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八天眼の魔王 Ⅳ


神よ、お前は絶対では無い。



「クソッたれがあああああ!!!!!」


 女神は異界を覗く水晶を床に叩きつけた。水晶は粉々に砕け、女神は息を荒くして髪をかきむしっていた。


「あの下等種族共、調子に乗りやがって!! 何が邪神だ! 何が醜悪だ! 好き勝手言いやがってえ!!」


 女神がいるのは女神自身が作り出した小規模な異世界だ。ここには女神しかいないが、快適に暮らすために色々な設備が整っている。広い豪邸に手間のかからない庭、いつでも御馳走が並ぶ食堂に自身の彫刻が飾られた露天風呂まで自分の好きな物で埋め尽くされている。


 今はリビングでカイトと繋げていたが、カイトが完全に死亡したため繋がりが完全に消滅した。それに腹を立てて怒鳴り散らしているところだ。


「はあ、はあ、はあ……」


 散々怒鳴った後、息切れをしながら気持ちを落ち着かせる。


「(……向こうの時間の流れはこちらより遅い。冷静に策を立てる時間は十分にある)」


 女神が宙に手をかざすと空中に幾つもの画面が現れる。その中には魔王がカイトを殺した直後を映しているものもあった。


 女神はその画面に手をかざした。


「こいつさえ押さえれば、魔族共なんて大した事は、無い!!」


 すると、首都サゴンジュ全体に光の壁と天井が現れ、箱型の結界が現れた。それを見ていた女神の表情が薄気味悪い笑顔になる。


「『魔力遮断』と『空間異相』の結界。これで奴は魔法魔術、スキルが使えなくなり、外界との連絡も遮断された。使うのに相当エネルギーを消費するし、入った転移転生者にも影響が出るから使わなかったけど、これなら問題無いわね」


 女神は豪邸の外に出て広い庭に出る。新たに画面を出現させ直接操作する。


「次は100人の異世界人をこちらに呼んで、今度こそ魔族共を根絶やしにしてやるわ……!」


 女神が魔族を敵視する理由、それは


「私の理想の世界に魔族はいらない。人間だけの、私だけを崇める最高で美しい世界こそが正義なのよ!」


 己の歪んだ願望を叶えるためだ。



 ・・・・・・



 数十分で異世界転移転生の手続きを完了させ、自分の美しい人工知能ホログラムを各自に見せるだけとなった。


「手間だったからやらなかった洗脳もちゃんとやったし、これで彼らは私の忠実な僕となったわ」


 作業完了の表示が画面に表示され、転送ボタンが現れる。女神はボタンに指を置く。


「前の異世界人が作った世界地図のおかげで世界中に異世界人を転移できる。座標も修正したから完璧だわ」


 ドス黒く、悪意に満ちた笑みで指に力を少しずつ加える。


「行きなさい勇者達。魔族を滅ぼすのです」


 ボタンを完全に押し切り、100人の異世界人が魔族領全域に転送された。画面を通じて途中経過を確認しながら女神は愉悦に浸っている。


「これでサポートも随時可能。カイト並みの強さの子達で一杯になったわ……」


 女神の歪んだ笑みが頂点に達した。


「あはははははは!!! ざまあみろ魔王!! これで私の勝ちだあああ!!!」


 声高らかに勝利宣言を言い放ち、大笑いを始めた。



『【潰れよ】』



 大笑いをしてから数秒後、画面から聞こえてきた一声で14人の異世界人が死亡した。


「…………は?」


 大笑いで開けた口のまま、画面を確認する。確かに14人もの異世界人が死亡した。


 いきなりの事態に対応できず凍っていると、別の画面が発光した。



『【めっ】、です♪』



 さらに14人死亡。



『『黄金獅子流奥義・猛虎正拳突き』』



 15人死亡。



『『龍の怒号』!!』



 15人死亡。



『【インフェルノ・ヘルストリーム】』



 14人死亡。



『【楽園追放】』



 14人死亡。



『【桜花剣舞・千本桜乱れ咲】』



 14人死亡。



 

 全ての画面からの映像が途絶し、100人いた異世界人は全滅した。



 たった数秒で全滅の報告が入り、女神は混乱していた。


「な、は、え」


 100人いた異世界人の強さはミュー、アンシェヌ以上が最低で最高はカイトよりも強い。更には光のヴェールと『空間掌握』を持っている。魔王がいないのに負けるはずがない。なのにたった数秒で全滅した。


「訳が、訳が分からない……!!」


 女神は苦悶の表情でふらついた。




 魔王並みの強さを持つ魔族が他にもいる。それも複数。




 魔王を抑え込んでいるにも関わらず全滅したならばそう考えるしかない。



 だとすれば、もう打つ手が、無い。



 頭を掻きむしりながら思考を巡らせるが一向に結論が出せない。


「何なのよ、何なのよあの世界は!!?」





「我が統治する魔族の世界だ」




 女神以外誰もいないはずの世界で返事をする声が響いた。



 女神は目を見開き、ゆっくりと振り返る。



 そこにいたのは、



「何で、お前がいるのよ」



「我がここにいるのがそんなに不服か? 女神よ」



「何でお前がここにいる!! 魔王!!!!!」



 そこにいたのは、サゴンジュで結界に閉じ込めたはずの魔王だった。



 女神は後退りをして魔王と距離を取る。


「あの程度、体内魔力だけで木端微塵に破壊できる。魔王を舐めるな」


「だ、だとしてもどうやってここに?!」


「お前が直接加護していた少年の繋がりを辿って異空間世界の座標を割り出し、時空間系能力を駆使して道を作り到達しただけの話だ」


「無茶苦茶だ……!」


 女神は魔王が近付いてくるのに対して、間合いを取るために後退していく。


「さて、さっきの言葉はハッキリと聞かせてもらった。お前はただ単に魔族が気に入らないだけらしいな?」


「それがどうした?! 容姿がかけ離れた醜い怪物なぞ反吐が出る! お前達化け物がいない世界こそが理想の世界なのだ!!」

 

「その程度の器量でよくもまあ神を語ったものだ。聞いて呆れる」


 魔王は呆れた表情で嘆いた。


「貴様なぞ、ただ強大な力を手に入れただけの凡人だ。神と呼ぶにはおこがましい」


「黙れ!! 私は女神だ! お前程度に指図される筋合いはない!!」


 魔王は一気に踏み込み女神の首を掴んで持ち上げた。


「あ、ぐ……!!」


 首を掴んでいる手を離そうと指を掴むが、微塵も動かない。足をばたつかせて抵抗してみても体格差があるため届かない。


「ふん、やはり戦闘能力は無いか。あくまでお前の力は『増幅』と『干渉』だけ。0にいくらかけても0だから異世界人を利用した。そうだな?」


「それが、どうした……!?」


「戦えるのなら最初から貴様が降りてくればいいだけの話だ。それをしないという事は本体は大した戦闘力が無い。この推測をハッキリさせられて良かった」



 魔王は空いている片手に剣を出現させる。



 それは光り輝く両刃の剣、剣身から溢れる光が魔王の腕にも絡みつく。



 女神はその剣を見て抱いた感情は、『恐怖』だった。



「冥途の土産に教えてやろう。これは『神滅光剣』クラウソラス、お前の様な輩のみ切れる癖の強い剣だ」


 魔王は剣を掲げ、女神に対して振り下ろす態勢に入る。


「や、止めて……! 死んじゃう……! 本当に死んじゃう……!!」


 女神は首を絞められた状況でも必死に声を出して懇願する。


「もう、お前達には、関わらない……! 何も、危害を加えないから……。だから、助けて……!!」


「問答無用で侵略を進めた貴様にそんな事を言う資格は無い」



 クラウソラスを振り下ろし、女神の体を肩から腹にかけて両断した。



 斬られた半身と断面から内臓が床に落ち、魔王は返り血を浴びた。


 女神は目を大きく見開いたまま動かなくなり、『死生眼』で死亡を確認した。


「む……?」


 女神の死亡したの同時に、空間が崩壊を始めた。女神の力が消失した事で空間が維持できなくなったのだろう。


「(早々に帰りたいが、その前に仕上げをしなくてわな)」


 魔王は女神の死体を一ヶ所に集め、2歩下がった位置に立った。




 【永遠牢獄(メビウス)




 女神の死体は別の空間に吸収され、その場から消滅した。


「(これで奴の死体は永遠に我の異空間の果てへ消え去った。何かしらに利用されることは無い)」


 後ろにあった豪邸や庭が崩壊し、何も見えない空間の狭間へ消えて行く。


 魔王はさっき通った時空間の道へ戻り、元いた世界へと帰還する。




 こうして、異世界からの侵略は終わりを迎えたのだった。






お読みいただきありがとうございました。


次回で『異世界からの侵略者』編、完結となります!

お楽しみに。


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