大魔王
「で、このトロールはどうすればいいんだ?」
「えっと……、適当に投げ込めば大丈夫」
「えぇ……」
そんな適当なもんでいいの……?
首をかしげながら、フローラさんと2人がかりでトロールの巨体を文字通り、双葉のたくさん生えている畑に投げ込む。
これ、農家の人が見たらすごい顔しそうだよなぁ……。
すると畑から、根がゆっくりと這い出てきて、次々にトロールの死体にまとわりつき、養分を吸っているのだろう、見る間にトロールがミイラのように干からび、さらには皮すらなくなり、骨までもが分解されて消えていく。
これ、うっかり畑に足を踏み入れたら生きて出られない奴では?
まぁ、雑に投げ込めばいいっていうのに納得。
「おとーさん。私にしたみたいに魔力、あげられる?」
「あー、できなくは無いけど、大丈夫? 俺食われない?」
「大丈夫」
大丈夫、と、大きく頷いたリリィを信じて畑の真ん中までいって、土に手をついてゆっくりと畑に魔力を流していく。
しかしこれどれぐらい流せばいいんだろう?
広い畑だしかなり多めに魔力を流してるので、あっという間にMPは枯渇し、最大値と他の数値もゴリゴリと減っていく。
HPが減り始める前に魔力を流すのをやめて、大きく深呼吸し、空間収納から魔力草を取り出して食べる。
「どうにも、最初に食べたときよりMP回復が鈍い感じがするんですよね」
「……、それ、器の方が広がったんじゃないですか?」
ミーナさんの言葉に首をかしげる。
つまりあれか、無理無理大量の魔力を取り込んだせいで、最大MPという風船が広がったまま戻らなくなったと。
「じゃあ、超過したMPが徐々に減って行ってたのって」
「器が広がったからじゃろうな。もう魔石でも食ったらどうじゃ? 案外回復効率いいかもしれんぞ……」
なるほど、空間収納から角うさぎの魔石を取り出して口に放り込み、かじる。なんか飴玉かじってる感覚だな。甘みもあってなかなかに美味い。
「って、ホントに食うんじゃない!? 死ぬか良くて魔物化じゃぞ!?」
「ちょ!? もう飲み込みましたけど!?」
冗談なら先に言って!?
ステータスに視線を向けると……。
━━━━━STATUS━━━━━━
名前 イチノセ サトル ★
称号:魔王討伐者 魔王のお父さん
LV:81
HP:154%/100%
MP:553%/100%
SP:132%/100%
LP:142%/100%
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「……。何の状態異常も出ませんよ? MPはすごい勢いで増えてますけど……。あと他の数字も軒並み100%を越えてますねぇ……」
特にこれといってこう……。体が熱い! とか、全身に激痛が! とかそういうことは一切無く。
ただただ色んなものが回復するだけだ。これだとガンガン畑に注いでも大丈夫そうだなぁ
「本当にお主のスキルはどうなっとるんじゃ……。しかし、そんなに回復効率がいいなら使わん手は無いのぉ……」
「今日採れた魔石って食っちゃってもいいですか?」
問いかけると、みんな頷いてくれたので、魔石をかじりながら畑にどんどん魔力を流し込む。
魔力以外も回復するのでそれ以外のものも大盤振る舞いで流し込み、減ってきたら魔石を食べる、という作業を繰り返す。
「あれ?」
ふと気づけば、目の前の双葉が大きく成長し、さらには蕾がついている。
いやいや……、いくらなんでも成長早すぎでしょ!? まだ1日も経ってないよ!?
心の中でツッコミを入れている間にも、蕾は大きく成長し、花が開くとその花の中央には、幼稚園児ぐらいの女の子が。
アルラウネだよなぁ……これ。
しかし、花びらスカートだしどういうふうに生えるのかとおもったら、ラフレシアみたいに地面に直接花が咲いて、下半身が土に埋まってる感じで出てくるのか……。
「おとうさまー」
おっふ……。また父親認定された!?
その子を皮切りに、俺に近い位置に植わっていた子が次々に土から這い出し、口々にお父様お父様と俺に群がる。
マンドレイクとアルラウネの比率は半々ぐらいかなぁ……。
「ハーレムじゃのー?」
「かわいい……」
「むしろ託児所ですかね」
「それより、あの子達、花の色が二色ということは、ハイアルラウネなんですけど……」
「このペースで増えると……。1週間もあれば王国を滅ぼせる戦力になるでしょうか?」
え、なにそれ怖い。
「仮に軍が戦った場合、マンドレイクがあれだけ居るということは、耳栓をつけての行動を強制されるので、まともな軍事行動は取れないでしょうから、酷いことになりますね」
あー、まぁそうだろうなぁ……。
畑からあらかた全員這い出してきたところで、ゴブリン狩りに行ったアルラウネ達が戻ってきた。
1人につき、2匹ほど蔦で縛り上げて生きたまま連行してきている。
その他に、オークがゴブリンが入っている蔦でできた網のような袋を担いでついてきている。
「モ○ゾー……?」
そのオークの頭には、どこぞのご当地キャラのような、緑色の物体がくっついている。
遠目に見ると緑色のアフロヘアーのオークにしかみえない。その緑色の物体に目がついていなければ、だけど。
悪魔のヤドリギってアレのことかぁ……。こええな……。
「しっかり食べて大きくなるんだよー。あ、魔石は残しておいてね」
リリィがそういうと、先程土から出てきたばかりのアルラウネやマンドレイク達がゴブリンに群がり、ゴブリンの悲痛な叫びがあたりに響き渡る。
わざわざ生きたままつれてきたのは多分あれだよなぁ……。レベル上げ。
その後も次々にゴブリンが連行されてきては、食われていく。
そして俺の前に置かれたでっかい葉っぱの上にてんこ盛りに盛られていくゴブリンの魔石。
ご丁寧にクリーンできれいに洗浄してある。
「リリィさんや、これって……」
「次の子を育てるときに要るからー」
やっぱり……。俺のご飯だったかぁ……。
「そういえば、俺の立場ってどうなるんでしょうねぇ……。魔王のリリィの父であり、ハイアルラウネ達の父でもあるって……」
「おとーさんはリリィより偉いよー?」
「……大魔王じゃな」
「ちょ」
『称号を獲得しました』
「え!?」
恐る恐るステータスへと視線を向ければ……。
そこには大魔王という字がきっちり追加されていた。
どうしてこうなった……。
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<<学生さんの会話の一幕>>
「魔王討伐かぁ……。あのおっさんじゃないの?」
「いや、魔王が継承されたってことは、魔物に狩られてるハズだ。しかし、次の魔王はどの区分なのかねぇ」
「区分って?」
「魔王には大雑把な系統で区分があってな。例えば今まで森に居たらしいのは、単体で完結してる孤高タイプ。単品でひたすら強いが、取り巻きが居ない」
「ボッチタイプか」
「おいやめろ。孤高タイプとは逆に多数の魔物を従えて社会性を持って居たりするいわゆる魔王タイプ。味方へのバフがあったりするが単品ではそこまで……っていうのも居るな。蟻とかが該当するか」
「ふむふむ……」
「最後に、環境タイプ。例えば砂漠のサンドワームとかの地形を味方にするタイプだな。この手の奴は特殊な地形に居ることが多いが」
「なるほど」
「あとは環境・孤高や環境・魔王の複合。なんていうのも居るそうだ」
「さすがに孤高・魔王は居ないか」
「ボッチなのに配下引き連れてるってどういうことだよ」
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