魔王の練兵場
翌日……。
結局昨日は森で野営することになりました。なにげに野営したの初めてかもしれない。
ただまぁ、周りがアルラウネとマンドレイクまみれの上、例のでかいトレントの足元で野営したんで、見張りも立てずに全員でぐっすり……。
リリィも絶対大丈夫って太鼓判押してたし……。
何で街に帰らず野営したかといえば、森から出たら多分入れないから。
ミーナさんいわく、魔王が討伐されると森の魔物の勢力図の変化があったりするため、新しい魔王が何なのか、等の調査が終わるまで立入禁止になるらしい。
とはいえ、だいたいその調査は乙級以上の魔物から逃げ切れる冒険者が行うため、帰ったら俺たちが調査に出されるだろう、とも。
まぁ、たしかに勢力図の変化は現在進行系で起きてるしなぁ……。
あの後また畑に種まきしたみたいだし……。朝起きたら双葉がいっぱい出てるあたりを見ると。
朝食の準備はみんなに任せて畑に水やりと、魔石食いながら魔力を流した結果、娘がまた大量に増えました。
何で父親認定されるんだろうなぁ……。
「今日は魔王のねぐらでも見に行くかのー?」
「魔王のねぐらですか?」
「前の魔王がねぐらにしていた洞窟ですね。冒険者ギルドとしても過去に何度か調査をしに人員を派遣したことがあるんですが、帰ってきた人が居ないんですよね」
「そんなところがあったんですか」
というか十トンダンプサイズのクマが入れる洞窟って相当でかいですよね。
深さがどの程度かしらないけど……。
「まぁ、クマじゃし、お宝の類は期待できんがのー。ひょっとしたらダンジョンかもしれんし」
「場所はわかっているので、行くんでしたらすぐにいけますよ?」
「行ってみましょうか」
場所はわかってる、ということで、ミーナさんに案内を頼んで歩くことしばし。
大体森の中心付近ということで、野営したところからそう離れているわけでもなく、魔物に遭遇することもなく30分ほど歩くと到着しました。
崖にぽっかりと暗い入り口を開けた穴。
何度も出入りしたのだろう、入り口は固く踏み固められてコンクリのようで、草も生えていない。
魔法で明かりを出して中に踏み込み、少し歩くと……。
「確定です。ダンジョンですね、これ」
唐突に周囲が明るくなり、目の前には草原が広がっていた。遠くの方に、魔物だろうか? 牛のような姿が見える。この草原の広さってどれぐらいあるんだろうなぁ……。
「人の手が入っておらんダンジョンか。王都からも近いし、騒ぎになるのぉ……」
「ダンジョンって初めて入ったかも……」
「俺もダンジョンに入るのって初めてだなぁ……」
「貴族の耳に入ったら横槍が入りますよ? 絶対面倒くさいことになります」
「この下の階層がどうなっとるか次第じゃが、資源の宝庫みたいなもんじゃからのぉ……」
「魔物はいくらでも湧きますからねぇ。多分1階層は魔王が餌場にしてたんでしょうね。
人が入ったことが無いわりに魔物の数が少ないです」
「んー……」
周囲を見回す俺達の横で、なにか考えるように首をかしげるリリィ。
「ミーナ、ミーナ」
「はい?」
━━━━━━━━
地響きを立てて牛の魔物の群れが走る。
魔物の視線の先に居るのは、大人のアルラウネだ。
付かず離れずといった距離を保ちながら走りまわり、マンドレイクとすれ違うと……。
「「ぎゃあああぁぁぁぁ!!」」
2人のマンドレイクが一斉に悲鳴を上げれば、牛の魔物が砂煙をあげながら地面に倒れ込み、1分ほど経つと消えていく。
その場に残るのは、ドロップ品らしき肉の塊がいくつかと、魔石。
この世界でもダンジョンの魔物って死ぬと消えるんだなぁ……。
「うん。上出来」
リリィが何を思いついたかといえば、アルラウネとマンドレイクにパーティ組ませてここでレベリングができないか? という。
ミーナさんに聞いたのは、パーティ結成の魔法が使えるかどうかだった。
まず俺たちがトレイン狩りの手本を見せ、それをアルラウネとマンドレイク達にやらせるということだったが、思い通りにことが進んでリリィは満足げだ。
あと、マンドレイクの悲鳴に付与されてる即死って、植物系モンスター相手には通らないらしくて、俺たちがやるよりも楽そうだ。
「練兵場じゃな」
「練兵場ですねぇ」
「ダンジョン名、魔王の練兵場ですか?」
「あぁ、なるほど」
「どんどん森の脅威度が跳ね上がっていきますね、これ……」
一組が上手くいったことで、次から次へとパーティを組ませ、どんどんダンジョンに投入されていくアルラウネ達。
ドロップ品はなぜか俺のところに持ってこられ、貢物かなにかのように目の前にてんこ盛りに盛られていく。
肉と牛乳と魔石かな? なお肉は竹の皮っぽいものに包まれ、牛乳は革袋に入ってドロップする。
「何で俺のところ?」
「大魔王だから?」
「いや、別にみんなで使っていいのに」
「んー、倒したときに消える前に直接吸えるからいらないって」
「あぁそう……」
どうしよう、この山盛りの肉……。
「お父様! 階段がありましたー!」
話している間にハイアルラウネの子が、パーティメンバーと一緒に嬉しそうにやってくる。こう、褒めて褒めてオーラ全開で。
「おー、よく頑張ったね」
とりあえずとばかりに頭を撫でるとすごく嬉しそうな顔。
うん、癒やされるなぁ。背景の土煙と悲鳴(攻撃)を気にしなければ。
「次の階層を見てきてもいいですかー?」
「いいけど、気をつけるんだよ?」
「はーい!」
「普通、ダンジョンの攻略ってこんな短時間で進まないハズなんですけどねぇ……」
「そりゃあ、こんな勢いで狩ればそうなるじゃろうよ。湧きがおいつかんのじゃろ。パーティは……20組ぐらいかの?」
「4人組が27組ですね。しかしこれ、人間は危なすぎて入れないですね。耳栓必須になりますし、下手をしたら魔物の群れに轢かれますし」
「あー……」
ごもっともです。
「リリィかサトルがいれば気は使ってくれるじゃろうがの」
「そうでなければ多分容赦なく轢かれるでしょうし、叫ばれるでしょうねぇ……」
「お父様ー! 宝箱見つけたー!」
と、やってくる2階層に行ったのとは別のアルラウネさん。
宝箱は罠があるから開けちゃだめ、と、事前にしっかり言い聞かせてある。
ただまぁ……、蔦を使って遠くから開ければ問題がないような気がせんでもないけど。
「アリアさんお願いできます?」
「おまかせください。ダンジョンの一階程度でしたらかんたんな罠でしょうし問題ありません」
「ワシの知っとるダンジョン攻略と違うのぉ……」
「私が知ってるやつでも無いですよ……」
そういって、ミーナさんとフローラさんは大きなため息をつくのだった。
今回も最後までお読みいただいてありがとうございます。
もしよければ評価、感想等いただけると嬉しいです。




