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世話焼き神様と社畜の恩返し。  作者: 鳥路
第二章:神を宿す者たち
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28日目③:巳芳覚の悲願

「ごめんなさい、夏彦さん!私、若干調子に乗って・・・!」

「気にしていないから、頭を上げてくれ!」


日付が変わった後、俺とりんどうは用意された部屋に案内された

別々の部屋がいいと訴えたが、彩花さんは「もうじき夫婦なんだからいいでしょー」といいながら、眠ってしまった

その誤解は、りんどうが彩花さんと遭遇した時に言ったことが元なのだが・・・個人的には嬉しかったというのは、今は言うべきではないだろう

更に訴え続けてもいいが、彩花さんに嘘がばれたら俺はともかく、せっかく築いたりんどうと彩花さんの関係が修復不能なものになってしまうのではないかという心配もある


だから、今日も彼女と同じ場所で眠る。嘘を誤魔化すために

しかし、緊張よりは安堵が勝っているが、それでもいつもと違う場所だからか違和感がある


「・・・しかし、なんで私はあんなことを!」

「りんどう、そんな思いつめるようなことでもないだろう?」

「でも、気にしますよ。彩花さんには嘘をついて、夏彦さんには迷惑をかけて・・・」

「大丈夫だから。彩花さんにはほとんど会わないし、俺も、迷惑とか思ってないし、ここにいる間はそれで誤魔化そう。できるか?」

「できます。ううん、やります」

「それでいい。じゃあ、そろそろ寝よう。疲れただろう。着せ替え人形」


俺とりんどうは布団に入り、いつも通り寝る前に他愛ないことを話していく


「そうですね。まさか、夏彦さんが女装されるとは思っていませんでした」

「俺は鈴も参加するなんて思ってなかったよ」

「私は夏彦さんの割烹着がいいと思ったのですが、夏彦さんは私が着たものの中でどれがよかったですか?」


記憶を思い出しながら、俺はりんどうのどれがよかったか考える

メイド服から始まり、割烹着、コック、チャイナ服、寒い国で着ていそうなもふもふ防寒具、それから怪獣の着ぐるみに、バニー服、幼稚園のスモッグ、セーラー服などなど、色々と着せられたものだ


「俺は、その・・・割烹着やコック姿がぴったりでいいと思ったんだが」

「他には?」

「最初に見たメイド服が、一番ぐっと来た」

「ぐっと・・・」

「いや、その・・・全部よかった。可愛かった!」


半分やけくそ気味に感想を告げる

隠したかったけど、隠せる雰囲気ではなかったからだ


「そうでしたか。そうですか!」


りんどうは嬉しそうに布団を顔の半分まで被って、足をバタバタさせる


「りんどう、寒い・・・」

「ごめんなさい!けど、嬉しくて!」

「そうか・・・ふわぁ・・・」


俺は大きな欠伸をして、その光景を眺めた

それを見たりんどうは俺の方に近づき、顔を覗いてくる


「夏彦さん、眠いですか」

「ん・・・」

「じゃあ、朝の為に眠りましょうか」

「ああ・・・おやすみ、りんどう」

「おやすみなさい、夏彦さん」


互いにお休みの挨拶を交わした後、俺は目を閉じた


・・・・・


「覚。なぜ辰がいるの?」


巳芳家の地下室

そこに、俺たち兄弟と両親は集まり、今後の対策について話す

議題はもちろん、神語りと辰の憑者神である二人の事


「報告しませんでしたかね、お母様」


今のお袋を「お袋」と呼ぶと怒りを買うので、いつも通り、面倒だがお母様と呼ぶ

やれやれ、この女。本当に演技がうまくて反吐が出る

何が「なっちゃん」だ。夏彦の事、息子ではなく巳芳家の発展のための道具にしか見ていない癖に

何が「ひこにゃー」だ。夏彦の事、神々と語れる化物同然の扱いをしている癖に

俺の大事な友人を、人とすら思っていない癖に・・・本当に反吐が出る


そんな両親に逆らえない俺自身にも苛立ちを覚える

上辺だけの家庭環境を彼に語り、だまし続けている事も・・・正直、ぎりぎりのところで耐え続けている


「神語りの隣に、辰がいてもおかしくはないけれど、あんなに親密なの?」

「俺は、そう言う話を聞いていません。夏彦と辰は同居関係だけだと」

「同居だと!?覚!なぜ神語りに先に近づいたくせに、辰に先を越されているんだ!」

「俺と、夏彦はいい友人関係、ですが・・・それ以上でもそれ以下でもありませんし、お父様は何をお望みなのですか?」


親父は部屋中に響くほどの舌打ちをする

それぐらいもわからないのか無能というように、凍てついた視線が俺に向けられた


「覚、わかって聞いているのでしょう?巳芳家は、神語りを欲しているの。これからの繁栄の為に。その能力の血が欲しいわけ」

「・・・だから俺にどうしろと?巳の遺伝子ならともかく、神語りの遺伝子は残せませんよ。俺だって男ですからね。男同士で子は望めませんよ」

「・・・あんなに親密なら、将来的に望めるのでしょう?」


あんた、何言ってんだ。いつもの俺ならそう言えただろう

狂っている事を自覚している人間なら、好き放題言える

けど、御袋は自分が狂っていることに気が付いていない

巳芳家の為だと、盲目的に狂気を生み続ける


「つまり、あんたは夏彦と、辰の間に子が生まれたとして・・・俺に、その子供を奪えと?」

「ええ。神語りの血縁者、そして尚且つ辰の血縁者!神語りは血で受け継がれると言われているし、憑者神の力だってきちんと引き継がれる!最高の神語りを手に入れるチャンスなのよ!できるでしょう?やりなさい!」

「夏彦と辰の、二階堂鈴の境遇知ってんだろ!?二人とも孤児だぞ!その先にもその運命を強要する気かよ!」

「その子供が孤児になっても何ら問題ないでしょう?」

「それに、化物同士の子なんだ。むしろ家で飼われることを光栄に思うべきだ」


それに、弟たちも同意を示すように頷く

こいつら狂ってる。何を言っているのか俺には到底理解できない


「・・・俺は、やりません」

「巳芳家跡取り第一候補の貴方がやらなきゃ、誰がやるのよ」

「あんたらの意見に同調している弟共なら嬉々としてやるでしょう?なあ、暮!」


特に夏彦を敵視している弟を名指ししてみる

両親は表面的に夏彦を懐柔するため、でろでろ対応を夏彦にしている

もちろんそれに夏彦が懐柔されたことはないが、心配ぐらいはしている。本当に優しくて心配になる男だよ


しかし、その中でその光景を面白く思わない奴がいる

それが暮、両親を盲目的に愛する馬鹿な奴だ

名指しされた瞬間、暮は苛立ちを隠していなかったが、両親にアピールするチャンスだと気が付いたのだろう「無能もよくわかってんじゃん」と俺に聞こえるように言った後、嬉々として立ち上がる


「はい!父様と母様のご命令とあれば!俺が神語りと辰の落とし子を奪い、抵抗した二人の首をお持ちいたしましょう!」


高揚した気色悪い笑みを浮かべ、両親に期待の眼差しを向けた

お前ならそう言ってくれると思ったよ。気持ち悪いけど


「ほら、この家には俺以外にふさわしいのが何人もいる・・・」

「憑者神としては、未熟者ばかりだがな」

「そうかよ。鍛えればどうにかなるよ。さぼり魔の俺でも、ここまで使えるんだからさ」


少しだけ成った姿を全員に覗かせる

・・・神の姿になるのは正直言って初歩中の初歩だ

それすら弟たちはできない。俺だけなのだ

だからこそ、両親は俺を手放したくない。俺をご先祖様同様適当な女とくっつけて、その遺伝子を残したいと考え続ける

下手をしたら、巳芳家は憑者神の家系ではなくなるのだから

いっそのこと、無くなってしまえばいいのにとは思うけど


「俺はその跡取りレースからも降りるよ」

「そんなことが許されると思うの?」

「降りてみせるよ。どんな手段を使ってでもね」


例え、あんたたちを呪い殺してでも・・・俺はこの家を潰す

その為に、あの子を使うのは申し訳ないけれど・・・少しずつ吸い出しているんだから

身体に負荷はかかる。けど、それでもあんた達を消すためなら、その毒すら甘い蜜だ


あの子の呪詛はとても極上だ。どんな手段でも解くことはできないだろう。それを、あの子が望まない限り

それを俺のものにできたら、俺の操縦下として操ることが出来ると推測している

つまり、丑の呪詛を吸い出すふりをして俺の中にため込み、蛇の毒として自在に使うことが出来たならきっと、俺の悲願も成されるだろう

・・・巳芳家を潰すという、悲願が


俺は家族に背を向けて、地下室を後にする

後ろから御袋の叫び声が聞こえるが、聞こえないふりをして地上へと戻った


地下室から出ると、もう朝になりそうな感じだった

おかしいな。まだ夜だったはずなのに・・・無駄な時間を過ごしたらしい

身体も疲労を訴えているけれど、俺がこの家に帰ってきている間・・・寝るわけにはいかない

夏彦に、そして二階堂鈴に何が起きるかわからないから


「・・・そろそろ起きているだろうし、もうここには用はない。二人を連れ帰ろうかな」


もう両親の機嫌を取る必要もないだろう

だからもう、この家に来るのも最後だ

俺は最後だからとその光景を目に焼き付けることもなく、大事な友人が眠る部屋まで足を進める

監視として置いていた蛇には反応がない。だからきっと大丈夫


『・・・お前、女癖悪いんだってな』

『別に・・・、向こうから声をかけてくるだけだよ。巽君。この前は助けてくれてありがとうね。俺、喧嘩は苦手だからさ』

『見てればわかる。別に遊ぶことは悪いこととは思わないが、お前の家なら素行調査ぐらいできるだろう?その女の後ろにいる彼氏の厄介さぐらいは調査したらどうだ?』

『へえ。金かけて遊ぶ女を選べって?』

『ああ』

『そのメリットは?』

『わからないのか。今回みたいな厄介ごとに巻き込まれる回数が減る』

『そりゃいいね』


女癖の悪い俺の、悪い噂ばかりの遊び癖を知ってもなお、友好的に接してくれた大事な友人

俺を止めてくれたり、一歩立ち止まらせて考える時間を提案してくれたりしてくれたのは夏彦だけだった

そして、唯一頭のおかしい人間に絡まれていたところを助けてくれたのも、夏彦だけだ

だからこそ、大事な縁であり、これからも持ち続けたい縁だと思う

例え、世界一厄介な家族を敵に回してでも

俺は、こっちの縁を大事にしたいから


「・・・今度こそ、俺が守って見せる」


神語りについた護衛として、そして大事な友人として

そして前世からの約束を果たすために

そう決意しながら、俺は友人と、友人と一緒にいる神様の元へ向かっていった

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