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「緑原物語 ―或いは世界はオレのカキフライ―」  作者: 上田クロ
第二章:形而上学的美少女
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 某、ゾンビが7日事に襲ってくるナイトメアモードとか。

 某、ダークなソールな初見殺しとか。


 コントローラー投げつけて「ムリゲーじゃん。死んで覚える系じゃん」とか云いながら真黒なモニターに映る貴方の瞳。


 それが、今のオレの顔である。


 雷放つ剣だよ? 

 ゴツイオッサンが飛蝗に乗ってんだよ?

 勝てるわけないじゃん!!

 死ぬじゃん!!


 何度か死線を越えて来たオレが云うんだから間違いない。

 コレ死ぬわぁと思った瞬間、割と冷静になる。

 だから、オレは常勝将軍の視線を追う事が出来たのである。

 

 雷神の顔は岸へと向いていた。


 彼の軍勢、彼の兵士。

 ポータルから出現した軍隊は、海を背に隊列を組んでいる。

 騎馬から先に現れたのが(あだ)になっていた。

 朽ち果て爆ぜる森に追われた動物たちが、長虫達を振りまき先陣を切る。

 長虫に(たから)れた騎士が降り落そうとしながら腐っていく様は、一瞬で訓練された兵士達にパニックをもたらした。

 そして、バンシー。

 海を歩いてきた、生ける屍ども。


「小僧。お前があの哀れな化け物どもを作ったのか?」

「オ、オレならもう少し可愛くデザインするわ!」


 海中に腰まで漬かりながら減らず口を絞り出す。


「長髪の剣教会とは別口のククルカンと云うわけか」


 チラリと一瞥(いちべつ)オレに与え、雷神が(つるぎ)を掲げる。

 黒い夜空を閃光が切り裂き、切っ先に(いかずち)が落ちた。


 プロテクション。

 クールタイム残り1秒。


 有無を言わさず海面を(はし)る雷に弾き飛ばされる。

『HPバー』が減った!

 痛い?

 そんな感想いただく暇もなく、海を転がる。

 帯電したオレの体と、海面の電流が反発しているのだ。


 プロテクション。

 クールタイム残り0秒。


 プロテクションが切れた瞬間、激痛が体を駆け巡る。

 意識が飛んだら死ぬ。


 海岸から聞こえる騎士たちの怒声。

 そしてバンシーの啜り泣き。


 しこたま体を水面に打ち付けながら沖へと向かっている。

 結果オーライ。

 雷オッサンに殺されると思ったが、当初の予定通りその先にはポータルの出口があった。 


 水面(みなも)を奔る雷は、鋼鉄飛蝗と雷神をも襲っているのだが平気な顔をしてやがる。

 ふざけんな! チートだ! チート!!


 良いニュースと悪いニュースがある。


 良いニュースはポータルに突っ込んだの生きている。

 扉を抜けると、どこかの都市。

 海が向こうに見える。

 ヴァゴがバンシー相手に無双している。

 死ねばイイのにね。


 悪いニュースはオレが胸に抱えた石板からもたらされた。


「ダーリン! 燃えてる! 燃えてる!!」


 麻の服が発火した。

 比喩抜きで転がり込んだ見知らぬ都市。

 転がって火を消す努力。


 扉を潜ろうと待ち構えていた兵士達が蜘蛛の子を散らす。

 ボロボロになった上着を投げ破り捨て、思いっきり密集している場所目がけて投げ捨てる。


『ダーリン! これどうしようもないんじゃない?!』


 水瓶が云うのも最である。

 兵士がゾロゾロ出てくる謎の扉に、好き好んで飛び込んだのだ。


 当たり前の様に、四方を槍で囲まれている。


「な、何者だ?!」

「燃えてるぞ? このガキ?!」

「と、捉えろ!!!」


 怒声やら罵声。

 だが、大将は向こう側でバンシー相手に無双中。

 団体ってのは、(かしら)がいないとただの烏合の衆。

 一瞬で決断を下せる英雄ってのは、ほんの一握りだから英雄なのである。


「水瓶『妖精起動』!!」


 視界が一気に魔法陣で埋まる。


『どうせ動けないからこの状況で魔法選ぶのね?!』

「解ってるなら目くらましになるような魔法を寄越せ!! 1億あるんだから何かあるだろう?!」

『煙? 閃光?』

「透明とかないのかよ?! 今まさに必要だろ?! 人目につかなくなる魔法!!」

『判ったわ!! ダーリンこの魔法よ!』


 大きく自己主張をしてくる魔法陣を意識し、魔法名を叫ぶ。


「ハイド!!!」


 真っ暗である。


「おい、水瓶。妖精起動解け! 真っ暗だ」

『解いてるわよ!』


 暗闇。

 灯は水瓶のバックライトだけ。


『何やってるの? ダーリン?』

「いや、懐中電灯のアイコンあるかな?」

『無いわよ! 水瓶はタブレット端末じゃないのよ!」


 突如、横に細長い光が生まれる。

 外の風景。

 少し、怯えたような兵士の瞳。


 ボスン。

 ボスン。


 と、間抜けな音が周りからしている。

 兵士たちが槍で突っついているんだ。

 そして、ヒソヒソと。


「お、おい。コレってなんだ?」

「し、知らねぇよ?! 四角いな?!」

「も、文字が書いてある」

「えーと?」

「amazon?」


「段ボールじゃねぇかああああああああああ!!!」


 すくっと立った。

 腕は箱の両脇を突き破って出ている。

 頭は箱の中である。

「透明人間じゃなくて、段ボール人間じゃねぇか!」

『当たり前でしょ?! ダーリンに透明化の魔法なんて教えたらとんでもないことになるに決まってるでしょ?!』


 ちっ!

 それとなく覚えてそれとなく悪用しようと思ってたのに!?


「どうすんだよ?! 人目につかなくなる魔法って言ったよな?!」

『段ボールは身を隠すには最適なアイテムなのよ?!』

「どこのスネークだよ?! どこの明夫だよ!」

「しかもamazonかよ?! 海からやってきたのか熱帯雨林から来たのかどっちんなんだよ? どこのダンボー君だよ? 追いつかねよ! いろいろと追いつかねぇよ!!」


 絵面としてはこうだ。


 完全武装の兵士たち。

 中世の街並み。

 段ボールを頭から腰のあたりまですっぽり被る不審人物。


 もう、これ都市伝説になれるよね?

 海神段ボール男的な?


「に、逃げた?!」


 当たり前だ。

 動けるならさっさと逃げる。

 いかな訓練された兵士たちといえど、この余りにも非現実的な状況にそうそう対応できるはずもない!

 そう考えれば、オレの顔より海神段ボール男のインパクトの方が強く意外と面割れてないかも。悪い選択ではなかった?


 第一、市民たちが恐れ戦いて勝手に道を譲ってくれる。


 お勧めだ!

 海神段ボール男!

 逃亡必須アイテム!


 路地裏に逃げ込んだタイミングで段ボールが消えた。


 さて。


「おい。役立たず」

『何よ? セクハラ魔人』

「これからどうしよう?」

『普通は、何か目的みたいのがあって、それに沿って行動する的な? 所謂(いわゆる)クエスト?』

「沈没、バンシー、長髪の剣教団、セクシースケルトン、妖精の国、雷神に目をつけられて段ボールで逃げた」


 指折り数えてみた。


『ハードね。一回ぐらい死んでもおかしくないわね』


 うーむ。


「なぁ」

『何かしら? ダーリン?』


「何時になったらヒロイン登場するの?」


『?!』


「おかしいよね? 普通最初からヒロイン登場でしょ?」

「敵対してますけど私がメインヒロインのツンデレよとか! 助けたのがツンデレ王女様でしたとか! これからの冒険よろしくツンデレさん的な?」

『どんなけツンデレでヒロイン埋めようとしてるのよ?』

「つかみ的に、最初は冷たいけどスグ落ちするヒロイン大事だろ?! 冒険を進めようと云うモチベーション的に都合のいい女キャラ必要じゃないか?!」


 水瓶が自分を指さしている。


「オレはここに嫁探しに来たんだよ? モテモテで(ただ)れた生活を求めてるんだぞ? 何でこんなハードな展開なんだよ? おかしいよね?」


 おおう、水瓶のセクシーポーズだ。

 しかも何処か昭和の匂いがする。 


 レトロ感満載なセクシーを披露しているアホな娘は無視するとして。

 現状確認。


 土と煉瓦(れんが)と石。

 チェーダー様式の家々が並ぶ。

 突き出した出窓に壁を這う(つた)

 そこから西を望めば、武骨な角ばった城壁が見える。

 小高い丘に巻き付くように階段が城へと繋がっている。

 四方に突塔(せんとう)

 いくつもの出窓とバルコニーで出来た真白な城。


 東を望めば、下へと伸びる石階段。降れば丁字路(ていじろ)に差し掛かる。

 2人並ぶのが精いっぱいな狭い路地。


 月光に照らされ石畳に孤影(こえい)

 影は小柄な鎧甲冑。

 胸で抱えているのは。


 人の頭だった。


 カーン。

 カーン。

 遠くで鐘がなる。

 オレを探す鐘だ。


 路地に低く(こだま)する鐘音を他人事のように聞きながらオレを見上げる全身鎧。


 白く小柄である。

 純白の鎧は少女を模している。

 髪も、頬も、唇も。

 彼女は鋼鉄で出来ていた。


 鋼鉄の唇をピクリとも動かさずに鎧人形は言った。


「いくえふみえ」

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