目の前の景色は本物ですか? Ⅱ
性の思い出、過去の幻、快楽の火蓋は開けられた。
「……ん?」
サンディが目を覚ますと、そこは見覚えのある場所だった。
「ここは……?」
「サンディ、もう起きなさい。朝の7時半よ」
彼女がいるのは、転移する前にいた世界の自分の部屋だ。
そして今、自分はベッドから起きた所だった。下の階から母親が呼んでいる。
「(何だか忘れてる事がある気がするけど、何だったかな?)」
夢の内容を思い出せず少し悶々とする。
「(まあ思い出せないならそれでもいいか)」
ベッドから起きて、下の階に降りた。そこには父に母、そしてペットの犬『マット』がいた。
「やあサンディおはよう」
「おはようダディ。マットもおはよう」
「おはようサンディ、ほら、早く朝食を食べて。遅刻するわよ」
「あれ? 今日って何かあったっけ?」
「何を言ってるのサンディ。あなた今日デートがあるって言ってカレンダーに書いてたじゃない」
「え?」
カレンダーを見ると、確かに自分の字でデートだと書いてあった。
カレンダーを確認し、時計を見る。約束の時間まではまだ余裕があるが、のんびりしている程でもない。
「うわそうだった?! 明日だと思って油断してた!!」
「なら早くしなさい。私もダディと一緒にお買い物に行くから、その途中まで送ってあげるわ」
「分かった!!」
朝食を急いで食べて、すぐに着替えに行く。
「どれにしようかな、うーん……、これにしよう!」
お気に入りのジーパンをメインにコーディネートを決め、バックに必要な物を詰めていく。
「ああもう! 昨日用意しておけばよかった!」
慌てて階段を降り、既に用意を済ませた父親と母親が待っていた。
「お待たせ!!」
「準備はいいな? それじゃあ行こう」
マットが一吠えしてサンディ達にすり寄ってくる。
「それじゃあマット。行ってくるね」
顔の横から撫でて、落ち着かせた後家を出た。大型の乗用車に乗り、家から発進する。
マットは窓越しから3人を見送った。
「それじゃあ行ってくるねマット!!」
サンディは車から顔を出してマットに手を振った。
・・・・・・
真車 茜は学校を終えて、帰宅している最中だった。
いつもの商店街、いつもの野良猫、いつもの帰り道、いつもの光景を目にしながら歩いていく。
しばらくして、自宅である2階建てアパートに帰ってきた。
「……帰って来ても誰もいねえんだよな」
茜の両親はロクな人間ではなかった。
父は母の妊娠を知ったと同時に蒸発、その上借金を押し付けた。
母は昔から男と遊んでばかり。水商売で体を売って日銭を稼いでいる。最近は借金と子育てから解放されたせいか、男としけこんで1週間帰って来ないのは珍しくない。
そんな家庭環境で育ったものだから、周囲から良くは思われなかった。それなら悪く生きようと吹っ切れ、今ではレディースの一員として夜の街を走っている。
ただ、学校だけは卒業しとけと言われているので、登校出席だけはしている。
自宅である部屋の鍵を開け、電気を付ける。部屋には酒瓶やら脱いだ物があっちこっちに散乱している。
茜は特攻服に着替えて、早々に自宅から出ようとする。
「あれ? 華音ちゃんじゃないの?」
部屋に入って来たのは、母と関係を持っている男の一人だった。流行のファッションに身を固め、サングラスをしている。イケメンなので印象は良い。
「母さんならまだ帰って来てねえよ」
「そう? じゃあ茜ちゃん、俺とデートしてよ」
「あん? 見て分かんねえのか? これから集会だ」
「嘘言っちゃって。ここらへんのレディースは今日集会ないでしょ」
「……何で知ってんだよ」
「俺こう見えても暴走族の元総長ですから。ここらへんの連中とは顔見知りなんだ」
「…………遠回しに脅してんのか?」
「あ、違う違う! そういうつもりじゃないんだよ! 気悪くしちゃったらごめんね」
謝る仕草をして謝罪する。
「まあいいっすよ。で、何でデートなんすか?」
「良い質問だね。実はパーティーに招待されたんだけど、ペアじゃないとダメなんだ。だから華音ちゃんにお願いしようよ思ったんだ」
「それで私を連れて行こうと」
「そうそう! 悪い様にはしないから、ね?」
少し悩んで、イケメンと一緒に出掛けられる事も滅多にないだろうと考える。
「いいぜ、着替えるからちょっと待ってな」
「ありがとう! じゃあこれに着替えてよ!」
男は持っていた紙袋を渡す。中を見ると、凄い際どい真っ赤なドレスだった。
「……変態」
「否定はしない」
茜はそれに着替えて、男の車に乗り込む。
そして、ネオンが光り輝く街へと繰り出した。
・・・・・・
サンディは筋骨隆々の黒人彼氏『マテオ』と公園デートを楽しんでいた。
時間は夕方、人は閑散とし、残っているのは2人だけだった。
「今日もデートしてくれてありがとう。マテオ」
「いいんだよサンディ。俺も楽しかった」
2人は腕を組んで公園を歩き、帰りの途についていた。しかし、マテオが道を急に変えた。
「どうしたのマテオ? こっちは……」
「サンディ、俺は今日覚悟を決めたんだ」
少し治安の悪い地区に入る。両側の建物にはいかがわしいお店の看板が目立つ。
「サンディ、ただの恋人から、男女としての恋人になってくれ」
真剣な眼差しでサンディを見つめ、ある建物の前に止まった。
いわゆる、ラブホテルというところだ。
「マテオ……」
サンディも今年で21歳。そういった経験は一切無いが、興味が無いわけではない。
「ダメかな?」
しばらく間が開いてから、
「……いいよ、行きましょう」
「!! ああ!!」
2人はホテルへ入り、男女としての一線を越える。
・・・・・・
茜はダンスパーティーで一緒に踊った後、車に乗って夜の街を走っていた。
「ノリノリだったね」
「何も嫌いとは言ってないだろ」
「楽しんでもらえて何よりだよ。……そろそろ着くよ」
到着したのは、裏道の小さな駐車場だった。
「? おい、ここ家でも何でもないだろ」
言い切る前に、唇を奪われる。
ゆっくりと唇を離し、見つめあう。
「……抵抗、しないんだ」
「………………」
「続けるよ」
男は座席を倒し、茜のドレスを脱がしていく。口づけをしながら徐々に絡んでいく。
「いいの? 俺みたいのにいいようにされて」
「……こうなる事、分かって付いて来たんだよ。察しろ」
男は微笑んで茜を脱がし、自身も脱いでいく。
車を激しく揺らし、男女の営みを過ごす。
・・・・・・
「何、これ」
その2人の情事を、ショウコは画面越しで見ていた。
ショウコはホラーゲームに出てくる様なボロボロの監視室にいた。一人用のソファに座り、画面をまじまじと見つめている。
「良い光景でしょう♥」
その隣には、リリアーナがいた。
「あなたにも味合わせたかったのだけど、まさか思い出を『否定』で消しちゃうなんて思わなかったわ♥」
ショウコの体を片方の手で嘗め回す様にまさぐり、もう片方の手で顎を沿うように指先でなぞる。
「これはそんなあなたへのご褒美♥ ここから先は未知の領域よ♥」
顔のすぐ横で囁くように語りかけ、耳に吐息をかける。
「こ、の……!」
ショウコは抵抗しようと『否定』を使おうとするが、リリアーナの姿が見えず対象に取れない。
「さあ、快楽の底へ招待するわ♥」
リリアーナが指を鳴らすと、ショウコの目の前にあった光景が液体の様に溶けだした。
溶けた光景がショウコを飲み込み、ソファがバナナボートへ姿を変え、時計の大海原へ放り投げられる。バナナボートは泣きながら微笑みの穴にショウコを連れて行く。
「堕ちる所まで堕ちなさい♥」
【夢幻・無限快楽事変】
ここから先、ショウコとして自我を保てるかが試される。
お読みいただきありがとうございました。
次回、リリアーナ戦、決着です。
お楽しみに。
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