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29. 切望の果て

 ユリウスは呆然としてエーリカの後ろ姿を見ていた。


 エーリカと会う時はいつも予測の上に対策を立て、幾つものシナリオを考えた上で、行動した。

 だからユリウスの気持ちがエーリカで飽和してしまっても、言葉だけは自然に出てくるようになっていたし、それでここ何年も上手くやれていたと自負している。


 今だって同じ様にした筈だった。


 エーリカが嫉妬しているというならば、リリヤとの仲を見せつける事で縋りついてくれる筈で、

いつもと同じ様に予測の上で対策を立て、シナリオを考えた上で行動したのに、どうしてエーリカは立ち去ってしまったのだろうか。



 エーリカにも嫉妬心があるのだと知ってユリウスの心は震えた。


 ますますエーリカが愛しくなって、もっとエーリカを見ていたくなった。


 とはいえ。やっぱりエーリカに見つめられるのは気恥ずかしくて、こっそり彼女を見つめている時間が何よりも幸福だ。


 だけど、それが少しだけ物足りない様にも思えてきていた。


 エーリカと会う時にも、彼女の中にも嫉妬する気持ちがあるのだと考えながら会話の予測を立てようとしたけれど、嫉妬させるような事態が思い当たらず、それを目の当たりにする機会はなかった。


 それでもリリヤに話を聞けば、彼女エーリカの嫉妬心に触れられる。


 それが眩暈がするほどにユリウスの胸を高鳴らせたのだ。



 けれども卒業してしまえば、この魅惑の時間を手放さなければならないだろう。


 その寂しさがおそらくはユリウスを後押ししたのだ。



 エーリカが嫉妬している姿を自分は見た事がない。


 それまで意識していなかった事実をユリウスは卒業目前にようやく認識するに至った。


 ーーー見たい。


 エーリカが自分に“気持ち”を向ける姿が見たい。


 未だエーリカの視線すら満足に受け止められないユリウスには、早すぎる望みだとしても、卒業してしまえばその機会は失われてしまうような気がした。


 だから。




  **





 なぜ今自分はエーリカの背中を見ているのだろうか?

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