き出せるかもしれない。
「はぁ〜〜〜…」
「元気ねぇな、囚われてちゃそうもなるか。何やらかしたんだよ?お前」
(相手から話しかけてきた…ラッキーなものだな…)
「何もしてない…はずです。気付いたら森にいました。(記憶喪失のフリを徹底しなきゃ。バレると多分まずい)」
「明らかに怪しいじゃねぇか!!でもお前、魔力あるんだろ、なら魔物じゃねえか。でも怪しくて、記憶喪失だから、捕らえてるってことなんだな?」
「多分そうだと思います。それで…つかぬことをお伺いしますが、魔力とは…?」
「そんなことも覚えてねぇのか。教えてやってもいいが…それで魔法使って脱出でもされたら困るしなぁ」
ドラゴニュートは優しくても、上にはちゃんと忠誠を誓った身らしい。会話自体はしてくれるが、情報はくれないようだ。
(どうしたものか…。尋問で何とかごまかせれば、ここから出してもらえるのだろうか。)
そうして無駄な時間がしばらく過ぎた。牢は充実しているが、窓が1つもないので今が朝なのか昼なのか分からない。
だが悔しいことに、布団はかなり自分好みだったので安眠してしまった。
かなり寝た気がするので多分朝だと思う。
「お目覚めかな、囚人ちゃん?」
「…!!」
「よく寝てたね、だけど…尋問の時間だよ〜〜!」
檻の外でこちらに向かって話しかけるのは、
サーモンピンク色の髪に変わった髪型、オッドアイをもつ、自分よりも小さな…
――女の子だった。
小さいと言っても、日本人平均身長から見ると高い方だろう。だが見るからに大人ではない。
そんな存在が、尋問を行えるのだろうか…だが相手は人間ではない魔物。見た目通りとは限らないだろう……
自分の中のファンタジー辞典がそう言っている。
「『ボク』が、女の子に見える?
男だよ?フフフッ、面白い人間だねぇ」
「………」
オタク文化が根強くあり、さまざまな癖のある日本に住んでいたため、男の娘はのような存在はたくさん見てきた。
(つまり…履修済みコンテンツというわけなのだ!)
「この事教えて、びっくりしなかったの、キミが初めてかも!面白い!面白いねキミ!もしかしてこういうヤツにたくさん会ってきたの?…でも、尋問しなきゃテフォに怒られるしここらへんにしとこ。」
なんかよくわからん性格してる人物が多くいるのは、異世界あるあるだろう。…だがちょっとクセが強い。
「君魔力あるんだってね?魔法、ちょっと使ってみてよ。魔法使えたら、尋問終わるから〜。」
「やり方を教えてくれませんか…?何も覚えてなくて(使えればセーフってことか!?)」
これは友達同士の談笑ではなく、私の生死を賭けた会話。嘘だとバレないように演技しつつ、真剣に答えなければいけない。
(そういえば魔力だとか、魔法だとか…何でそんなに固執するんだろう…。)
「うーん…教えてって言われてもなァ…。身体に巡ってる血を外に出そうとするカンジ。血の巡りを感じて、それを一気に出す、魔力も血も一緒だからね〜できそ?」
彼は、そっと目を閉じたかと思うと、指をピンと立てた。すると、
――指先に小さな炎が揺らめいていた。
「うまくいかなくてもダイジョブ〜。ボクが消すからねー」
(本当か…?何を試されてるんだ、何のために…?ホントにわからん。)
ここで断るとどうなるか分からないし、何より、魔法というものが実際どのようなものなのかが気になるので、実行してみることにした。
「指に…火を………くっ…」
ファンタジー作品であれば、魔力を感じる…!とかそういうシチュエーションがあるのかもしれないが、私はそんなもの一切感じなかった。何度力んでも火は出ない。
「下手だなァ、もっと、リラックスだよ〜焦ると使えないよー」
「……(貴方の説明が分かりづらいんですよ、とは言えない…)」
肩の力を抜き、深呼吸をして…もう一度。
「……おォ」
「あ……火が出てる…」
自分の人差し指に、不安定に揺れる炎があった。
彼のような綺麗な火とは言いがたかったが。
――パチパチパチパチ!!!!
「いやァ、上手いねぇ!2回で出来ちゃうんだーーすごーい!人間野郎達の細工ってわけじゃなさそーだね。よかったー」
静かな牢に響く大きな拍手とともに、賛美が送られてきた。
とても複雑な気分である。
今の彼の発言は、かなりいい情報になり得そうだ。
(『人間野郎』…門番の時といい彼といい、人間を嫌っているのは何故?そして私は人間なのに、何で魔法が使えるんだ…?)
「不思議そうな顔してるねー!何で君が人間じゃないって分かったか、聞きたい?聞きたいよね!!多分そういう事も覚えてないよね!?教えてあげるよ!」
「………なっ…!」
「人間はね、ボク達魔族みたいに魔法が使えないの!だから種族の判断基準は魔法なの。君みたいに完全に人間に近い個体は見たことないから、皆疑ったんだろうねーどう?面白いと思わない?」
「は、はは…面白いですね。」
(そういうことだったのか…。彼らが魔法に固執する理由は、この世界の人間は魔法が使えない。だから、私が人間なのか、魔物が判断するため…。)
情報を大量に手にすることができた。後に必要なのは、この牢出る方法と、元の世界に戻れないと仮定された時の、この世界での生きる術だ。
魔法が使えるなら、私はこの魔物の世界で生きていくことも可能だろう。
彼が何らかの方法で出してくれたりすればいいのだが。
「今日の尋問終わり〜、お疲れ様ァ〜
囚人ちゃん、安心して!君の未来は明るいよォ!なんてったってこのボク、『レイメイ』のお気に入りになったんだからね!」
彼……レイメイは、そう言い残し、鼻歌を歌って去っていった。
未来が明るいとは、お気に入りとは、一体どういう意味なのか。
言葉通りに捉えていいのか。
まだ私にはわからない。
第二話、お読みいただきありがとうございました!
今回は『テフォ』ことテフォンドールと、『レイメイ』が登場しました。彼らの生き方、生活をこれから物語を通してお伝えしていけたらな…と思っております!
これから他の子達も登場する予定なので、是非ご期待ください。




