無双するは八つの輝き
例え魔が使えずとも、どんな大群が来ようとも
魔王の掛け声に合わせ、七つの冠達もそれぞれの武器を取る。
目の前を埋め尽くす敵の人型兵器の大軍団に向かってしんがりを務めたのは、サクラだ。
「抜刀『桜花輝嵐』」
【収納空間】から一本の刀を抜く。
剣身が淡い桜色をし、波紋の模様が浮き出ている美しい刀だ。
「いざ、参る」
サクラは飛行で加速し、刀を下段に構える。敵の兵器達もサクラに向かって進路を変更する。先制して兵器達がビーム銃を撃って来るが、サクラは3次元的な動きで回避する。
そして、サクラの攻撃範囲内に入り、兵器に向かって刀逆袈裟で斬り上げる。
兵器は斬撃で真っ二つになり、爆散する。
サクラは爆風を正面から突破し、次々と一撃で斬り伏せていく。それも目にも止まらぬ速さでだ。
(魔力を使えないのは痛いですが、これで斬れるなら問題無さそうですね)
心の中だけで確かめ、攻撃を続行する。魔王達の進路を切り開き、行進を止めない。
「なら我も久し振りに本気を出すかのお」
アズラエルの両手に【装備変更】で手甲が装備される。
アズラエルの青い肌よりも濃い青色を基調とし、金縁のデザインが施された手甲だ。見るからに頑丈そうで、少しゴツゴツとした形になっている。
アズラエルは拳を大きく振りかぶり、敵の兵器に向かって突撃する。
「ふん!!!」
気合の入った一声と共に兵器一体に叩き込む。
だが、勢いは止まらず、進路方向にいる兵器達を巻き込み、大きな塊となっていった。
「砕け、よ!!」
もう片方の手を叩き込み、純粋な威力で兵器達を粉砕する。粉砕した余波で周辺に破片が弾丸の様に撒き散らされ、他の兵器達にも直撃し破損させていく。
アズラエルは本来肉弾戦を得意とする格闘者だ。
しかし、魔王とディアーロという上位互換が出現しため、あまり使用しなくなった。
今回は魔法魔術の放出が安定しない状況なので、致し方なく格闘を使用しているのだ。
アズラエルもまた、サクラに追い付く速さで次々と兵器を粉砕していく。
「どうしたどうした?!! この程度か!!」
久し振りに身体を動かせているせいか、満面の笑みで破壊を続ける。
魔王もその後を追い、周囲にいる敵を『一振千斬』で切り刻んで進む。その光景は、不規則に動く閃光が兵器達の間をすり抜けると同時に、兵器を破壊しているようだった。
一方、セラフィムとアモン、ディアーロは魔王達から離れ、魔力を吸収している船型兵器へ向かっていた。
「鬱陶しい。とっとと破壊するぞ」
セラフィムは悪態をつきながら一気に加速する。
「奇遇だな、私もだよ」
アモンもその後を追うように加速する。その後方にディアーロが黙って付いて来る。
セラフィム達に気付いた兵器達は周辺にいるメンツだけで編成を組み、船型への接近を阻む。
セラフィムは固有の異次元収納『次元収納』から一本の剣を取り出す。剣は何ヵ所も関節があり、蛇腹の様に曲がりくねる事ができるものだ。
蛇腹の剣をしなやかに、自由自在に動かした後、目にも止まらぬ速さで斬りかかる。
『熾天ノ焔』
四方八方縦横無尽に剣が伸び、荒ぶりながら数百m先の兵器達をも切り刻んで見せた。
エネルギータンクに引火したのか、全ての兵器が爆散する。攻撃範囲内の敵全てを倒したのち、剣は元の長さに戻った。
「所詮は浅慮しかできん鉄屑。的にしかならん」
そう言いつつ、後方やや上から襲い来る兵器を剣で切り刻んだ。
アモンはセラフィムが開けた大群の穴を抜け、船型に接触する。
船型の大きさは300m近くある大型兵器で、そこら中に設置された大型ビーム銃が付いている。両側に魔力を吸収する装置が取り付けられていた。
アモンは【収納空間】から二又の赤い槍を取り出す。全長3mある禍々しい槍だ。
その槍を思いっ切り振り上げ、船型に突き刺した。
「放出できないなら、直接流し込むまでだ」
【インフェルノ・バースト】!!!!!
槍を突き刺した場所を中心に、船型全体が膨れあがり、閃光を発した後に大爆発した。
眩い爆発の光からアモンは平然と飛び出し、他の船型へと向かう。だが、兵器達がアモンの行く手を阻んだ。
「ちっ……。無駄に多い」
舌打ちをして槍を構える。
直後、巨大な拳がアモンの目の前にいる敵を一掃した。
巨大な拳はそのまま真っ直ぐ飛んで行き、船型へと叩き込まれる。捻じりながら入った一撃で、船型は真っ二つになり、爆散する。
アモンは攻撃がした方向を見る。そこには突きを放った後の構えを取っているディアーロがいた。
「馴染むのに時間がかかった」
ディアーロは言い訳をして、すぐに迎撃に戻る。
(概念攻撃、魔力が無くても使えるのはやはり脅威だ。……後で策を練るか)
アモンは思考を巡らせながら、後方を見ずに敵の兵器達を連続突きで次々破壊した。
セラフィム、アモン、ディアーロが各個撃破に務めている中、シャイターンは魔王達を後方で応援していた。
「みんな~、頑張れ~」
シャイターンの周囲には、機能不全を起こして動けなくなった兵器達が浮いていた。
スキル『母なる威光』は無生物の戦意すらも喪失させているようだ。ただし、シャイターンの周囲20mまで弱体化している。
「呑気な女だ。まあそれしか能が無いから仕方なしか」
サザーランドがシャイターンの上に飛んで来る。
「今馬鹿にしましたかあ?」
「自覚があるなら打開策を探せ愚か者」
サザーランドは再び翼を羽ばたかせ、上へ飛んで行く。サザーランドを取り囲もうと、人型以外にも巨人型兵器達も集まり始める。その総数はサザーランドの巨体よりも大きくなる程だ。
「魔法攻撃が使えないから弱くなったという思い上がり、今ここで正してくれる!!」
サザーランドは羽を畳み、一直線に身体を伸ばして高速回転を始める。
宇宙空間で空気が無い筈なのに、何故かサザーランドの周囲に巨大な旋風が吹き荒れる。旋風に巻き込まれていくつかの兵器達が爆散する。
一気に高速回転が亜音速を超え、サザーランドは動く竜巻となって兵器達へ襲い掛かる。
『龍螺旋超突貫』!!!!!
サザーランドの回転攻撃に当たった敵は、その巨体から出るパワー、傷一つ付かない鱗に掠っただけで粉砕される。
ドリルの様に全身を回転させて突撃をし、当たる敵全てを木端微塵、粉砕、爆砕していく。
全長5000mの回転体当たりで数㎞範囲に及ぶ敵の大群、船型数機を巻き込んで破壊した。それでも空間の魔力濃度が上がらない。
「…………てっきり戻ると思ったのだがな」
サザーランドが少しガッカリしていた。
それを見ていた魔王は少し推理する。
(おそらく別の異空間に転送したのだろう。そうなると敵の本拠地でも条件は同じか)
敵を斬り倒しながら進み続ける魔王の視線の先に、ようやく目的地が見える。デウス・エクス・マキナがいる惑星だ。
「見えた。このまま乗り込むぞ!!」
魔王はサクラとアズラエルと並んで敵の大群を突破しつつ、左翼からアモン、セラフィム、ディアーロが、右翼からサザーランド、シャイターンが合流する。
八つの光が阻む敵全てを退けながら、惑星へと突入する。
お読みいただきありがとうございました。
次回は『デウス・エクス・マキナの星』
お楽しみに。
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