小舟
「うわっ」
オレが小屋の扉を開けると、そこには山田君がいた!
オレは思わずしりもちをついてしまった。
「や、山田君! 無事だったんだ!」
オレは仲間が増えたことに安堵した。
「こ、こっちだ!」
おとなしい山田君がオレの手を引いた。
「ちょ、ちょっとまって、そっちじゃないよ」
オレは山田君を制止し、車の方に行こうとした!
「く、クルマはだめ! パンクしてる」
山田君はおどおどしてるようだが、しっかりと説明してくれた。
「えっ、泉がやったのか?」
オレは山田君に食い気味に尋ねた。
「ち、違うと思う。 い、急いだほうがいいと思う! また戻ってくる」
そういうと山田君はオレの手を強めに引いた。
「わ、わかったから、ちょっとまって!」
オレは冴子さんを抱え上げた。
「行こう!」
山田君が先導し、オレと冴子さんはついていった。冴子さんはオレにがっしりと抱き着いている。
「こ、これに乗る」
山田君が指さしたのは小舟だった。
「どうして・・・・」
オレは何度も曾祖母のところに来ているから、知っているが、確かにこの広大な屋敷は周りを堀で囲まれている。その堀は洞窟の小川までつながっているはずだ。
「何で船の事知ってるんだ・・・・」
オレは山田君に尋ねた。
「そ、それは後で! 時間がないから早く!」
山田君は、いつもののんびりした雰囲気からは考えられない機敏な動きだ。
「わ、わかった!」
オレは冴子さんを抱えたまま船に乗った!
「じゃあ、行くよ!」
山田君は船をとても上手に漕ぎ出した。
「すごいな! 山田君、こんなことができるんだ!」
オレは日ごろ見下していた山田君を見直した。
そのときだった・・・・
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ」
鬼の行な形相の泉がおれたちを発見して鎌を手に人間とは思えないスピードで追いかけてきた。
「きゃああああああああああああああああああああああっ」
冴子さんの叫び声が響き渡った!