少年
刺すように射る太陽光。鬱陶しく肌にまとわりつく熱気と草いきれ。青い天にたなびく入道雲。一直線に貫く狭い二車線道路と、その両脇に広がる見渡す限りの田畑。赤、緑、黄色、色とりどりの夏野菜。久しく忘れていた、田舎の風景。
気が付くと、外に立っていた。電車に乗っていたはず、なのに。いつ降りて、どうやってここまでやって来たのか。いくら観察しても、周辺に駅らしきものは見当たらない。あるのは、ボロボロの庇の下に飲料メーカーの長椅子が置かれた、簡素過ぎるバス停くらい。
にしても、
「暑い・・・・・・」
揺らめく陽炎に、沸騰するアスファルト。上から差す直射日光と下から昇る反射熱で、急激に体温が上昇する。上着を脱ぎ、ネクタイを解いて、シャツの腕をまくり、装備を軽くしながら、バス停まで向かう。
額に滲む汗をぬぐい、どかっと腰を下ろす。長椅子が軋む。相当年季が入っているのだろう。褪せた赤のところどころに、錆びが目立つ。
「ん」
生ぬるい風が、身体に巣食った熱をほんの少しだけ舐め取っていく。
心地よく、気持ちいい。冷房を効かせた部屋もいいけれど、こういう自然の柔らかさは、外界でしか味わえない。肌に張り付いたシャツをパタパタとはためかせながら、そんなことを考えていた。
しばらくの間、眼前に広がる田園と空を何気なく眺めていた。何をするでもなく、呆けたように見とれていた。合唱を始めた蝉の声。さわさわと風に揺れる葉擦れ音。空を滑る小鳥のさえずり。
そんな中、
「茜~!どこだ~!」
遠くから響いてきたのは、元気のいい少年の声だった。