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世話焼き神様と社畜の恩返し。  作者: 鳥路
第三章:過去辿りと激動の35日目
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そして少女は神に成る

夜道を駆けて、私は息を切らしながら神宮への道のりを進む

そして、目的地まで辿り着いた


「・・・鈴?」

「祝!」

「夜分遅くにどうしたの?まさか、雪霞様に何か・・・!」

「・・・先程、血を吐いてしまわれました。もう、時間がありません!」

「じゃあ貴方はなぜここにいるの!雪霞様を一人残してここに来た理由を答えて!」

「・・・憑者神の可能性を信じて参りました」

「な、んで・・・」


確かな意志を以て彼女の疑問に答える

その答えを聞いた彼女は、喜ぶどころかむしろ、正気ではないものを見るかのように私を見ていた


「祝。辰の憑者神の枠は埋まっていますか?」

「いいえ、まだ・・・」

「では、好都合です。神主・・・様は神語りの統括でしたね。では、この儀式は、宮司様に直接交渉でしょうか」

「貴方、何を考えているの!自分からあんなものに・・・!」


彼女の手が私の腕を掴む

思えばこれが、最後の戻れる場所だった

けれど今の私は、雪霞様を救うことしか考えていなくて、取り返しのつかない選択肢を選び続ける


「雪霞様を救えるのなら、私はなんだってします。たとえそれが理に反していようとも」


彼女の腕を振り払って、私は神宮の奥へと向かっていく

本来なら許されたことではないだろう

神聖な場所に、土足で、なおかつ無断で立ち入るなんて


けれど、今はすべこべ言っている場合ではない

一刻を争うのだから・・・!


神宮の奥、そこにあるそこそこ豪華な扉を勢いよく開く

そこには、宮司だけではない他にも、雪霞様が教えてくださった神宮のお偉いさまが揃っていた


「・・・君は、花籠の」

「はい。その通りでございます。夜分遅くに、無断の立ち入り・・・深くお詫び申し上げます」


膝をつき、頭を下げて彼らに対して言葉を紡ぐ


「君がここに来たのは理由があるのだろう?」

「はい。私は皆様にお伺いしたいことがございます」

「言ってみたまえ」


許可をもらう。緊張で口が震えるけれど、それでも私は聞かなければならない


「・・・憑者神のことです」

「・・・それを、どこで」

「花籠家女給の巳芳三陽から伺いました。まだ、辰の憑者神が決まっていないということも」


一瞬、問いが来るとは思ってなくて驚いてしまう・・・が、嘘をついても意味はないと思いう、正直な答えを述べる

お偉い様の表情は、変わらない

それが逆に怖い


「ああ。憑者神の器として選ばれた家の者から・・・なるほど。決まっていなければ、君はどうする?」

「立候補は、可能なのでしょうかと思いまして」

「・・・一つ聞こうか。君は、何の為に神の力を欲する?」

「敬愛する我が主の為に、彼の病を癒す力を求めます」


私が理由を告げると同時に、周囲は無音になる

そして、間をおいてからお偉い様方は、なぜか拍手を始めた


「これだ」

「この願いだ。この純粋たる癒しを求める願いならば、きっと」

「彼もさぞ喜ぶのでは?」

「いい従者だ。素晴らしい」

「これで神語りも、今後も懸念なく行えるのでは?」

「その通りだな!我々にも、花籠様にもいい話だ!」

「遂に見つけた。辰の、憑者神」


口々に思う事を述べる

しかし、最後の方は何と言われた

聞き間違いでなければ、確かに・・・!


「で、では・・・!」

「ああ。早速儀式に取り掛かろう!今代の憑者神を誕生させるのだ!」


宮司の指示で、その場にいた全員が立ち上がり、それぞれ動き始める

その場には私と宮司だけが取り残された

宮司は、膝をつき続けている私と同じ目線に座り、目を見て話してくれた


「二階堂鈴、君が今代の辰の憑者神だ。花籠様の治療もお役目の一つだが、君のお役目は他にもある。しばらくは花籠様に注力しなさい。彼はこの村になければいけない存在だからね」

「はい。ありがとうございます!」


これで、彼を救える

それに涙する。彼の為に何かができることがとても嬉しいから


「本来のお役目は徐々に増やしていく。今後とも、頼んだぞ。これは、君が望んだことなのだから」

「はい。もちろんでございます」

「儀式場は奥だ。普段君の主人が神語りで使っている場所を使用する」

「神語りを・・・」


そこに、彼とよく一緒にいた零条と一年もいるのだろうか

神様が見えない私には、わからないけれど


「・・・見守っていてくれるといいなあ」


宮司の後に続いて、その儀式場へと向かう

服装は変えなくていいのだろうか。それに、身を清めたりとか・・・とか考える

けれど、何もしなくていいようだ

雪霞様は神語りの前は必ず身を清めるし、儀式用に着物も用意しているので必要かと思っていたが・・・いいのだろうか。こういうのは、よくわからない


周囲を見る

歩くたびに、憑者神として選ばれた子供たちが増えていく


「・・・ドブ鼠みたいな生き方してた俺が、子の憑者神。はは、笑えねえ」と子の青年は自分の人生の転がり方に驚きを隠せずにいた


「・・・鈴が辰。雪霞様の事があるからわかっていたけれど・・・複雑です」と丑の少女はその運命を呪う


「・・・わたくしなんかでよければ、この身、人柱として活用してくださいまし」と寅の女性は仕方のないことだと割り切り、運命を受け入れる


「・・・家の為だとわかっています。けれど、やはり売られたのは苦しいですね」と卯の少年は気弱な性格というのに自分を奮い立たせてその運命の先へと進む


「これは私が決めたこと。彼を治せるのなら、どんなことでも」と辰の少女は主人のために抱いた願いを背に儀式場へと早足で進んでいく


「・・・食い扶持の為だ。御袋、俺はあんたを恨んでないからな」そんな彼女を追うように、同じ主人を持つ巳の青年は恨み言を呟きながら進んでいく


「・・・この足が必要なら、切り落とせばいいのに。神様を憑けるなんてわけわかんない」と午の少女は好きなことを心の底から憎み始める


「・・・すう、すう・・・寝ている間に、連れてこられて。状況、わからない」と羊の少年は落ち着いているけれど止まらない震えを眠りで抑え込む


「・・・投獄されたかと思ったらこんなところで人柱?私、ついてないね」と申の女性は楽しそうに前を歩いていく。きっとこの先に待つものは獄中よりははるかに地獄だけれど、楽しいだろうから


「・・・まあ、楽しければいいかな。楽しいかわかんないけど」酉の青年はこれからのことに対する不安を抱きながら、普通に進んでいく


「・・・命令さえくれれば、僕はなんだって」戌の青年は、誰かから命令されてこの場に立っている。だからこそ、なんだっていいのだ。ただ、受け入れるだけ


「・・・何かをするためには、何かを犠牲に。わしはその犠牲に選ばれただけよ」

唯一年老いた猪の老人は運命を歪まされた若者たちの背を目にしながらその先に待ち受ける運命を悲観した


そして、十二人は宮司の後をついていく

私以外は全員悲観的な表情を浮かべて前へ進む

祝も、智も例外ではなかった


儀式場の扉が開く

正直言おう、儀式の事は何も覚えていない

入ってから、それぞれ十二支に対応する場所に立たされたのは覚えている

しかし急に眠くなって・・・気が付いたら私の身体には角と羽根、そして鱗の尾が生えていた

見知った二人はどうだろうかとそれぞれ立っていた場所を見る

祝には、牛の耳と尾が。智には何も生えてはないが、左目の周辺が蛇の鱗のような線が入っている

二人ともまだ気絶している


「・・・お目覚めですか?」

「はい。宮司様」

「おはようございます、竜胆様」

「え?」


宮司様は恭しく私の前で膝をつく

なぜ、彼は私の名を別の名で呼んだのだろうか


「貴方様の中におらす神は竜胆様と呼ばれる龍でございます。今後は、神としての名で呼ばせていただきますので、悪しからず」

「で、では・・・本名は」

「本来はお役目を終えるまで呼ぶことは許されません。神語りの彼は大丈夫かと思います。なんせ彼は神様のお気に入り。様々な呼称で呼ばれていると、他の神語りから報告を受けておりますから」

「それなら、まあ・・・あの、早く雪霞様の元へ行ってもいいでしょうか?」

「ええ。それが本題なのでしょう。早く向かわれてください。今度、詳しいお話をしたいのでお時間をとってくれると」

「はい!宮司様!」


私は儀式場から出て、今度は花籠の家に戻る為に駆ける

身体は軽い。重そうな尾がついていても、先ほどよりも早く駆けられている

これが憑者神の力だろうか

これなら来た時よりも早く、花籠の家に戻れるだろう


「待っていてください、雪霞様」


家で眠る彼を思いながら、私は帰路を急いだ

少しでも早く、少しでも良くしてあげたいと願って

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