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マリーナというエルフ Ⅰ


彼女の名はマリーナ。剣姫である。



 エフォート大陸 アルフヘイム地方 イルミンスール


 エフォート大陸の公共事業、公的機関の管理等を行っているこの城で、今日もマリーナは仕事に励んでいた。事務処理から始まり魔王から認可してもらった事業の進行、各部署の状況把握と指示など【加速思考】と【書類作成】を駆使してこなしていく。


 仕事を始めて1時間、今ある全ての仕事を終わらせ一息つく。そこにエルが入って来る。


「失礼します。追加の書類をお持ちしました」


「急ぎの案件か?」


「いえ。今日の定時より2時間前に処理して頂ければ問題ありません」


「分かった。机の上に置いておいてくれ」


 エルは書類を机の上に置いた。


「お疲れですね」


「そうだな。特に元老院が騒ぎ出しているのが原因だ」


「またですかあのジジババ共」


 エルはあからさまに嫌な顔した。



 エルフ元老院


 エルフ族の長寿達が集まり、色々な取り決めをしていた集団だったが、今ではただのご意見番となっている。エルフ族内では権力と繋がりを持っているため、マリーナ達にとっては無視できない存在だ。年長者として良い意見をしてくれるならいいのだが、理にかなっていない古風な考えを押し付けて来る。今を生きる若いエルフからしてみれば厄介者となっている。エルが嫌な顔をするのもそれが理由だ。



「人族討伐運動を促しているらしくてな、若い世代は無視しているが中年世代が賛否両論の状態だ」


「私の父もどっちかと言えば人族討伐派なんですよ。……まあ勇者大戦を知っている世代ですから」


「そうだったな。私の両親はエルの父と同世代だが融和派だ。しかし親戚の一部が討伐派なんだ。だからそっちの方とは仲が悪い」


「元老院連中が全員くたばっても残りそうですね」


「そうだな」


 互いに溜息をついて残念そうな顔をする。


「そう言えば元老院にいる私の祖父から手紙が来てたな」


「『大剣聖』トゥーデ様からですか?」


「そうだ」


 大剣聖・トゥーデ


 エルフ族では知らぬ者はいない生ける伝説、剣術の達士である。マリーナの使う剣術を作った根源に当たる者だ。


 元十二魔将であり、今は現役を退いて元老院に在籍している。


「その手紙がここにある」


 机の引き出しから一つの封書を取り出した。


「なんであるんですか」


「いや、誰かと一緒でないと怖くてな」


「まあ、あの方の事ですからね……」


 マリーナとエルは眉間に少しシワを寄せていた。


「……とにかく開けるぞ」


「はい」


 マリーナは恐る恐る封を開け、中身を取り出した。中には数枚の手紙と1枚の写真が入っていた。


「まずは内容からだ」


 手紙にはこんな内容が書かれていた。



『愛しの孫、マリーナへ


 いえ~い元気してる?!?


 お爺ちゃんは今海でサーフィン旅行中! 可愛いくてプリプリな若い子ちゃんとブイブイしながら満喫中で~す!!

 大剣聖素敵とか言われながらもう剣技見せまくりでめっちゃハッスルしてます! もちろんサーフィンも大技連発でたのち~!!!

 

 それはそうと、この間昼間にきゃあきゃあ言われながら楽しんでいたら超級魔獣が飛び出してきて周囲騒然の大パニック! そこにお爺ちゃんの新技で超級魔獣刺身にしてやったわい! 余った部位はBBQにしたぞい! そしたら女の子がワシに惚れて一夜を共にハッスルハッスル



 『瞬ノ剣:山茶花』!!!!!



 文章に目を通している途中でマリーナの剣技が手紙に炸裂した。手紙は無残にも切り裂かれ、原形を留めていなかった。


「あんのセクハラクソジジイめ」


 エルは女性がしてはいけない位の嫌な顔をして唾を手紙に吐き捨てた。


 トゥーデはこんな手紙を平気で親族に送る為、女性陣から圧倒的な不評を買っている。これは昔から変わっておらず、魔王すら頭を悩ませた性格だ。元老院でも考え方がかなり自由で柔軟なため、割と問題視されているが何故か黙っている。


 マリーナは怒りで息を荒立て、剣を握りしめていた。


「マリーナ、落ち着こう」


 エルはマリーナの背中を摩る。


「たまに、欲しい情報を送ってくれるから、質が悪い……!!」


「そうねー。元老院の内部事情とか勇者の動向とか重要な事書いてる時あるからねー。本当に質が悪いよねー」


 エルは写真にニコニコダブルピース女の子10名付きで写っているトゥーデをゴミを見るような目で見下しながらフォローする。


 マリーナは深呼吸しながら気持ちを落ち着かせる。


「……相変わらずといった所か、お爺様は」


「今度会う時は容赦なく一撃入れてやりましょう」


「それには同意しておく」


 

 ・・・・・・



 それから数刻後、次の会談で話す内容の打ち合わせのために魔王と連絡を取っていた。


『では明日も頼むぞ』


「承知いたしました。ところで魔王様、私の祖父トゥーデから何か連絡はいっていませんか?」


『トゥーデからなら昨日通話で話した。どうやら魔獣を倒したと言っていたな』


「それはもしかして『災害級』ですか?」


『……鋭いな、確かに災害級魔獣を単身で3体倒していたぞ。矮小化した手紙でも来てたか?』


 マリーナはフッと笑った。


「はい。お爺様の事ですから心配させないようにわざわざ送ってきたのだと思います。内容はアレでしたが」


『相変わらずだな。手紙の内容は察しておくが、あまり心配する事は無いだろう』


「そうですね」


 手紙の真意を確かめ、改めて『まだ守られている』と痛感したマリーナだった。





お読みいただきありがとうございました。


次回は『マリーナというエルフ Ⅱ』になります。

お楽しみに。


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