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新たな神は突然に


 神様の訪問は突然に



 魔王は目が覚めると、雲の様な物の上で目を覚ました。


「…………」

 

 無言で起き上がり周囲を見渡す。周囲には雲しかなく、上は少しピンクがかった色をした空が広がっている。


「(……特殊な空間に閉じ込められたか?)」


 魔法魔術やスキル全般をフル稼働させ今置かれている状況を確認する。過去にあったケースからも考慮し、ある結論に至った。


「なるほど『夢』か」


 魔王は魔力を少しずつ開放し空間全体を揺さぶる。


「出てこい。いるのは分かっている」


 声に反応したのか、むくりと起きる影が見えた。魔王は偉大なる鉄剣を手中に出現させ影まで【転移】で近付く。


「そんなに急がなくても戦う訳じゃないよ」


 そう語りかけてきたのは起きた影、一人の少女だった。


 魔王から見てもかなり小柄で、人族の6歳前後の体型だ。派手な装飾品をつけたワンピースを着ており、それを隠す程のモコモコした白いロングヘアをしていた。


 青と黄色の瞳を擦りながら欠伸をして魔王の方を向いた。


「やあやあこんにちは、僕は『睡眠の神』スラーパァ。眠っている所失礼するよ」


 口元だけ微笑み挨拶をする。


「他者の夢に土足で押し入った時点で失礼の域を脱しているぞ?」


「そう言わないでよ。僕はこうじゃないと君達と接触できないんだ」


「有利な場所で、が抜けているぞ」


 スラーパァの眉が少し動いた。


「……流石だね。そこまで分かっちゃうんだ」


「少し考えれば誰でも分かる。ここはお前の領域、そして我は夢を経由して来た精神体だ。これをお前が有利だと言わずして何と言う」


「それが僕の『権能』だからね。寝てる子皆僕の世界に連れてこれるんだ」


 魔王の眉間にシワが寄る。


「ほう、では我を連れて来た理由を聞こうか?」


「お、やっと乗り気になってくれたね。それじゃあ長い説明を始めよう」


 指をパチンと鳴らすと、魔王達を取り囲む様にしていくつもの画面が空中に現れる。画面には様々な世界が映っていた。


「僕の説明をする前に、世界がいくつも存在することは知っているね?」


「無論だ。でなければ異世界からの転移転生が成り立たん」


「いわゆる『並行世界』。別の事象で成り立つ別々の世界達さ。僕はその世界達を管理する『神族』なんだ」


 スラーパァは画面をいくつか自身の上に集める。


「神族は生まれながら知性と権能を持つ選ばれた者達、集団と言えばいいかな。僕らは無数にある世界によって存在が保たれている。世界が崩壊することは僕らの死と同義なんだ。だから僕らは崩壊しそうな世界を守ることにした。しかし直接世界に手を出し過ぎると確実に世界が崩壊する事が分かって、どうしたら効率良く世界を崩壊させないか模索した。それで一番手っ取り早い方法が人を異世界から異世界へ転移転生させることだったんだ。これが上手くいって神族が世界を崩壊させない定番となったんだ」


 画面に自分達の過去の映像を流して説明を進める。


「最初は少数で手が回らなかったりして苦労したけど、ドンドン神族が増えて安定するようになった。けど世界を自分のいいように作り変えようとする者、実力不足で世界を崩壊させてしまったりする者が出て来て問題も増え始めたんだ。仕方なく初期の神族達はリーダーとなってルールを決め、これ以上被害が出ないようにして事態を収束させた。それでも目を盗んで悪さをする神族はいる」


 半分愚痴を零しながら説明を続ける。


「そして今回、その悪さをしようと企んだ女神が君達の世界を狙った。で、返り討ちにあって死んでしまった。本来神族が殺されたら報復するんだけど、やってた事が事だから報復は無しになったんだ。でも神族の領域に踏み込んで殺しに来る存在を放っておいていいのかって事になって、僕が来て話し合いに来た訳なんだ」


 スラーパァは後ろに手を組んで魔王の顔を見る。


「そういう訳で、今後僕がこの世界の神様になるから仲良くやろうよって挨拶をするために魔王君をここに呼んだんだ」


 魔王は睨むようにしてスラーパァを見下ろす。


「我を何の断りもなく連れて来た理由は分かった」


 

 直後、スラーパァの首元に剣を振った。



 首の薄皮に当たり、少量の血が流れ落ちる。


「……何のつもり?」


「世界の管理をしているから怯むとでも思ったか? 見下した者達の勝手な理屈や友好などで本心がバレない訳が無かろう」


 魔王には『真偽眼』がある。どれだけ言葉を重ねようが嘘を見抜き、真実へと到達できる。


「……はあ、やっぱりダメか」


 スラーパァは首に当てられた剣を掴んだ。


「神族に本気で勝てると思ってる?」


 魔王の剣が少しずつ首から離される。魔王が手を抜いている訳では無い。この小柄な少女の力で無理矢理離されているのだ。


「彼女はまだ『名無し』、僕達の1から10の階級で一番下の10級神族だった。でも僕は違う」


 偉大なる鉄剣にヒビが入った。


「3級神族。上から3番目だけど彼女とは比にならない強さだよ?」


 言い切ったと同時に偉大なる鉄剣が折れた。スラーパァは持っていた破片を投げ捨てる。


「それでも僕と戦うなら容赦はしないよ?」


 周囲の雲が盛り上がり、徐々に黒く変色する。相当な魔力を帯び、これだけでどれだけの強さがあるか

分かるだろう。


「さあ、どうする?」


 スラーパァは少女とは思えない圧をかけながら問う。だが、



「期待外れだな」



 周囲の状況が一変する。


 

 盛り上がった雲が元に戻り、ピンクがかった空が紫へ変色する。更には空に無数の目が現れた。


「(これは、領域が乗っ取られている?!)」


 スラーパァの心に焦りが生じる。領域は神族にとって一方的に有利になるフィールド。それを取られるのは戦力が半分削がれたのと同義だ。


「(神族でも押し返される事はあっても乗っ取られるなんて事は無い。どんな能力でこんな事を……!?)」


「この程度で優位に立っていたと思っているのなら見込みが甘すぎる」


 魔王は折れた偉大なる鉄剣を『収納空間』へとしまい別の武器を取り出そうとする。


「どの種族よりも強いと胡坐をかいていた連中に負ける我では無いわ!!!」


 取り出すと同時に薙ぎ払った。


 取り出した武器は『神滅光剣クラウソラス』。神をも殺す光の剣だ。


 スラーパァ目掛けて放たれた斬撃は高速で頭上を通過し『見えない壁』に直撃した。壁は崩壊し、次元の狭間が見える。


 魔王はクラウソラスを地面に突き立てる。


「さあ、交渉と行こうか」


 



お読みいただきありがとうございました。


次回は『交渉という名の一方的な取り決め』になります。

お楽しみに


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