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八天開眼


魔王はまだ、本気を出していない



 デウス・エクス・マキナの両手によって魔王が潰された。


 

 七つの冠全員がそれを目撃していた。


 デウス・エクス・マキナ自身も倒したと確信を持っていた。


『…………』


 だが、潰した箇所からセンサーの反応が無い。


 潰せていたのなら、センサーが潰した物質の有無が報告されるはず。なのにそれが無い。破壊されていれば、損傷エラーが出る。それも出ていない。


 デウス・エクス・マキナは、手を合わせたまま厚さ1mmの小型兵器を中に出動させる。魔王を潰したと思われる箇所に向かわせ、各種センサーで状況を確認する。


 結果、中には誰もいなかった。


 デウス・エクス・マキナは一瞬で別の場所へ移動する【瞬間移動】と異空間へ移動する【時空移動】の可能性を考慮して周囲1000㎞の状況を確認する。


 しかしそういった痕跡は見つからない。


 様々な可能性を模索するが、どれにも当てはまらず、時間を費やしてしまう。



「我がいないことが不可思議か? 奇怪な怪物よ」



 突然、魔王の声が聞こえた。


 聞こえたというよりも、響いたという表現が的確だろう。


 デウス・エクス・マキナは音源を探るが、どこにもそれらしい反応が見つからない。


「どこを見ている。我はここだぞ」


 声が響いた直後、デウス・エクス・マキナを護る時空の壁に全体にヒビが入った。一ヶ所だけでは留まらず、複数個所に一斉に発生した。何かの攻撃によって破損したのだ。


 人型兵器達が破損した箇所に急行するが、破損以外の異常は見つからず、魔王の姿は無い。


「どうした? それだけの図体で何もできないか?」


 魔王の声は響いている。しかし確認することが全くできない。


 デウス・エクス・マキナの思考回路にも混乱が起き始める。姿形は確認できないのに、音だけ確認できるという現象は過去に観測したことが無かった。


 どんなに距離が離れていようと、いくら透明になろうと、別空間に逃げようと、今まで観測できなかったことは無い。あらゆる手段を尽くして特定してみせた。今も1万近くの手段で探している。


 それでも魔王は見つからない。


 時間が経過していくほど、時空の壁がヒビだらけになっていく。加えて、先に取り付いてきたセラフィム達が内部に侵入しようと攻撃してくるのが鬱陶しい。


 デウス・エクス・マキナは演算速度を上げてより細かく探していく。100%のパフォーマンスができずとも、見つけ出すことは不可能ではないのだから。


「遅いわ」


 破壊音と共に、時空の壁が全壊した。


 デウス・エクス・マキナの本体がサクラ達にも丸出しになり、攻撃が届く状態になった。


 そして、デウス・エクス・マキナの前に、魔王が現れる。


 半透明から徐々に実体がはっきりとし、魔王の姿が浮かび出る。


 デウス・エクス・マキナは本物の魔王かどうか再確認する。確かにさっきまでいた魔王だ。


『――――――』

「どうして見つからなかったのか不思議か? しかし説明する義理は無い」


 魔王はアーティラを振り上げ、デウス・エクス・マキナの頭目掛けて振り下ろした。


 斬撃が飛び、デウス・エクス・マキナの頭に直撃する。切り裂く轟音が響き渡り、多少ながら損傷させる。


 だが、どの攻撃も大したダメージ量になっていない。何せ相手が惑星サイズなのだから、たかだか5mの魔王の放つ数百mの攻撃なぞ軽い切り傷にしか感じていないだろう。


 再び魔王の周りに人型兵器達が群がり始め、攻撃の準備に入る。魔王は周囲を見渡し、このままでは埒が明かないと結論を出す。


(……久し振りに、眼を解放するか)


 魔王は空いている片方の手を顔に当て、八つの眼の中にあった魔法陣を引きはがす。



『八天眼・上位開放』



 魔王の眼全てが赤く光、更なる力を解放する。


 眼に血と魔力が走り、ギョロギョロと動き、紫と赤の炎が宿る。


 魔王からあふれ出る体内魔力が周囲に溢れ、禍々しいオーラが形成される。



 さっきまでの魔王の魔力が数十倍以上に跳ね上がったのを見たデウス・エクス・マキナは、再計算を始める。


『魔王のエネルギー値上昇』

『現在のエネルギー値から放出される攻撃値を再計算』

『想定損傷率1609%上昇』

『秒間自己修復より500%以上の損傷を予測』

『攻撃阻止を提言』『承認』


 ほんの数秒で行われた演算ですぐに行動を起こす。


 人型、大型、船型、鳥型、とにかく片っ端から兵器を集結させ、魔王へ向かわせる。


 魔王はアーティラを横に振りかざし、背中まで回す程の大きな構えを取る。力を溜め、剣を薙ぎ払う一歩手前まで剣を振りかぶる。


 そして、開放した八天眼を見開いた。



『予知眼・絶対』


『千里眼・投影』


『生死眼・与奪』



 『予知眼』の上位魔眼『予知眼・絶対』は、目の前で起きる予知を確定させる是非を決めることができる。


 これから来る兵器達の攻撃は全て予知され、全て当たらない未来が確定した。



 『千里眼』の上位魔眼『千里眼・投影』は、あらゆる物を見通し、その眼に映すことができる。


 目の前の兵器達のあらゆる箇所を見通し、全容を見た。



 『生死眼』の上位魔眼『生死眼・与奪』は、あらゆる物質の生と死が起こる『発露点』を見つけ、操作することができるようになる。


 兵器達の確実に死に至る発露点を見つけ出した。



 3つの魔眼が合わさり、目の前全ての敵を一撃かつ確実破壊し尽くすことができる『線』を見出した。



 剣に大量の魔力を注ぎ込み、虹色の輝きを間欠泉の様に放出させる。


 放出した光を目の前に散りばめるかのように、魔王は斬撃を繰り出した。




 『栄光の虹の道標(ビフロストグローリー)』!!!!!



 

 斬撃から放たれた一撃は虹色の光と共に、虹色の平原を宇宙空間に作りだした。



 虹色の平原に包まれた兵器達には、細い光の線が刺さる。刺さった箇所は『千里眼・投影』で中身を全て見えた箇所を、『生死眼・与奪』で確実に破壊できる発露点となっている箇所だ。


 結果、兵器達は一斉に崩壊し、解体された。それが彼らにとっての死なのだ。


 

 虹色の平原はデウス・エクス・マキナの胸部にも届き、広大な胸部を徐々に解体し、剥がしていく。


 自己修復しようと足掻くデウス・エクス・マキナだったが、システムそのものまで解体が始まっており、修復不可能だった。


『修復不能』


『緊急措置としてNo9008915からNo9810078をパージ』『承認』


 デウス・エクス・マキナは修復不可能な部位を切り離し、虹色の平原からの被害を食い止めた。さっきとは比にならない損害を負い、急いで修復用のドローンを出動させ、修復作業に入る。


 

 魔王はその隙を見逃さない。


 虹色の平原を駆け、損傷させた胸部に飛び込む。


 

『鑑定眼・看破』


『解析眼・解体』



 『鑑定眼・看破』でデウス・エクス・マキナの名称、能力だけではなく、思考、行動傾向までも見抜き、『解析眼・解体』で構造、構成に加え、その構造と構成の弱点と長所も把握した。


(やはり単純明快な思想だ。所詮は命令を刻まれたただのゴーレムと差異の無い存在だったか)


 魔王は『一振千斬』を連続で放ち、デウス・エクス・マキナの『本体』へ向かう。


(この巨大な身体は『側』。本体は中枢にいる。出てこないならばこちらから出向いてやろう)


 中を突き進む魔王の後ろから、サクラが追いついてきた。


「ご無事で」

「ああ、この通りだ」

「『存在希釈』をお使いになられるとは、本気なのですね」



 『存在希釈』


 存在そのものを薄くし、認識できなくする『技術』だ。


 スキルとも魔導とも違う能力であり、3000年生き、鍛錬を積んできた魔王だからこそできる技である。


 使い過ぎると、他者の記憶からも消えていく可能性があるため、多様はしない。


 七つの冠でもアズラエルとサクラしかできない。



 魔王は不敵な笑みを浮かべ


「力任せでも良いかとも思ったが、久し振りに力を解放するのもまた一興だと思ってな。その方が面白かろう?」

「……戦闘を楽しむ悪い癖が出ておりますよ」


 サクラは半分呆れながら魔王に指摘する。


 

 1時間かけて、デウス・エクス・マキナの中枢へと到着する。


 中には直径100㎞以上ある巨大な空間があり、中心には球体状のエネルギー炉が存在していた。


 空間はエネルギー炉から出る超高温によって凄まじい熱気で溢れており、【結界】が無ければ焼けてしまうのは必至だろう。


 魔王とサクラはそれでも構わず中枢へと向かう。


「……来るか」


 魔王の眼が次に来る敵を捕らえる。



 エネルギー炉から不定形の塊が這い出て来る。


 それは徐々に形を取り、ある形へ変貌する。



「そう来ましたか」


 サクラは感心して変貌したモノを見る。


「ほう。少しは学習したようだな」


 魔王も顎に手を当て、それを見降ろす。




 デウス・エクス・マキナが模ったモノ。


 それは、魔王自身だった。







お読みいただきありがとうございました。


次回は『誤算』

お楽しみに。


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