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卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!  作者: hikoyuki
1章 Mission 運命を壊せ!

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第20話 殺神話生物鬼

 というわけで再挑戦、【ユズレス大森林】。今度は前回とは違い6人編成。3人だったときでさえ負ける要素がなかったのだから、今度は軽いお散歩コースみたいなものだろう。


「おねえさま。私、がんばりました♥」


 途中で【コールグループ】を発動して明日香さんを呼び出すと、出現した瞬間に勢いよく抱きついてきた。ちょっとびっくりしたけど、明日香さんの言動にはもう慣れっ子だ。思いきり頭をなでなでしてあげよう。


「よしよし、がんばったねー。なでなで」


「あーいいなー。あたしもなでてなでてー!」


「はいはい、なでなで」


「わーい」


----

>めりぃさんかわいい


>なでなで


>明日香さんかわいい


>卍さんは?


>めりぃさんと明日香さんはかわいい

----


「ボクは???」


 ボクたちがじゃれあっている後ろでは、おっさんとゆうたさんがなにやら戦術について話し合っているようだ。わりとおちゃらけた態度のおっさんだけど、戦いに関してはまじめらしい……というより、普段はロールプレイなのかな。


 純白の翼さんは彼らの後ろでその話に耳を傾けている。


 あれ、もしかしてボクたちがおかしいんじゃ?


----

>作戦会議さぼって遊んでいるクズ配信者かな?


>やーい、不真面目ー


>しょうがないよな、卍さんはなでなでするという重大な仕事があったんだよ


>なでなでに比べたら魔王討伐なんてどうでもいいよなー

----


「すいません!作戦会議に混ぜてください!」


「ん?ああ、明日香も揃ったのか。今は魔王討伐とは関係のない話をしていただけだ。気にするな」


 よかった。ま、まあさっきまで全員そろってなかったのに作戦会議なんてするわけありませんでしたね。知ってましたよ?


「ククク……破壊の根源を滅する6つの星が集いし時、1つ提案があるのだが、よろしいか?」


 思わずほっとため息をついていると、ボクたちが集まったのを見計らって純白の翼さんが話し始めた。提案?なんだろう。


「前半はワケワカメだったけど、後半はわかりやすいね。セリフが思いつかなかったのかい?」


 からかうように口を挟むおっさん。それに対してめりぃさんがフォローを入れた。


「じゅんぱくもわかりづらいってわかってるんだよねー」


 めりぃさんによると、本当に意思疎通を図りたいときは、聞き手に配慮して話し方を変えることもあるのだとか。意外と常識的な方のようです。


 2人の会話が終わったのを見計らって、純白の翼さんが提案の内容を説明し始める。


「こほん。今回ぶっつけ本番でバトんのもいいけどさ、他んとこでこの面子で狩りしてみない?ボスが出るとこ迂回してけば強いモンス出るとこあったよね?」


「えええええ!?それが普段のしゃべり方なんですか!?」


----

>めっちゃ普通の喋り方じゃねーか


>チョベリバって感じだよねー


>↑それはおっさんが言いそうなセリフでは?


>ロールプレイ時の印象はもはやガタガタ

----


「そこのおっに図星を突かれてセリフ考えんのめんどくなってさ。まー今回は大目に見てよ」


「さんを付けてくれたまえ」


「やっぱり、かっこいいセリフを考えるのにも苦労してるんですね……」


「そそ。次はあーしももちっと気合入れてくるわ」


「……ロールプレイの話はともかく、一理あるな。魔王に挑む前に実戦で連携を練習するとしよう」


 そういうことになった。


 そしてボクたちが現在向かっているのは【ユズレス大森林】の奥深くにある別のダンジョンだ。森の浅層とは違い、中〜高レベル向けのモンスターたちがウヨウヨしている場所で、ボクのメイン狩場でもある。


 つまりそれがどこかというと——。


「そう、【グレイブウッド】です!昨日ぶりですねー」


「おねえさま。ここで1度、修行した私の力を皆様にお見せしたいのですが♥」


「あ、そうか。明日香さんはさっきまでレベル1でしたね。初心者でも強いという実力を証明しなければ皆さんに不安に思われてしまい——そういえばレベル1でしたね。大丈夫ですか?」


----

>大事なことなので2回言いました


>卍さんのメイン狩場に殴りこむ元レベル1がいるらしい


>↑あらゆるプレイヤーは元レベル1なんだよなあ


>なーんだ、じゃあ余裕じゃないですか

----


「そ、そうですね!我々も昔は初心者でしたね。がんばってください!」


「わかりました。では、あちらにいる狼さんを1人で倒してきます♥」


 そう言いながら指さす明日香さんの方を見ると、つい先日ボクをさんざん苦しめてきた【セイクリッドファング】が8体。【ネームド】こそいないように見えるけど、いきなりあれに挑むんですか……?


「では、行ってきます。〈生命よ、等しく魔眼王の糧となれ〉【ネガティブゲイズ】【指定:物質干渉力】」


 スキルを発動させると、【セイクリッドファング】たちのもとへと弾丸の如き速度で駆けていく明日香さん。その手には武器が握られていない。素手で戦うのだろうか。


「【ネガティブゲイズ】か……オモローなスキルを使うね。視界に入ったキャラクターを弱体化させる【メイジ】のスキルだったか。少しでも遮蔽物に隠れていただけで適用されなくなるシビアな判定が話題になっていたよ」


 【セイクリッドファング】たちも明日香さんを迎え撃つために散開し始める。それを見た明日香さんは虚空に手を伸ばし、【ストレージ】から勢いよく剣を引き抜いた。そして剣を狼に勢いよく投擲する。


 剣もこれまた弾丸の如き速度で宙を駆け抜け、いちばん近くにいる1体の狼を狙う。だが、狙われた狼は嘲笑うかのようにたやすく投擲を回避した。


 しかしここからが【サイキック】の腕の見せ所。後方に突き抜けていった剣は、まるで生き物のように宙をUターンし、攻撃を回避できたと思い込む哀れな狼の尻に突き刺さる。


 認識外からの唐突な攻撃に悲鳴をあげる狼。そこに明日香さんが接近し、鋭い張り手を食らわせた。


 勢いよく後方に吹っ飛ばされる狼。しかし取り囲むように動いていた他の狼たちが四方八方から一斉に襲いかかる。


 それを明日香さんはきれいな回し蹴りで1匹残らず弾き飛ばした。


「マーシャルアーツは神話殺しの嗜みですわ。一斉に攻めてくるなんて芸がありませんのね♥」


 そんな明日香さんの手元へ、先ほどの剣が吸い込まれるように帰還する。


「えぇ……」


 今、彼女が武術に乗せている能動(アクティブ)スキル【サイハンド】は物質干渉力に重きを置いた攻撃スキルだ。これに【ネガティブゲイズ】を組み合わせることによっていともたやすく敵を弾いているのだろう。


 しかしそれはあくまで敵を吹っ飛ばしやすくしているだけ。最初に剣が刺さった狼を含めて、まだ1匹も倒すことはできていない。


 体勢を整えた狼たちは、それぞれわずかにタイミングをずらして彼女に接近する。一網打尽にやられてしまうことを避けようとしているのだろう。


 しかし、それは無駄な足掻きだった。


 そして彼女が指を鳴らした瞬間、おっと、判定をお忘れですわよ——ほら、《S()A()N()()()()()》です♥


 途端に身も凍りつくような寒気が周囲に伝播する。


 狼たちは突然襲い来る名状し難い混沌に満ちた悪意に思わず足を止め、ただ呆然としていた。


 身体がガタガタと震え出し、地に倒れ伏す狼すらいる。


 彼らに共通しているのは、()()()()。あらゆる生物の持つ根源たる感情だけだ。


 しかし同時に彼らは明日香さんから逃げようとすることもなかった。そう、諦めてしまったのだ。


 ——死とはあらゆる生き物に平等に訪れる逃れられない運命(さだめ)。それがこの日、この時に訪れてしまっただけなのだ、と。


「あはっ、まず1匹ぃ♥」


 明日香さんが無抵抗の狼たちを処刑していく様子を、ボクたちは呆然と眺めていた。


【ネガティブゲイズ】

[アクティブ][キャラクター][視界][妨害][魔法]

消費MP:6 詠唱時間:5s 再詠唱時間:30s 効果時間:4m

効果:[ステータス]を[指定]する。[効果時間中][視界]の[キャラクター]の[指定][ステータス]を[下降]させる。


卍荒罹崇卍の一口メモ

圧倒的な汎用性を誇る【メイジ】スキルです。

なんと、下降させるステータスが指定可能!今回は物質干渉力でしたが、VITを下げても構いませんし、ELMを下げても構いません。

明らかに強力としかいいようがないのですがデメリットもあり、実際のところ採用率はそれ程高くありません。

そのデメリットとは、無差別発動であるという事。

このスキルを発動している間は仲間ですら容赦なく弱体化させてしまうのです。

発動対象は視界内の全てのキャラクターなので、味方との協力がしづらいスキルですね。

また、少しでも遮蔽物に隠れているだけで効果が適用されなくなるというシビアな判定も。しかし、こちらの弱点はどうやら克服手段もあるようで……。

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