誤算
計算違い
エネルギー炉から現れた魔王の形をしたデウス・エクス・マキナのエネルギー体は、手にエネルギーで作った剣を握り、魔王達に襲い掛かる。
全長10mもある巨体から繰り出すとは思えない速さで迫り、剣を振り降ろす。
魔王もそれに合わせて剣を振る。
「『一振千斬』」
魔王の千にも及ぶ攻撃が放たれる。これで相殺と反撃が同時に行われる。
しかし、
『一振千斬』
デウス・エクス・マキナも『一振千斬』を放ったのだ。
互いの攻撃がぶつかり合い、相殺だけで終わる。
「まさか、魔王様の技をコピーした……?!」
サクラは驚きを隠せなかった。しかし魔王は表情を一つ変えずにいる。
「そんなものは見えている」
直後、エネルギーでできたデウス・エクス・マキナの体が両断された。
魔王は『予知眼・絶対』で攻撃を相殺されるのを確定させていた。確定させた上で、『隠蔽』のスキルを使い、デウス・エクス・マキナへの攻撃を直撃させていたのだ。
怯んだ隙を魔王が見逃すはずがなく、更に畳みかける。
【破滅の紫焔】
眩くも荒々しい紫の光が斬撃と共に放たれ、一撃でエネルギー体を木端微塵に粉砕する。
エネルギー体は霧散し、跡形もなく消え去った。
魔王は剣を持ったまま、エネルギー炉を見下ろす。
「……だろうな」
エネルギー炉から、新たなエネルギー体が現れた。
今度は両手に剣を持つ、二刀流だ。さらに、さっきのぼんやりとした造形が魔王に近付いていた。
「結局はエネルギーの虚像、本体はエネルギー炉の中心にいるからな。エネルギーが尽きるまで出し続けるだろう」
再びエネルギー体が魔王に向かって襲い掛かる。二本の剣を振りかぶり、魔王へ迫りくる。
魔王には『予知眼・絶対』で二手三手先まで見えている。このままいけば学習を続けて、倒すのに何時間もかかってしまうのが分かっている。そうすると、七つの冠達に余計な負担をかけてしまう。それは魔王が望む展開ではない。
「……もう少し遊んでいたかったが、致し方あるまい」
溜め息をついて、剣を下げる。目の前にエネルギー体の剣が迫っているにも関わらず、防御も反撃も止めた。
「やれ、サクラ」
短い指示を出した瞬間、エネルギー体の体が縦に両断された。
両断したのはサクラだった。
魔王とエネルギー体の間に入り、『桜花輝嵐』ですかさず切り伏せたのだ。
エネルギー体はすぐに身体を元に戻そうと、両断された身体同士を引き付ける。
「させません」
【桜花剣舞・八重ノ爆炎】
刀を切り上げ、第二撃を叩き込む。
刀から花弁が舞い上がり、エネルギー体に接触したのと同時に、爆発を起こし、跡形もなく吹き飛ばした。
サクラは刀を構え直し、魔王の方を見る。
「気はお済になりましたか?」
「ああ、これ以上やっても面倒なだけだからな」
「そうですか。でしたら」
「早々に片を付けるぞ。後もう少しで到達できる」
「お供致します」
魔王とサクラは超高温のエネルギー炉へ向かって飛び込んでいく。エネルギー体が再び姿を現し、魔王達に襲い掛かる。1体だけではなく、2体出てきて、それぞれに襲撃する。
「どけ」「どきなさい」
魔王とサクラは一瞬でエネルギー体を切り刻み、突撃を止めることはなかった。
・・・・・・
『速度増加確認。162%上昇』
『威力増加確認。221%上昇』
『内部エネルギー上昇確認。300%上昇』
『エネルギーアバター再設計。エネルギー抽出開始』
『……対象、停止せず。停止せず。エネルギー炉まで1506m』
『対象の限界エネルギー値測定不能』
『超高温環境での対象の行動鈍化』『確認されず』
『迎撃システムの追加を提案』『内部への損害を考慮し、否認』
『エネルギーアバター消滅』
『エネルギーアバター再設計』
『設計完了まで62秒』『敵性対象接触まで40秒』
『接触確認』『中枢へ進行中』
『敵性対象エネルギー値。推測値を79005倍超過』
『計測不能』『推測不能』
『理解不能』『理解不能』
・・・・・・
魔王とサクラはエネルギー炉という殻へ突入し、10数㎞もある層を潜行していた。
魔王の【防御結界】で周囲の超高温から身を護って突き進む。
「この先に今回の元凶が?」
「そうだ。しかしあんな姿だとは思わなかったがな」
「魔王様はもう既に千里眼で見えているのですか?」
「ああ、エネルギー炉に着いた時点でな」
そう話している内に、目の前に金属製の膜に突き当たった。
「この先にいる。行くぞ」
魔王は膜を破り、中へと侵入する。
そこに、デウス・エクス・マキナの『本体』がいた。
お読みいただきありがとうございました。
次回は『機械仕掛けの中で』
お楽しみに。
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