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漆黒の魔王は紅き花姫を愛でる~敵国皇帝の后になりたくない鬼姫は、魔王に溺愛される  作者: いか墨ドルチェ
第一章 鬼姫の花嫁道中

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第27話 1日隊長と1日お嬢様

あけましておめでとうございます。

ご覧くださりありがとうございます。


こちらは不定期更新にはなりますが、今年もよろしくお願いいたします。

 蒼迅(ツァンシュン)は、明鈴(ミンリン)とエリックとともにしぶしぶ馬車に乗り込んだ。馬車の中に座りながら外の様子を伺うと、妙に楽しそうなしゃべり声。笑い声が聞こえてくる。


 蓮音(リェンイン)は颯爽と馬に乗り、隊員たちに声をかけていく。


「ガク、さっきも言ったように、魔物の気配を感じたら少し遠くても教えて! 倒しに行こう!」


「わかった、ガク、いっぱいみつける!」


「偉い、偉い。あと、海遠(ハイユェン)、あなたもそこから戦闘に参加して。ちゃんと弓を用意しておくこと!」


「隊長、承知です」


「個別に戦うのもいいけれども、せっかくだから確実に大量に、だけど相手の特徴に合わせて最小限の力で仕留めていきましょう」


 しばらくすると、剣護(ジェンフー)が馬を横に付けて話しかけてきた。


「娘々、楽しそうだね。ところで、どうしてあいつに勝負を持ちかけたの?」


「ああ、それね。昨日、蒼迅のことをどうしたらいいのかみんなに相談したら、明鈴が『優しくしてあげて』と言うから。それで蒼迅が喜ぶことって何だろうと考えたらこれかなと」


 それを聞いてしまった海遠が思いっきり噴き出す。「まさか、あれは優しくしてあげた結果なのか」と言わんばかりに。よく見ると香隠(シァンイン)も笑いをこらえているように肩を震わせている。


「あはははっ、いや~、さすがは隊長です! 期待を遥かに超えた行動をとってくださるとは! 蒼迅様にもきっとお気持ち届いていますよ~」


 万梅(ワンメイ)も笑いながらそう言ってくる。


 蓮音は何がそんなにおかしいのかと思ったが、みんなが笑ってくれてなんだか自分も愉快になった。


 そんな会話をしていると、早くもガクが「あっち、うし4、むこう、いく」平原を移動している一角牛が3頭いるらしい。


「ガク、そいつらは遠い、普通、近い?」


「ふつう」


「万梅、一角牛の攻撃方法と弱点は?」


「一角牛は、突撃力があって、額の角が最大の武器です。多くの者は最初の一撃で致命傷を受けます。逆に言うと、その攻撃さえかわして接近しすぎずに戦えば相手の攻撃は単調なのでそれほど怖くありません」


「うん、じゃあ、あなたならばこの面子でどう戦う?」


「そうですね、まずはできるだけ遠距離攻撃で相手の突撃力を弱めて、隙をついて左右、後ろから攻撃したいです」


「了解。じゃあ、わたしがまず一角牛の正面から相手の速度を殺す呪文をかける。万梅と海遠は側面から弓で攻撃して4頭の集団を散らして。ガクとわたしで敵をかく乱するから、その隙に、李公子と香隠は敵の後ろに回り背後から攻撃して仕留める。これで行きましょう。みんな、いい?」


一同はうなずき、それぞれ作戦の準備に入った。


 正直、この中で一角牛と互角以上に戦うことができないのは万梅ぐらいだったが、あえて蓮音はわざわざ作戦を立ててみんなにその指示通りに戦うように命令を出した。この先もっと強い敵に遭遇した際の備えと、さらにその先のことを考え、お互いの長所を生かして協力しあう戦い方をもう一度みんなに叩き込んでおきたいと思ったからだ。


 作戦は見事に成功して、誰一人傷を負うこともなく、まさに各自の最小限の力を出し合って魔物を倒した。


 蓮音は、その後も魔物を見つけるたびに同じように万梅と作戦を考え、指示をだした。昨日よりもずっと大量の魔物を相手にしたが、それでもだれ一人傷つくことなく体力も魔力も温存しながら戦うことができた。


 一方、馬車の中は結構悲惨だった。大丈夫だろうと思いつつも、蓮音がケガでもしたらと思うととにかく蒼迅は落ち着かなかった。そのうえ、エリックは存在も言っていることもマニアック過ぎて会話にならない。


 明鈴は明鈴でお上品すぎて居心地が悪い。座っている姿勢を崩そうものなら、明鈴が咳ばらいをしたり、じーっと見つめたりしてくるのだ。馬車の壁には、蓮音が取り付けた花瓶が飾ってあって、そこには剣護が蓮音に贈った花が挿してあった。姫さんが外に出たがった理由もわからなくないと思ってしまったし、この味気ない空間で花の存在が際立っているようにも感じた。


 しばらくすると、落ち着かなさそうな様子の蒼迅を見て明鈴が話しかけてきた。


「隊長、ではなくてお嬢様。お嬢様は、このまま隊長のお心が李公子に向かってしまってもよろしいのですか?」


「……いいわけねえだろう」


「李公子は、人の心をつかむのがお上手です。隊長が求めていることを先読みして叶えて差し上げています。ですので、まだ一緒に過ごした時間は少ないですが、隊長の信頼が厚いのですよ」


「んなことわかってる」


「わかっていらっしゃるのであれば結構ですわ。わたくしたちは隊長のお気持ちが一番だと思っております。ですが、お嬢様のことも応援しているのですよ。負けないでくださいませ」


 エリックは暇そうにしていたが、急に、


「もしや、蒼迅殿は姫様に惚れているのですか!? では、惚れ薬を試してみませんか? これは数滴飲んだだけで、恋をしているように体が熱くなって冷静な判断ができなくなる秘薬です。多くの場合は目の前にいる相手に惚れてしまうのですよ!」


 と、かなり危険な提案をしてきた。


 明鈴が「な、な、な、なんですの、それはーっっ」と興味津々であったが、蒼迅はさすがに、


「バ、バカかっ! そんなもん姫さんに使えるかよっ!!」


 といって拒否した。


「まあまあそう言わずに。ワンナイトラブというか、体の相性がよかったことから恋愛に発展するという話も聞かなくはないですし。あっ、持続時間を長くする薬もご入用ですか!?」


「いらねえし!」


「では、使ってみたら是非感想を!」


「だから、使わねえし!」


 そんな問答をしていたら、明鈴が顔を真っ赤にして、「あの、それ、わたくしがいただいてもよろしいでしょうか?」などと言ってくる。何に使われるかわかったもんじゃないと思い、それだったらと蒼迅は薬を受け取って収納袋に収めた。


 蓮音が提案した、隊長とお嬢様を一日交替する案は案外よかった気がする。蓮音は気分転換ができたし、炎刃隊の戦闘部隊も久しぶりに戦術に沿って戦う経験ができた。蒼迅も少しは蓮音の気持ちが分かったからだ。

最後まで読んでくださりありがとうございました!

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