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上位属性魔法『滅』


火炎を超えた先に辿り着く摂理



 魔法には属性が存在する。


 自然に存在する現象から『火』、『水』、『風』、『地』、『光』、『闇』、これら6つは『基本属性』と呼ばれている。


 そこから複合、派生した属性魔法を『応用属性』と総称されている。 


 また、これら派生した属性を極めて到達する属性を『上位属性』と称されている。


 『火』なら『炎』、『水』なら『氷』、『風』なら『雷』、『地』なら『鉄』、『光』なら『聖』、『闇』なら『冥』、というふうに言い換えられる。


 しかし2080年前、『火』と『炎』は同じ部類であり、『炎』は『上位属性』にはならないという論文が発表された。


 魔族領の魔導師達はこれを認めなかったが、真の『火の上位属性』が披露されたことにより、認めざるを得なかった。


 この論文を発表した者こそが、現在十二魔将に在籍するアギパンだった。当時16歳である。



 ・・・・・・


 

 ザバファール大陸 カルシアモ島


 巨大なクレーターが島の中央にあるのが特徴的な島で、その形から別名『鍋島』とも呼ばれている。


 そのクレーターの真ん中に4人の異世界人が転移していた。


 そして、それを上空から見下ろす者が1名。アギパンだ。


 アギパンは【浮遊】で滞空している。その手には自分の身丈より大きい杖を持っていた。


「貴様らは何もしていなくても悪なのじゃ。せめてもの慈悲として、苦しまずに死ぬがよい」


 アギパンは地上にいる4人に杖を向ける。



 【全てを禁ずる領域】



 島全体に淡い光が溢れ、全てを覆っていく。



 この領域に入った者は、例外なく魔法、魔術が使えなくなる絶対結界だ。


 正確には、体内外の魔力の放出と操作を阻害し、発動条件を満たしても発動しない状況を結界として作っている。



 覆いつくしたのを視認し、杖の先端を自分の顔の前まで持ってくる。


「魔術回路解放。詠唱部分省略にて起動開始。出力制限80%」


 アギパンの全身に魔力が駆け巡り、回路の如く発光し浮かび上がってくる。


 その影響で周囲に風が起き始め、光が屈折し、風景が歪み始める。


「【それは焼却の果て、全てを灰にする黒き絶滅。我が原点、魔導の理を打ち破りし属性よ、今ここにその力を示せ】」


 

 ・・・・・・



 真の『火の上位属性』とは何か。



 アギパンは『対象の完全なる焼却』こそが火の上位属性だと語った。


 火の根本は高熱。ならば、その極致は超高熱による完全なる焼却だと言うのだ。


 実際、炎とは全く別の方法で物体を細胞レベルで焼却、炭化させ、これを証明して見せた。


 

 当時を知る魔王も、


「我にも無かった発想だ。歴史に名を残すべき偉業である」


 と称賛した。



 発表から1年。


 当時の魔導協会もようやくこれを認め、正式に『炎は火と同列であり、真の上位属性は別に存在する』と発表した。


 

 真の上位属性の名称の命名権は、本来魔導協会が付けるが、発表者のアギパンに譲渡された。



 そして命名された属性名は、



 ・・・・・・



 『滅』属性魔法【黒滅】



 詠唱を終え、放たれた一撃は黒い球状の超高熱だった。


 異世界人達を一瞬で飲み込み、全てを灰まで残さない。まさに滅するを体現した一撃だ。


 

 あれから2080年の研鑽を重ね、アギパンは光をも焼却する事に成功した。そのため、滅属性魔法は基本的に黒色であり、周囲に炎の赤を少し纏っているのが基準となった。

 

 ただ、この魔法には難点がある。



 放った直後にアギパンは周囲に氷属性の魔法を展開し、【黒滅】を抑え込む。


 魔力は十分残っているが、何重にも重ねないと周囲に甚大な被害をもたらすため、時間との勝負になるのだ。


 険しい顔で無詠唱の氷魔法の結界を連発する。


「ぬ、ぐう……」


 漏れの無いよう正確かつ的確に連発する神経を使う為、苦しい声を漏らす。だが、決して失敗する事は無かった。



 発動から6分。ようやく【黒滅】が消滅し、結界を解除した。


 アギパンは消し飛ばした場所へ降り立ち、被害状況をその眼で確認する。


「まあ、上々かのお」


 

 残っていたのは黒く染まったクレーターだけだった。


 そこにいたであろう異世界人は塵も残らず消し飛ばされ、死体の欠片も見つからない。


 念の為、周囲に逃げていないか【索敵】で確認するが、転移した痕跡も猛スピードで逃げた様な事も無く、完全に仕留めたのを確信するだけで済んだ。

 


 満足げに安堵の息をし、再び空中に【浮遊】する。


「(そろそろ生徒一斉起床の時間じゃ。とっとと帰るかのお)」


「お疲れ様でした」


 いきなり後ろから声をかけられ、咄嗟に身構えた。そこにいたのは、


「……何じゃ、アインハルトか」


 グラマラス秘書のアインハルトだった。


「おはようございます学園長。朝から大変でしたね」


「あの時と比べればどうという事は無い。さっさと帰るぞ」


「分かりました。……ですがその前に」


 アインハルトは胸の谷間から杖を取り出し、何も無い場所を差した。



 【ディメンジョンシフト】



 一言唱えると、景色の一部がずれた。



 写真を切ってスライドさせたようにずれた場所から、赤い液体がポタポタと垂れ始める。その量は時間経過と共に増え、滝の様に流れ落ちた。数分して勢いは止まり、景色のズレも無くなった。


「時空間系スキルでしょう。魔導系感知に引っ掛からないタイプでしたが、私には隠せません」


 アギパンはその様子を眉間にシワを寄せて見ていた。


「……まだまだ研究が足りんのお」


「そろそろ魔導以外も研究したら? ()()()()()



 このアインハルトという女性、こう見えて歳は2097歳。アギパンより1つ上だ。


 そして、時空間研究における第一人者でもあるのだ。魔術魔法の分別はともかく、誰よりも長けているのは間違いない。スキルも時空間操作系を持っており、同じ系統の相手でも負けない使い手でもある。


 立場上学園内では敬語なのだが、2人きりの時は良き友人として普通に会話している。



 アギパンは渋い顔をしながらアインハルトに背を向けた。


「スキルは好かん。全て魔導で解明してみせる」


「そう言って今回も取り逃がしてるじゃない。もっと視野を広げてよ」


「………………」


「だんまりを決め込まないで!」


 アギパンとアインハルトは口論しながら【浮遊】で学園まで戻るのだった。



お読みいただきありがとうございました。


次回は■■■の登場です。

お楽しみに。


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