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20歳の頃

 メグミとハッキリ別れ、札幌へ行った俺は20歳の頃、菊池優里と出会う前に2~3ヵ月の間つき合っていた女がいた。二宮可乃。


 あれは確か11月で雪がチラついていた日だ。

 大学が同じで妙に気が合った大久保純也。二人ともが彼女がいない為に、飲みに行っては純也が女の子に盛んに声を掛けようとしていたが、俺はそこまでする気になれず、非協力的だった。だが「俺に任せろ」という勇者の純也は、飲みに行っては絶えずキョロキョロしていたが、どうにも好みに合う子が見つからなかったりーーー誰でも良いという訳ではないようで、これは! と思うと彼氏連れだったり、だったら大学構内で探せばいいとも思うのだが、「切っ掛け」というものが見つからないとボヤく純也と飲んでいたときだ。女の子の方から声を掛けられた。


「一緒に飲もうよ」


 向こうも女の子の二人連れで、その二人ともが可愛い子だが最初っからのタメ口だ。もう既にアルコールが入ってるのだろう。そしてその二人ともがよく喋り、よく笑い、ビールをガンガン飲む、今年で20歳になったという俺たちと同い年の女の子。

 アルコールのせいもあって意気投合した俺たち4人は自然と二組になっていて、俺はその子を「可乃」と呼び、可乃も俺を「リョウ」と呼んだ。店を出ると、雪も本降りとなった随分と寒い夜で、まだ真冬用の防寒着など着ていなかった俺と可乃は抱き合うように歩き、道端で口づけを交わし、そのままホテルに行った。その日から俺は可乃とつき合った。


 可乃は学生ではなく働いていた。だから会うのは夜が大半で、親元で暮らしているらしく、デートと言えば一緒に街に出るか、可乃が俺の部屋に来たのだが、最初の時もそうだが一晩共に過ごすことができない女の子で、必ず家に帰って行った。それはクリスマスでも同様で、少し物足りなさを覚えては、いた。


 12月も後半となり、俺は実家に帰ったが、可乃は年末ギリギリまで仕事だと言っていた。

 俺もバイトをすることはあるが、工事現場の誘導員が楽でいい。特に土日や祝日の夜間などは、一晩で通勤費別で1万2千円以上も手取りがあるわ、休憩時間も頻繁にあるわ、更には人手が集らないこともあって、この日だけ、とか、今週は毎日といったように、かなり好き勝手に働くことができた。だがあと何年かすると俺も可乃のように毎日働くことになるのだろう。


 年が明け、実家でグウタラな生活をしていた俺は、実家に届いていた成人式の案内状を突き出す母親から、「一生に一度なんだから行きなさいよ」と言われ、暇にまかせて出席しようとしていた時だ。携帯電話が鳴り、画面を見ると純也だ。

 純也は親が札幌で、その親元に住んでいるから今も札幌から掛けてきたのだろう。そう思うと、暇を持て余す事がない札幌に早めに戻ろうかという考えが浮かんだが、大学が休みなのに戻ったところで、やっぱり暇だろうな……


「リョウ、まずいぞ」


 電話に出るなりいきなりだった。何がマズイのかこっちが訊ねる間もなく純也が続けた。


「アイツら高校生だ」


 アイツらというのが誰なのか直ぐにピンときた。居酒屋で意気投合したもう一人の女の子と純也も付き合っていて、あれからも4人で飲みに行ったことが何度かあったからだ。


「はぁぁあああ?? 高校生って……働いてるって言ってたろ。酒だってガンカン飲んで、俺より強いって」


「高校生だって飲むヤツは飲むって。それに働いてはいる。マックのアルバイトだ。たまたま行ったらアイツら二人とも働いていやがって、あそこで働いてんのパートのおばちゃんか学生のバイトしかいねぇから、お前らまさか高校生じゃ、って聞いたんだよな。そしたらケロっと、そうだよーーーんって………ピースまでしてやがった。高3で18だってよ。俺らも高校生ならいいけどシャレにならんわ。同じ未成年でもよ~高校卒業した18か19なら別に拘ったりしねぇけど、現役の高校生だぜ………考えてみろ、普段はあの制服着てんだぞ。バッカみてぇにクソ短ぇスカート穿いて、どいつもこいつも似たような頭してっから区別つかんわ。俺も高校ん時はそんなこと無かったけどな、なんだろうな? 今じゃマジで区別つかねぇ。それになんでアイツら放課後でも制服で出歩くんだ? ………とにかくよ~そんなこと思ったら妙に冷めちまって、速攻で別れた。冗談じゃねーーわ」


 俺は「マジか………」としか言えなかった。いわば絶句だ。

 それでも成人式には行った。暇だった。


 式典が始まるギリギリに着くと、前の方の席しか空いてなく、しかたがないからそこに座ると直ぐに始まった。

 誰かが壇上で喋っていたが、俺はずっと上の空で可乃のことを考えていた。処女ではなかった。俺もそんなものはどっちだっていいのだが、現役の高校生だと聞かされると何故かアノ時のことが思い出された。まぁ高校生だって機会があれば経験するだろうし、珍しくもない。俺もそうだったし………それにしても可乃が現役の高校生か………なんだか変だな~って思った事があったような気がするし、今更だが、高校生だと言われれば、確かに、と思う。俺は今は20歳だが、年が明けたから今年で21になる。可乃は……あれ? 誕生日って聞いてなかった。きっと今年で19だ。俺と2つしか違わないのだが、高校生だと知っていれば間違いなくつき合ってなどいないし、ホテルなんかには絶対行かない。それに今更高校生とつき合うつもりはない。そんな事を考えていたら面倒になってきた。だったら別れる? だがなんて言う? やっぱり俺はそういうのが得意じゃないようだ。


 気がつくと式典が終わり、会食は隣の会場だとアナウンスがあった。行ってみると壁際に食べ物がズラーーっと並んでいて、中央には丸いテーブルが間隔を開けて幾つもあるが、椅子が一つも用意されてない。立食形式なんだ………俺はコレが苦手、というより嫌いだ。食った気がしないのだ。それにいちいち取りに行っては戻ってきて、座るとこもないから立ったままで食い、そんなことをしながら懐かしい顔ぶれと思い出話に花を咲かせましょうっていうのが想像するのも嫌だ。

 どうしようかと考えながら、仲の良かったヤツを探したが見当たらない。帰ろうかなーーーそう思っていると後ろからいきなり抱きつかれた。


「一緒に抜けちゃおう」


 振り返ると真っ赤なワンピーを着た女性がイタズラっぽい目で俺の顔を覗き込んでいた。奈緒だ。


「アタシ、父さんの車借りてきてるから、行こう」


 そう言って腕を絡めてきた。

 俺の腕に押し付けられた奈緒の胸の感触が、あの時の記憶を蘇らせ、懐かしかった。まだ2年ちょっとしか経っていないが、二人ともが高校の制服を着ていたあの日のことは、随分前の出来事のような気がする。

 そんな感慨に耽る暇もなく奈緒に腕を引っ張られ会場を後にした。相変わらず強引だが不思議とそんな奈緒とウマが合う。いっこうにハラが立たない。


 奈緒が運転する車は予想通りセダンタイプの黒のレクサスだった。社長さんは不思議とこの車に乗ってる人が多い。初めてレクサスの助手席に座ったが、奈緒がけっこう踏み込むからか加速がいいのに驚いた。でもこの独特な音ってターボか? へ〜〜奈緒の親父さんって幾つなんだろう?



「お腹すいた〜〜。ねぇ、○○ホテルのレストラン行かない? けっこう美味しいんだよ」



 30〜40キロ離れた地方都市にある○○ホテル。確かあの街にあるホテルの中では最もグレードの高いホテルのはずだが、着いた途端に奈緒はレストランではなくフロントへと歩いて行く。なんだ?


「帰んなくたっていいんでしょ」


 当たり前のようにそう言い、部屋を取っている。

 レストランに入ると1時を過ぎていたせいか空いていた。



「さっきの式典、来栖君ギリギリに来たでしょ。アタシ探してたんだよ。でも来た! て思ったら前の方に座っちゃうからさ、アタシも移動して傍に座って、ずーーっと、気付け、気付け、気付け、って念送りながら見てたのにゼーーンゼン気づかなくて、ちょっとショック。でも元気ないみたいだった………なんかあった?」


 奈緒の話っぷりは高校卒業以来ひさしぶりに会ったという感じではなく、昨日会った時はそうでもなかったのに今日は元気ないみたいだった、という感じで、思わず笑ってしまった。



「ええええええ!! つき合ってた女が高校生だった!!」

「バカ、声がデカいわ」


 首をすくめ舌を出してる奈緒は、それでも目を輝かせ、何か言いたげだ。


「ねぇねぇねぇ、ちょっと教えて。その女って処女だった?」

「いや、そんなんだったら、今頃は余計にドヨ〜〜ンってなってる」

「あはははははは、だよね〜…………でもさ、アタシは処女だったんだけど」

「こっちだってまだ高校生だったろ」



 部屋に入り、俺が先に湯船に浸かって暫くすると、服を脱いだ奈緒までが入ってきた。ちょっと狭いだろ、と言おうと思ったが、奈緒の身体から目を離すことができず、声が出なかった。


「えへへへへへ…………VIO処理しちゃったんだ。……珍しい?」


 そんなことを言いながら、隠そうともせず、こっちに身体を向けたままで湯船の縁を跨ぎ、俺と向かい合って湯船に浸かった。


「さっき来栖君のスマホ鳴ってたよ。可乃って例の高校生だよね?」

「うわ……向こうから掛かってきたのか…………えっ? もしかしたら出たの?」

「うん、代わりに出てあげたけど、まずかった?」


 そう聞いて驚いたけど、不思議と怒る気がしないし、コイツなら出るな……と思った。


「可乃と喋った?」

「どうしようかと思って黙ってたらさ~、リョウ? リョウだよね? なんで黙ってんの? やっぱ怒ってんだ、な~んて言ってるからさ~、女子高生にリョウって呼ばせてんだって思ったら……ふふふ、喋っちゃった。あなたが年ごまかしてた女子高生? 来栖了は今お風呂に入ってんの。アタシもこれから一緒に入るとこだから邪魔しないでくれる? って言ったらね、ブツンって切られちゃった。あはははははは……もっと生々しいこといっぱい言おうかと思ったのに、ざーんねん」


 奈緒は鼻まで湯船に浸かり、妖しく光る目だけを出してこっちを見ている。それは、俺がどんな反応をするのか楽しんでるような、悪戯っ子が自分のイタズラがバレた時のような、口元の見えない不思議な笑みで、俺はそんな奈緒を見ながら、コイツは悪魔か? それとも天使か? などと考えながらも、やっぱりハラは立たなかった。俺と奈緒はいったいどんな関係なんだろう?



「……え? 温泉? 行くよ、全然へーき。………うん、みんな見るけど隠したりしない。あっ………そういえばさ~」


 そこまで言った奈緒は、湯船からつま先を突き出すと、俺の顔を挟むように、両脚を俺の肩に乗せ、そして続けた。


「年前にね、こっちの温泉に行ったんだけどさ~、そしたらメグミとバッタリ会っちゃって。向こうは湯船のヘリに座って休んでたからアタシは直ぐにメグミだって分かったんだけど、メグミはアタシのコレ見てビックリしたんだろね、えええ!? って感じで顔上げたの。っでアタシだって分かったみたいだけど直ぐに目線下げて、今度はガン見。お互い一言も喋んないの。思い出したら笑っちゃう。だってさ~、向こうは目の前にあるアタシのコレずっと見てて、アタシは見たいんならドーゾって感じで腰突き出して………アハハハハハ…………来栖君は知らないか~~………アタシとメグミって因縁みたいなのあるの。覚えてない? 高1の時の宿泊学習のこと。確か5月だった。高校入学して直ぐの頃ってアタシと来栖君って仲良かったじゃん。今も一緒にお風呂入るくらい仲いいけど………ひっひっひ………っで、夜中に部屋抜け出して会おうって約束したの……覚えてるよね? うんうん、忘れてたらブッた叩いてやろうかと思ってたんだからね。あれって夜中の1時だっけ? 12時? ………とにかくさ~、二人で外に行こうとしたんだけど入口に鍵かかってて出れなくて、しかたがないからロービーに座り込んでずーーっと、2時間以上二人でくっついて喋ってた。でもさ~~あん時の来栖君ってさ~、ヘタれでキスもなんにもしてくれなかった。アタシ待ってたんだよ。キスだったり、もっといろんなことしてくれるの。外に行くつもりだったから、きっとセックスまでしちゃうんだろうな~って思ってた。………うん、そのつもりだった。でもな~んにもしてくれないんだもん。超ヘタレ」


 それはハッキリと覚えてる。あの頃から妙に大人びて綺麗だった奈緒と身体を寄せ合うように座っていた。暗がりの中で。俺の身体は反応していた。けどジャージを着ていたせいで、それを奈緒に知られるのが恥ずかしかった。うん、ヘタレだ。


「次の日にね、アタシ、何人かの女子に喋ったんだ、夜中に抜け出して来栖君とずっと一緒だったって。あの頃のアタシってまだお子ちゃまで自慢げに喋ったの。っで肝心なとこは、ふふふ……って感じで濁したから、みんなエッチなこと想像してた。そんな話ってさ~絶対に広まるよ。だからメグミにも伝わったはず。それから直ぐだもん、メグミが来栖君にコクったって噂聞いたの。来栖君ってさ~女の子フったことないでしょ? それに相手からコクられるからだと思うけど、自分からコクったこともないでしょ? ………やっぱり図星だ。昔話だから別にいいんだけどね、あれからメグミとは一言も口きいてないんだ。向こうも意識してたよ。でも一度だけ喋ったことあって、2年生の夏休みが終わった頃だったと思う。廊下歩いてたメグミ捕まえてハッキリ言った。来栖君をアタシに頂戴って。それってメグミから聞かなかった? メグミはそういうの自分だけの胸に収めとくの出来ないタイプだから、来栖君の気持ち確かめたんじゃない?」



 そう言えばメグミが言っていた。「来栖君のこと頂戴って言われて凄くイヤだった」と。その相手って奈緒だったのか。それは言ってなかったような気がする。それに俺が何と答えたのかはまるで覚えてない。



 街は成人式だったヤツで溢れているだろうから、俺と奈緒はホテルから一歩も出なかった。晩飯はルームサ-ビスでカレーライスを食ったのだが、強烈に美味しくて驚いた。ここのホテルのレストランにカレーライスなんてメニューはなかったような気がするが、とにかく絶品だ。


 夜の10時頃に、何も身に着けていない奈緒が、


「このホテルの最上階にバーあるんだけど、一緒に行こう」



 2人で服を着てーーー2人共がワンピースとスーツといういで立ちだから、もしもドレスコードがあるバーだとしても大丈夫だと思ったが、そこまで服装にうるさいところではないらしい。


 そのバーは、これから混んでくるのか、それとも値段が高のか、殆ど客がいない、貸し切りに近いような状態で、返って喋り難い。そんなことなど全く気にしていないらしい奈緒が、


「ブルース聞こえるけど……ねぇ、チーク踊って」

「いいけど……ここで踊る人っているのか?」


 すると奈緒は、カウンターの中にいるお姉さんにすかさず聞いた。


「ええ、いらっしゃいますよ。ご旅行で見えられた年配のご夫婦の方など、中睦ましいご様子で踊られ、とても素敵で」

「ほらね。素敵なんだよ」



 チークなど身体をベッタリとくっ付けて、あとは音楽に合わせてユラユラしていればいいと思ったが、奈緒は両腕を俺の首に回し、俺を見上げながら踊っている。それに合わせていると見つめ合っていた。


「ねぇ、自動車学校のバスで大柴ミクとキスしたってマジ?」


 大柴さん、本当に喋ったんだ。


「ふ~~ん、そうなんだ…………同じようにアタシにもして」

「………ここで?」

「そう、今、ここで」

「だったら、そんなにバッチリ目ぇ開けてないで瞑って……っでチョッと口開いて」

「うん……こう?」


 俺ってもしかするとこの表情に弱いのかも。奈緒は確かに美人だ。だけどこの表情の奈緒はメチャクチャに可愛い。


「………うわ~~超エッチだ~~……ヤバ~い……今まで来栖君からこんな口づけされたことなかったんですけど」

「えええ? そうか~~」

「うん、一度もないね。………今から毎回さっきみたいのすること。了解?」

「ああ、了解した」

「でもさ~~、キスだけで終わったの?」

「ん? 大柴さんとのこと? ………ああ、そうだけど……」

「それって大柴ミクが可哀そう。女だって男と同じだよ。あんなキスされたらとろけちゃうって。それなのにちゃんとセックスしてあげないなんて………可哀そう。家でひとりエッチだよ。………ねぇ部屋に戻ろう。来栖君もアタシも悶々としちゃって………ふふふ……エッチだ」



 次の日、奈緒が運転しながらずっと喋っていた。


「今思えば………メグミに感謝しなきゃね。あの時メグミが来栖君にコクっていなかったら、アタシが来栖君とつき合ってた。そうしたら高校卒業の時どうしてたろう? 続いてると思う? アタシはそうは思えないな~~。こう見えてもアタシは一途だよ。でも問題は来栖君だよ。来栖君ってさ~~不思議なくらいモテる。背が高くて脚も長いしスタイルはいいんだけど、びっくりするくらいのイケメンってことはないよ。うん、顔はちょっとかっこいい程度。来栖君自身は気づいてないだろうけど、変な色気みたいなのがある。甘いマスクでもないのにね。愛想だって超悪いのに。だからね、来栖君とつき合うと女は大変だと思う。アタシも自信ない。だからメグミには感謝。来栖君と今でもこんなこと出来るのって、あの時つき合ってなかっらからだと思うな。アタシ、来栖君が好き。さっき一途だって言ったけど………来栖君は別。なんだろうね……アタシと来栖君って……でもこの関係がいいな~……へへへ………あっ、そうだ! 昨日の成人式にメグミも大柴ミクも来てたよ。気付いてなかったでしょ? あはははは……あの二人が近づく前にアタシが来栖君をラチしちゃったからね~」


 だが俺は、どうして奈緒が成人式に出席していたのかが解らなかった。そういうタイプではないはずだ。


「それって来栖君もそうだって。アタシはね~~、もしかしたら来栖君が来てるかもって、ダメ元で来たの。いなかったら速攻で帰るつもりだったし、だから振袖や袴なんかは着なかったの」



 家の前で車から降りた俺に奈緒は、「三度目はいつになるんだろうね」と言うと、口付けを求めてきた。目を閉じてチョッと口を開けた可愛い顔で。

 濃厚な口づけが終わると奈緒は、あっさりと手を振り、振り返る事もなく車を発進させた。俺のことを色々と言っていた奈緒だが、互いに連絡先の交換もラインの登録もない。偶然に会って、そして肌を合わせた、それが奈緒と俺だった。



 その後、可乃には一度だけ電話を掛けた。

 奈緒の話を聞く限りでは、頭にきてると想像できたが、だからといってそのまま放置というのもなんだか目覚めが悪い。


「もしも………」

「電話もメールもしてくんな!! クソバカ!!」


 クソがつくほどのバカが俺らしい。

 ……ん? クソバカ? アルパカに語呂が似てる。

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