第475話 お祭り
それからあきなさんと一緒に【ディスポサル城下町】を歩き回ったが、レジーナさんの居場所に関する情報は出てこなかった。
「うーん、どこにいるんだろう?」
「もしかしたら、魔王を倒しに行ったのかもしれませんね。魔王がいた場所といえば……」
「あ、そっか!【ユズレス大森林】!」
結局、ヒントを与えて誘導してしまった。でもこのゲームのクエストに導線がなさすぎるのも悪いと思う。登場人物紹介ではさんざんネタバレを羅列してくる割にこういう所で投げっぱなしなのが【フォッダー】らしい。
「よーし、それじゃあ再び【ユズレス大森林】にれっつごー!」
「おー♥」
改めて目的地を示し、とことこと歩いて出発する。
「あン?なんだありゃ」
街の外へ続く街道を歩んでいると、その先にある広場になにやら人だかりが見えた。今日はログインしているプレイヤーも少ないのにどうしたんだろう。
そこにいたプレイヤーたちは簡易な屋台を立てて商売をしていたり、買い食いをしていた。中には金魚すくいのような出し物もあり、なにかのお祭りのようにも見える。
「——ようにも見える、というかお祭りですね」
「ユーザーイベントのお祭りみたいだね♥」
「楽しそー!よってこーよってこー!」
ふわふわと上下に跳ねるあきなさんの意向で、寄り道していくことにした。彼女は積極的にあたりにいた人に話しかけていく。最初に声をかけたのは小柄なツインテールの少女——納豆大好きさんだ。直接の絡みは少ないが、なんどか見かけたことがある。
「ねえねえ、なんの集まりなの?」
「私もよく知らないのですが……運営がログインしない方がいいと告知を出していましたよね。その影響もあって今日はユーザーが少ないので、同じ場所に集まろうということになったのだとか」
「へぇ、そういう告知があったの?なんかこわーい」
「いや、あなたのことですよ……」
「……本当にそうなのかな♥」
ボクの発言にとがみんが疑問を呈する。
「と言いますと?」
「だって、『異形』のオーラが強すぎて集団的に気絶するなんて、これまでもあったことでしょ?確かにあきなちゃんのオーラはかなり強かったけど、どうせすぐに慣れることじゃん♥」
「……確かに」
とがみんの鋭い指摘にボクは納得した。
そもそもオーラのことを問題視するなら、ログインを制限するだけでなく、ボクのようなプレイヤーが配信を垂れ流すことも問題視しなくてはならない。
ボクは『ログインを禁止するわけではない』というユーキさんの姿勢から、あきなさんの存在はそこまでの問題ではないと考えていたわけだけど……。
よく考えてみれば、ログインを制限したい理由があきなさん由来だったとしたら、十分に説明できるはずですからね。『異形』の存在が世間に周知されていなかった頃ならともかく、今の時代なら『ちょっと変わったプレイヤーがログインしてる』と説明するだけで納得してもらえるはずだしね。
そんなふうに考えていると、いつの間にやらあきなさんが屋台の食べ物を物欲しそうに見つめていることに気づいた。
「ねね、この食べ物なーに?」
「あぁ、これは【覇王のたこ焼き】だよ。……アイテムというより、食べ物について説明したほうがいいかい?」
「うん!人間さんの食べ物とかよく知らないし!」
うんうん、いい感じになじんでいるようですね。
形式上は人権を認められた存在である『異形』だが、やはり世間ではあまりよく思われていないことも多いらしい。ただでさえ存在しているだけで周囲に恐怖を与えているのだからある意味では当たり前。良き隣人として過ごせるようになるのはまだ先の話だ。
しかし少なくとも【フォッダー】のユーザーにとってはちょっと特殊なプレイヤーという程度の扱いが定着している。ボクの配信に書き込んでいる視聴者さんも否定的な書き込みをすることはあまりないし、実際に接している期間が長いほどになじみやすくなってくるのだろう。
ただしあきなさんのなじみ具合はそれにしても異常なほどだった。たこ焼き屋の店員さんはにこにこと笑顔で接しているし、周囲のプレイヤーが自然と彼女のもとに集まっていく。
「この触手、ぷにぷにだ」
「なでなで」
「うちのイカ焼きも食べていきなよ!」
「わー!?ひっぱらないでー!?」
「これは……相対評価ですかね。あきなさんが『異形』としては信じられないほど威圧感がないぶん、自然と親しみを覚えてしまうのでしょう」
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>あきなさんかわいい
>なでなでしたい
>それでも俺はとがみんを推すぜ
>もふもふ
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「たこ焼きおいしーい!」
「いや、これはたこ焼きじゃなくて『たこの丸焼き』なんですけどね」
「あってるじゃん♥」




