序文
――事実は小説より奇なり。
言わずもがなイギリスの詩人バイロンの言葉だが、果たしてそうだろうか。
この世の中は実につまらない。小説の中に描かれるような奇想天外な出来事など起こりはしないのだ。
事実、奇跡は奇跡であって現実に起こらないから奇跡なのだ。
妖怪や魔物なんて存在しないし、タイムリープにしたってありえない。宇宙人にしたって実在していると本気で信じていいのは小学生くらいまでにしておいた方がいい。
この世に魔王も存在しなければ勇者も存在しないし、もちろん魔術師も愛らしい魔法少女も実在しないということぐらいは皆さんもご存じのことだろう。
もし、その実在を信じているというのであれば、あなたは病気だ。しかも病院で治すこともできないような恐ろしくて恥ずかしい病気だと断言しよう。
もちろん空から突然金髪碧眼の美少女が降ってくることもあり得ないことは言うまでもない。
カワイイ妹? 残念だけど実際の妹と言えばわがままで兄のことなんてゴミ以下くらいにしか思っていない。
せめて……、せめて、隣に住むカワイイ幼馴染や、憎たらしくも愛しい妹の存在や入学式の日に偶然曲がり角で食パンをくわえた美少女にぶつかってそれがいきなり隣の席へ、なんてラブコメな青春ぐらいはあってもらいたい……。と思う事さえ儚いことなのだ。