52.洗い屋の才能
「うーん、ショタと一緒にお風呂! たまんないなあ〜」
カオルは一切邪念のない笑顔で、煩悩まみれなことを言いながら、シャワーで僕の体を洗い流す。その手つきはとても丁寧で、ボーッとするくらいに気持ちいい。
「しっかし、マルカのご両親もいい人だよねえ」
「うん。すごく優しくて、いかにもって感じのご両親だった」
「そうそう、正しい意味でこの親にしてこの子あり、だよ。──よし終わりっ! 今度はユウくんの番」
僕の体を流し終わると、カオルは僕にせっけんを渡して背中を向けた。
「え?」
「洗いっこ。…………嫌だった?」
僕が戸惑っていると、カオルはタオルをはだけさせ素肌をあらわにして、振り向きながら見つめてきた。
解けた髪の隙間から覗く白い肌と彼女の瞳が、僕を捉えて離さない。
「嫌では、ないけど」
しっとりと潤った彼女は、その美しさに一層磨きがかかって、つい生唾を飲んでしまうような色気を放つ。
「なら、お願い」
「うん……さ、触るよ」
僕は跳ねる心臓を必死に抑え込んで、カオルの背中に手を────
「おじゃましま〜す! …………おじゃましましたぁ〜」
指先が触れるかどうかの寸前で扉が開け放たれ、今度はタオル1枚のマルカが飛び込んで……僕たちを見た途端、扉を閉めて消えてしまった。
「こらこらこら、変な勘違いするんじゃないよ」
「だって! 今のはそういう雰囲気だったじゃないですか!」
すぐさま追いかけていったカオルが、マルカを抱えて戻ってくる。
今この場には、裸の女性2人と僕1人。
正直、すぐにでも出たい。でも嫌な態度は取りたくない。葛藤。
「マ、マルカも来たんだね」
とにかく気を落ち着かせるため、マルカに話しかける。
「はいっ。その……後から1人で入るのは寂しくて。せっかくカオルさんとユウくんもいるんですから。で、でもっ、本当にお邪魔でしたらすぐに」
「だーから大丈夫だって。普通に背中を流しあってただけだよ。この際だ、マルカも一緒にやろう!」
「いいんですか……?」
彼女は子犬のような目で、カオルと僕を交互にチラチラ見る。よくないと言えばよくないけど、ここで断るのは酷だ。
「3人でやろうか」
結局逃げきれず、僕はお姉さん2人とお風呂に入ることにした。
「それじゃユウくん、さっきの続きを。マルカの背中は私が洗ってあげる」
「はい! えへへ、こういうのちょっと憧れだったんです」
マルカは遠慮なく背中を晒す。仮にも男である僕がいるのに、あまり気にしていない様子だ。
(僕が子供だからだろうけど、少し複雑)
それはともかく、間違っても邪な感情を起こしてはいけないから、僕は無心でカオルの背中を洗う
「んっ……上手だよ、ユウくん」
無心で洗う
「あっ、そこ……もっと強く」
無心で
「ふーっ、ふーっ、んぅっ! あっ、はぅっ!……」
無心
「ちょっとカオルさん! 後ろでやらしい声出すのやめてくださいよ!」
危うく限界に達するところで、マルカが僕の代わりに叫んでくれた。
まったくこの淫魔は。
「ごめんごめん、ホントに気持ちよかったから」
「そ、そんなにですか?」
「僕、普通にやっただけなんだけど……」
息を荒くするカオルを見て、マルカが期待のこもった顔で僕を振り返る。
「あの、お願いしても……?」
「じゃ、じゃあ」
僕もマルカも何が何だか分からないまま、背中を洗う体勢に。
「──いくよ」
「はい……あっっっ、ああ〜〜〜〜ッ!」
…………僕は意外と、洗い屋の才能があるかもしれない
〜〜〜〜〜
「あっはっは! マルカもすっごい声出してたねえ!」
「す、すごかったです」
「どうも……」
どう感想を述べればいいものか、まあなんだかんだあって、僕はカオルとマルカを洗った後、浴槽に入った。
──2人に挟まれながら。
この流れだから当然だけど、僕たちは3人で同時に浴槽に入ったんだ。
カオルとマルカのあんな声を聞いた後のコレは、想像以上の威力がある。もはや顔も上げられない。
「ンフフ、今更な〜に恥ずかしがってるのかなぁユウくん。私たちの裸を見るのだって初めてじゃないだろう?」
「そういう問題じゃない……」
彼女の言う通り、初めてではない。以前『和みの宿』で温泉に入った時、実質的に混浴になって、僕は2人を見た。
でもあの時は満がいて、カオルと一触即発という緊張感があったから、あまり意識が回っていなかった。
けれど、今は違う。2人以外に意識を向けられない。前も後ろも、目のやり場に困る。
「それにしてもユウくん洗うの上手だねえ。これのせいで変な能力でも付いちゃったかな?」
背後から、カオルが僕のお腹のあたり、『淫紋』に触れながら呟く。
これが何かしら、僕に影響を及ぼしていることは間違いない。
(そんな能力、望んでなかった……)




