第486話 風の魔眼
猫姫さんが召喚したのは【サモン・フィーニクス】や【サモン・ガイア】、【サモン・アネモイ】と同格に位置する【メイジ】の最強魔法、【サモン・ナイアース】。多種多様かつ独自の効果を持つ支援と妨害を適用する盤面の支配者だ。
「【支配領域】【降臨延長】【自由の秘跡】【領域の呪縛】【水流の呪縛】を適用!」
【サモン・ナイアース】
[アクティブ][自身][エリア][召喚][魔法]
消費MP:28 詠唱時間:1m 再詠唱時間:10m 効果時間:15s
効果:一定時間、[ナイアース]を[召喚]する。
[ナイアース]は[自身]を[起点]として形成した[エリア]内でのみ活動を行う。
[ナイアース]は以下の能力を持つ。
【ナイアースレイン】
[アクティブ]詠唱時間:5s 効果時間:5s
効果:[自身]を[起点]として[エリア]を[形成]し、[範囲]の[敵][キャラクター]に[継続的]に[ダメージ]を与える。[キャラクター]の[水属性][耐性]を[無視]する。
【ナイアースエセフセリア】
[アクティブ]詠唱時間:0s 効果時間:15s 再使用時間:15s
効果:[以下]の[パッシブ][スキル]から[5つ]まで選択して[獲得]する。
・【支配領域】[自身]を[起点]として[エリア]を形成する。
・【降臨延長】[サモン・ナイアース]の[効果時間]を[増加]させる。
・【再託宣】[ナイアースエセフセリア]の[効果時間]と[再使用時間]を[下降]させる。
・【自由の秘跡】[自身]の[発動]した[エリア]にいる[味方]は[妨害]を受けない。
・【自由の呪縛】[自身]の[発動]した[エリア]にいる[敵]は[抗体]を[獲得]できない。
・【領域の秘跡】[自身]の[発動]した[エリア]にいる[味方]の[エリア]を[拡大]させる。
・【領域の呪縛】[自身]の[発動]した[エリア]にいる[敵]は[エリア]を[形成]できない。
・【水流の秘跡】[自身]の[発動]した[エリア]にいる[味方]の[スキル]を[水属性]にする。
・【水流の呪縛】[自身]の[発動]した[エリア]にいる[敵]の[水属性][ELM]を[下降]させる。
・【絆の秘跡】[自身]の[発動]した[エリア]にいる[味方]は[エリア]を[形成]する。[自身]以外の[味方]の[エリア内]に[任意]で[移動]できる。
・【絆の呪縛】[自身]の[発動]した[エリア]にいる[敵]は[エリア]を[形成]する。[敵]は[自身]以外の[敵]の[エリア内]に[移動]できない。
・【液体の秘跡】[自身]の[発動]した[エリア]にいる[味方]が[使用]する[ポーション]の[効果]が[増加]する。
・【液体の呪縛】[自身]の[発動]した[エリア]にいる[敵]は[ポーション]を[使用]できない。
さまざまな効果から好きなようにつまみ食いできるのが【ナイアース】の特徴だ。猫姫さんは『支配領域』『召喚時間の延長』『妨害の無効化』『エリア系スキルの封印』『水属性ELMの低下』を選択した。
どれも単体では致命傷とは言えないが、そもそも上級精霊は攻撃スキルを飛ばしてくるだけでも厄介な相手だ。
「«テレポート»!」
相手の土俵に乗る気はない。«テレポート»を発動して大きく後方に距離を取る。一瞬にして競技場から飛び出したボクだったが、次の瞬間、背後に【ナイアース】が出現する。召喚モンスターに【マクロ】を覚えさせていたのか。
ボクは魔法を詠唱しながら振り返り、最大火力を撃ち放つ。
「〈空行く律よ、束を解け〉【エレウテリア】!」
その瞬間、ボクの瞳から緑色の光が生じ、【ナイアース】を貫く。キーワードの設定により『魔眼』と化した風の暴威が一撃でそのHPを刈り取った。……え、一撃!?
「え……!?どういうことですの!?【イグニッション】でも使われました!?」
遅れて«テレポート»で転移してきた猫姫さんも【エレウテリア】の余波を受けて急速にHPを削られていく。
「くっ、«テレポート»!」
猫姫さんはボクの視界に入らないように再び転移するが——。
「嘘!?ダメージが止まりませんのー!!」
ボクの【クレヤボヤンス】による視界に死角はない。風の『魔眼』は瞬く間に彼女のHPを刈り取り、そのまま全損させた。
【ゲームセット WIN:卍荒罹崇卍 LOSE:✝聖天使猫姫✝】
「お疲れ様でした!」
「お疲れ様ですの!さすがの火力ですわね!【ナイアース】が一撃で倒されるなんて」
会場に戻ってきたボク達は戦いの感想戦を始めた。確かに自分でも驚きだった。単発の攻撃スキルである【エレウテリア】に効果時間を設定することで継続攻撃スキルに変えたのが、これほどまでに効果を発揮するなんて。
「正確にいえば一撃ではないですがね。実質的な連続攻撃になっていたはずなので。逆に、猫姫さんのほうが【ナイアース】よりも耐えるという点が驚きでしたが。そういえば風属性ELMが高いんでしたっけ?」
「そうですわね。『天駆ける』の効果でELMに補正が入ってますの。……これから卍さんを相手にする際には炎属性だけではなく風属性も配慮する必要がありそうですわね」
このゲームは攻撃側のELMがどれだけ高くても、受け手側のELMが無効の水準に達していれば攻撃は無効となる。属性攻撃に特化する構築というのはこの面で不利なわけだが、2属性を同時に無効化できる装備構成というのはおそらく存在しない。【シャーマン】の【エレメンタルレジスト】を加えてもなお両取りは不可能のはずだ。だから2つの属性で大火力を撃ち込めるボクの型はなかなかに優秀といえる。
【エレメンタルレジスト】
[アクティブ][キャラクター][エリア][炎属性][水属性][土属性][風属性][支援][魔法]
消費MP:4 詠唱時間:10s 再詠唱時間:30s 効果時間:2m
効果:[キャラクター]を[起点]として[エリア]を[形成]し、[範囲]の[味方]に[炎属性][水属性][風属性][土属性]の[耐性]を[付与]する。
「まぁ、あくまでメインは炎属性ですがね——話は変わりますが、試合直前に食べていた料理の効果はなんだったんですか?」
「あぁ、あれは【パインサラダ】の食いしばりを2回まで適用できる効果と1回限定で任意スキルの詠唱を踏み倒せるという効果ですの。【エレウテリア】が連続ダメージだったから意味をなしていませんでしたが……」
……なんなんですか、その効果、イカれてるんですか?
「その料理は販売してるのです!?」
あまりの恐るべき効果にメグさんが横から割り込む。確かに猫姫さん限定ならまだしもこんな料理が市場に出回ったら一大事だ。
「さすがに作るのに時間がかかりますの。よほどのことがない限りは私だけで運用するつもりですわ」
その言葉にほっとため息をつくが、懸念は解消されていない。よほどのことがあればその料理を誰かに譲る気があるということだ。他の【黄金の才】と違って料理という形であることから理論上は誰でもその恩恵を受けられる。やはりとんでもないスキルですね、【『ディオニューソス』】は。




