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二度目の正直  作者: 夏菜木
第二章 白髪の相棒
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episode 3 『出会いと再開』

鏡を見る。俺の表情は緩んでいた。センターパートだったはずの髪型もくずれて、まるで寝坊した後のようだった。


これから俺とユウリはこのロルの村を離れるつもりだ。特に長く滞在する理由がないといったらそれまでだが、外の世界の状況を見ておきたいというのが正直なところだ。


ユウリもそれに向けてさっきから隣の部屋で支度をしている。ここは邪竜の討伐の報酬金で予約した、この村で一番安い宿だ。安いといっても酷いという程ではなく、朝食はこの村の食材の味が生かされていて美味しかったし、ベッドも十分寝られる程の質はある。


足音を近づけて、ドアを開けたのはユウリだ。


「タロウさん。私は準備できましたよ。あの、、何で鏡を見つめているんですか。別に何も付いていませんよ。」


「あっ、驚かすなよ。ノックくらいしてくれ、」


「ごめんなさい。ワタシが悪かったデス。」


まるで言わされているような口調だ。


こんなくだらないやり取りも懐かしく感じてしまうのは、悪魔との戦闘の直前は緊張感があって、まともに冗談を言い合えなかったからだろうか。


ユウリの見ている前で、額に手を当てて髪を押し上げるようにして、左右へ分けて、俺はセンターパートを完成させた。


「じゃあ。いくか。」


「そうですね。忘れものはありませんか。」


「俺は持ち物が少ないから、もしあったらすぐ気づくよ。」




風と太陽光が照らしているのは俺達だ。


どういう訳か俺は二度目の人生を歩めている、いや、二回目の世界と言うべきだろうか。いまのところ一回目の人生での出来事と、今起きている出来事は、ほぼ一致している。


これが偶然で済むはずがない。ユウリという人物がその証明だ。


ユウリはこのように最初は敬語で俺に話しかけていたが、ある戦闘をきっかけに距離が縮まった。その戦闘もそう、遠くない。


俺たちは今、ロルの村を二人並んで歩いている。邪竜討伐の報酬金がまだ半分以上残っているので、少し装備を整えたい。俺もウラヌスはあるから剣に関しては問題ない。だが、俺もユウリも服の強度が心配だ。



「ユウリ。これから戦闘は避けられないだろうし、服を買わないか。」


「そうですね。あとどのくらい報酬金残ってます?」


「25000ジュールあったのが、もう15000しかない。」


「全額使うわけにはいきませんから、一人3000ジュールまでにしましょうか。」


「お前はそれでいいのか。3000だと女性が好みそうな服は厳しいぞ。」


「いいですよ。私は近接戦闘はしないですから服は最低限身を守れる程のもので大丈夫です。」


「そういえばお前は魔法使いだったな。にしても、その杖はなかなか年季が入ってるな。誰かのお下がりか。」


そういえば、俺は長い間ユウリと過ごしていたが、パーソナルな部分はそこまで介入しなかったな。ユウリが嫌がるかもしれないと思っての俺なりの配慮ももちろんあったが、それ以上に俺が日和っていたんだろうな。こうやって新たな機会も貰えたことだし、もう少し積極的になるのも悪くないよな。


「これは、私の祖母のものです。祖母はこの一帯でも名の通っている魔法使いだったらしいです。この杖は、祖母がある竜の討伐の際に、その道中の洞窟の隠し部屋で見つけたものらしいです。相当な攻撃力を有しているのですよ。私には勿体無いほどの代物です。」


ユウリは苦笑いをしていた。まるで自分はこの杖を持つ、資格がないと言わんばかりに。


「ユウリ。お前はいつかその杖に相応しい魔法使いになれる。俺が保証する。俺も実際、邪竜討伐のときはお前に命を救われた。」


もちろんこの言葉は確証がある。俺は半年先の未来を見てきたようなものだからだ。


「ありがとうございます。そう言われるように頑張りますね。改めてこれからもよろしくお願いします。」


「こちらこそだ。」





ユウリと俺が一緒に行動するようになったのは、少し言いにくい理由が背景にある。


こいつは俺が、邪竜討伐の依頼の最中の洞窟で、一緒に行動していたであろう連中に、暴言を吐かれていた。隠れて聞いていると、ガタイの良い男が、


「おい!あんな雑魚に何回魔法を外せば気が済むんだ!」


「すみません。でも洞窟は暗くて苦手でして、焦点がなかなか合わないんです。」


「ちっ、役立たずが。お前はここに置いていく。連れていくメリットを俺達は今失った。せいぜい誰かに見つけて貰うんだな。」


その仲間も陰口を叩きながら、クスクスと笑っていた。


こういうことは俺自身は慣れていたが、全員が全員そうではない。急なことでユウリは動揺して、その場であの男達が去っていくのを少し震えながら見送っていた。


俺はそれを見過ごせず、お節介かもしれないとも思ったが、彼女のもとに歩いていた。


「見つけてやったぞ。お前、大丈夫か。魔法使いらしいが、洞窟は苦手か?」


「見ていたのですね。そうです、私は弱いのです。」


「誰でも苦手なものはあるよ。それにどう向き合うかが大事だが、あの男達はそのチャンスすらお前に与えなかったんだ。」


「慰めてくれているのですね。初対面なのに申し訳ないです。」


「俺はこれから邪竜の討伐に向かう。最初は一人でいいと思っていたが、、そうだな、、魔法使いは居れば居るほどいいな。」


「私を勧誘しているのですか。」


当然ユウリは困惑顔だった。初対面の人を警戒することはあたりまえだ。



『16・蛍光』



その魔法は彼女に光をもたらすものだった。ユウリの体が眩しくない程に発光して、ユウリの顔はだんだん光を取り戻した。


「これは、」


「お前への差し入れだ。俺はチャンスをやる、どんなチャンスでも、何回でも。あいつらがその容姿でお前をスカウトしたのかは分からないが、俺にとって仲間の存在は心強い。もし倒れても脱出ができるかもしれないからな。」


そのときの俺の表情は少し本能的に笑っていた。ただ良い事をした気になっていただけなのかもしれないが。


「あなたは、、普通ではないですね。」


「俺にとっては褒め言葉だな。」


「じゃあ撤回します。」


彼女は笑っていた。その表情はもう俺にとっては立派な返答だった。




光は彼女から発せられている。


洞窟の中層あたりで俺達は中堅のモンスターを倒したところだ。


「お前、その恐怖心がなかったら相当なものだな。」


「そうですか。でも、あなたさっき第1体系の難関技をいとも簡単に使いましたよね。」


「ああ、それはな、、、、俺は魔法使いだったんだ。」


「今は見た感じ剣士ですね。しかも剣士の腕もここ一帯では最強を名乗れるほどです。」


「悪いが、その理由は話せない。もう少し時が経ったら話そうかな。少なくとも悲しい事実が背景にあるんだ。」


「すみません。嫌なことを思い出させてしまったみたいで。ところで、あなたは私ともう少し一緒にいるつもりですか。」


「おい!別に特別な意味はないぞ。つい何も考えずに言ってしまった。嫌なら嫌と言うのも、、成長の過程だ。」


「私はあなたにチャンスを貰ったんです。その成果を見せて、思いに応えるためにも、私はあなたと暫く一緒に行動しようと思います。」


「そうか。俺にはなんの文句もない。お前は強いし、俺も戦闘では背中を預けられそうだ。これから、、、よろしくな。」


「というか、お前ってずっと言っていますけど、私にはユウリという名前があります。」


「俺にはタロウという名前がある。これで対等だ。」


「なんか味気ないですね。タロウさん、小さい頃あまり外に出ていなかったのですか。」


ユウリは人の気持ちや、その背景を感じ、言い当てることがこの頃から得意だった。これからの旅で、俺はユウリにこういう面で大変世話になる。


「お前は魔法使い兼マジシャンなのか。」


「私にはユウリという名前があります。」


これもまた機械的な言葉だ。


「ユウリはマジシャンなんだな。」


「そうともよく言われます。」


「あまり言いたくなかったんだが、お前はなんでその容姿を持っていながら優秀な人に拾ってもらっていないんだ。たとえ剣の腕が良いものであろうが、最上級の魔法を使えようが、男は結構脆いんだぞ。」


「もちろん勧誘は受けますよ。でも、私が自らの意思で断っているんです。ちゃんと信用できる人はそれを行動で示します。私はそれをできる人を探していました。」


「じゃあ、さっきの男達はなんなんだ。」


「あれは仲間ではなくて、一時的な協力関係です。邪竜討伐のために結成されたパーティーに即席で入れてもらいました。私を見てニヤニヤする人もいましたが、あの人達は標準よりは強いと知らされていましたから、我慢していました。」


「そうなると、俺の映りは結構良いのか。」


「それは自分では言わないのが真理ですよ。でも今までの中では最高の行動でした。」


そう言うユウリの顔を見て、俺は初めてユウリの容姿に圧倒された。


「まあいい、この話は深掘り厳禁だろう。それより、早く邪竜を倒して、この洞窟を脱出しようか。」


「そうですね。私はタロウさんを信用することにしました。」


「さっきのさっきまで信用なかったのかよ。」


俺達はこの薄暗い洞窟の中で、ただ二人の笑う存在になった。






「ありがとうございました。またお越しください。」


店を出たのは入店から45分後だった。


俺は前と同じ白いロングコートを買った。2970ジュールなのは知っていたからユウリが3000ジュール制限をかけたときはヒヤヒヤしたものだ。


ユウリはというと、黒いロングコートを買った。黒色はセール品で、2000ジュールで買えたので、残りの1000ジュールで780ジュールの黒いカチューシャを買ったらしい。


「やはり。お前はその服装でこそユウリだな。趣味が俺とそっくりだ。」


「まるで私と長い間過ごしたような言い方ですけど、まだ2日目ですよ。」


「ああ悪い気にしないでくれ。夢の中でお前を見ただけだ。そのときのお前が今の服装だっただけだ。」


俺は焦った。ユウリはもちろん、俺が二度目だということを知らない。むしろ、知ってはいけない。知ってしまったら、何か不都合が生じる可能性があるからだ。


これからも、ユウリや他の人にこの事実を知られないように立ち回る必要がありそうだ。

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