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30. 恋の終わり

 ユリウスとエーリカの婚約は解消された。




 卒業パーティーは、エーリカが立ち去った後、いち早く立ち直ったヘンリクが事態の収拾に走った。

 ユリウスは話し掛けても反応がなく、リリヤも泣いてばかりで話にならない。


 もしも本当にユリウスとエーリカの婚約を破棄…するのだとしても、この様な場で言う筈がないし、エーリカがリリヤに嫉妬しているという点についても、ヘンリクにとっては不審なことである。


 ヘンリクはエーリカに会う機会が然程なかったので、彼女の為人が分かるとは言えないけれど、そもそもリリヤはユリウスと親しいという程の仲ではないのに、彼女に嫉妬するというのには疑問しかない。


 クラスメイトではあるので、話をする機会はあるとはいえ、リリヤに嫉妬するのであれば他の女生徒にだってそれは向けられなければおかしい事であろう。


 つまりは、ユリウスとリリヤがなぜあの様な事をしたのかがヘンリクには理解出来ず、そしてあっさりと立ち去ったエーリカの事も理解出来なかった。


 とはいえ、これを放置しておける筈もなく、そして肝心の当事者たちはどうにも役には立たないのだ。


 ヘンリクは王立学院に入学してから、それなりにユリウスと親しかったと思うのだけれど、こんなユリウスの様子を見るのは初めてで、だからこそ、自分が何とかしなくてはと意気込んだ。


 とにかくこの場を収めなくてはと、ヘンリクは卒業生たちに話し掛けた。


 「卒業パーティーは、多少羽目を外しても目を瞑るのが慣例だ」


 ヘンリクの言葉に、けれども卒業生たちは直ぐには頷けない。


 第一王子の婚約破棄というのは多少羽目を外した範囲だろうか。


 というか、婚約は破棄されたのか?


 戸惑いから抜け出せないでいる卒業生たちに、新たな言葉が掛けられる。


 「何か通達すべき事項が発生したら改めて告知されるだろう」


 ヘンリクの言葉で何とか気持ちを立て直したエンシオが、話しながら周りを見渡す。


 卒業生たちがどうにか呑み込んで頷くのを目にし、エンシオとヘンリクはほっと息を吐いた。




 余計な事を漏らして、非難される訳にはいかない。


 卒業生たちはエンシオの言葉に、もっともな事だと自分を言い聞かせる様に何度も頷いていた。


 見ていたにもかかわらず、意味の分からない出来事は、一先ずは心に置いておいて、告知を待つのが得策であろう。

 何もなければそれは、きっと羽目を外した卒業生がいただけのことなのだ。



 無理矢理に気持ちを立て直した彼らの元に、第一王子の婚約解消の知らせが届くのは、まもなくのこと。


 けれども第一王子の新しい婚約の話はその後も聞こえる事はなかった。





  **





 エーリカは後日、国王からの感謝と謝罪を受けた。


 第一王子の婚約者であったエーリカは、国王と何度も顔を合わせたことがあったけれど、これがきっと最後になるであろう。


 王城で顔見知りになった侍女や従者や騎士には、婚約解消を気遣われもしたけれど、エーリカはやり遂げたのだという達成感で胸がいっぱいだった。


 エーリカの部屋からはユリウスの肖像画が外されて、これまでの肖像画と一緒に仕舞い込まれる事になった。


 今後については決まっていないけれど、国王からは希望があれば縁談を用意すると言われているし、その辺りは父親が考えてくれるはずである。


 だからエーリカは、自分は何をしたいだろうかと自問してみる。


 調べたい事、気になっている事は何だろうか。まったく新しい事をしてみるのもいいかもしれない。今後はこれまでの様に、縁を深め過ぎないようにと気にする気遣う必要はない。

 となると学生時代に避けた事に目を向けるべきだろうか。


 そう考えたエーリカの頭にピアノの旋律がふわりと浮かんだ。


 エーリカはこっそり耳を傾けたピアノの音を思い出した。



 アロネン伯爵邸にはピアノがある。


 エーリカが練習で弾く事もあったけれど、然程熱心ではなかったし、これから弾く事は減るのではないだろうか。


 それならば彼女に弾いてもらえないだろうか。


 もし断られたならばそれは仕方がない。


 けれどもエーリカはもう一度彼女のピアノが聞いてみたいと思ったのだ。


 だからーー


まずは彼女に手紙を書こう。



 エーリカはわくわくとした気持ちを唇に滲ませる。


 やりたい事を見つけたらエーリカは唇の端を持ち上げ、そして便箋を手に取った。

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