ボクはキミで君は僕
駄作な気がする…
周りの人は僕らを見てどう思うだろうか…兄妹?双子?僕らは同じ存在だ
「おーい!起きてー!音雨くーん!!」
ぺちぺちと何かで叩かれる感じがする…痛い…
「わかった…わかった…起きるから…」
ゆっくり起き上がって片手でメガネを取る、僕の事を叩き起こした彼女はiPadを持ってニコニコ笑っていた
「え…それで叩いてたの…?」
「うん!近くにあったから!」
「どーりで痛い訳で…はーぁ…」
優しく彼女の頭を撫でる
「おはよう、音雨ちゃん」
「ねーねー!お出かけしよーよ!」
片腕を引っ張りながらいつもみたいに笑って言う
(なーんか…最近妹みが強くなった気がするなぁ…)
「音雨くん?」
「行こっか、天気も良いし」
「わーい!!音雨くん大好きー!」
僕より少し先を歩く彼女はやっぱり楽しそうだ、この街にある物全てにわくわくしている感じが伝わる
「はっ!」
彼女が何かを見て足を止めた、僕もチラッと視線を向ける
「音雨ちゃん…はい」
「あっ…ありがとう!」
手に500円を握らせるとお礼を言ってすぐに駆け出す
(可愛い…)
彼女がクレープをもって僕の方にやってくる、既に何口か食べた様子だ
「これすーっごく美味しいよ!ほら!音雨くんにもあげる!」
「えっ…僕はいいよ…」
「だって音雨くんのお金だもん!音雨くんも食べて!」
「…味なんて…わかんないのに…」
「…?何か言ったー?」
「なんでもないよ、じゃあ1口もーらい」
本当に彼女が羨ましい、この世の穢れも知らないで無邪気に笑う彼女が…本当に…羨ましい…
僕と彼女は同じだ、だって僕から彼女が出てきたのだから…原理は分からない理由も分からない、ただ突然僕から彼女が分離して生まれた。だから彼女と僕は同じ、同じはずなのに全然違う、僕ばかり辛いめにあっている気がするし…僕ばかり何か欠けている…彼女は僕に無いものを全て持っている…全部…彼女が持っていってしまった…
「音雨くん…どうしたの?…大丈夫?」
「あ…あぁ大丈夫だよ」
「具合悪い?…ごめんねボクが出かけようって言ったから…」
「だっ…だから大丈夫だってば…ほら行くよー」
「あっ……ま…まって音雨くん!」
彼女に背を向けて歩き出す、空はもうオレンジがかっていた
「ねぇ…音雨くん…」
「なーに?音雨ちゃん」
「ボク…何かしちゃったかな…」
「え?」
彼女が涙目になりながらそう聞いてくる
「ど…どーしたの…急に…」
「だって…音雨くんいつもと雰囲気ちがったから…」
「っ…」
開いた口が塞がらない…僕はそんなに態度に出てたのか…おのれ…嫉妬心め…
「ボクね…難しいこと分かんないし…音雨くんの事も全部は分かんないの…」
俯き気味に彼女は言う
「でもねっ…音雨くんが頑張ってるのも何となくだけど分かるし…色々悩んでるのも…何となく分かるの…」
ああ…なんだか申し訳なくなってきた…
「だから…これ以上悩んで欲しくないから…だから…ボクが何かしちゃったなら…謝りたくて…」
「…」
優しく彼女の頭を撫でる、すると彼女はバッと顔を上げた
「音雨…くん?」
「大丈夫だよ、音雨ちゃんは何も悪くないから…」
「で…でもでも…」
「あれはね、僕のせいなの…だから大丈夫」
ぎゅーっと抱きしめる
「ありがとね…音雨ちゃん…」
彼女は何も言わない、だからずっと抱きしめた
そうだよ…彼女は悪くない、僕が勝手に嫉妬してたら彼女が可哀想だ…
「僕って…馬鹿だな…」
すやすやと寝息をたてている彼女の頭を撫でながら僕はぽつりとつぶやいた
ねぇ今日は満月だよあの日と同じだね