兵士は畑で採れるモノ
「アルラウネファイター、アルラウネソーサレス、アルラウネプリーステス……」
「え、アルラウネってそんないっぱい種類居るんですか!?」
「鑑定を使っても『アルラウネ』としか表示されないんですけどね。
スカートの色で得意分野をある程度見分けられますので、それに冒険者ギルドが名前をふってる感じですね。
例えば、青い子はファイター、黄色い子はソーサレス、オレンジの子はプリーステス。それぞれ、中~近距離格闘、攻撃魔法、補助魔法と得意分野が違います」
「しかし、こんなに魔物を集めてどうするつもりじゃ?」
「舐められないように支配基盤を固めてしまうのは良いことです。アルラウネが100集まっているといえば普通に驚異ですし。
ひとまず討伐されないために人数を集めるのは良いことかと。先程のメッセージにもあったとおり、討伐すればレベルキャップが開放される上、名誉にお金に地位までついてきますから、普通に狙われますし」
とはアリアさんの言葉。まぁ、そこらの冒険者にそう簡単にリリィがやられるとは思えないけど。
「ここに畑を作るよー!」
と、マイペースな言葉とともに、土魔法で地面が耕され、20メートル四方ほどの畑が作られる。
そこにアルラウネとマンドレイクがやってきて、近い個体と頭の花同士を触れ合わせる。
すると不思議なもので、見る間に花が散り、実を結ぶ。
……アルラウネとかマンドレイクってそういう増え方するんだ……。
その実をそれぞれが土を掘り返して植えていく。
「肥料はゴブリンとトロールを取りに行くよ」
随分野性味あふれる肥料だなぁ……。堆肥化とかしなくていいんだろうか。いいんだろうなぁ、魔物だもの。
「オークはどうするの?」
「美味しいから残しとこうかなーって。管理出来ると思うしー」
首を傾げるヘレンに指を口元に持っていきながら答えるリリィ。つまりあれか。オークを家畜化するということか……。
リリィ、恐ろしい子……。
「オークの管理なんてどうするんですか?」
「これを使えば出来ると思うー。さっきトレントからもらったの」
そういってリリィが差し出したのはなにかの種。
「鑑定……。悪魔のヤドリギの種子……!? またこんな恐ろしいモノをしれっと差し出さないでください……」
「悪魔のヤドリギって?」
「寄生植物じゃの……。まぁ、リリィの支配下にあるなら大丈夫じゃろ」
冬虫夏草的なあれかしら……。脳みそに寄生して乗っ取っちゃう系の奴なのかなぁ、やっぱり。
「何が怖いって、寄生されたら最後、耐性関係なしに操られますし、排除しても廃人確定なんですよね……」
あぁ、やっぱり物理的に脳みそに根を張って操るタイプなのね……。
「ともあれ……、トロールを狩りに行きましょうか、魔法銃の試射もしたいし……」
「索敵はおまかせください」
ひとまずトロールを狩ろうということになり、魔王の驚異がなくなった森の深層を歩くことしばし。
あ、魔王だったクマはちゃんと空間収納に片付けましたよ。毛皮やらなんやら素材になるだろうってことで。
何ていうかもう、特級冒険者になったら、空間収納隠す必要無い気がしてきたなぁ。
とりとめもないことを考えている間に、アリアさんが早速トロール2体を発見する。
「そういえば、アリアさんってトロールを倒せます? あと、フローラさんが戦ってる所も見てみたいです」
「はい。あの程度ならすぐにでも」
「じゃ、ワシは右のをいただくかの」
実はここまで、フローラさんが戦っている所というのは見たことが無い。
「行きます」
そういって無防備にアリアさんがトロールの目の前まで歩いていく。
当然、トロールは手に持った丸太を振り下ろすわけだが、アリアさんはひょいと小さくバックステップをするようにその振り下ろしを避け、次の瞬間にはその場からかき消えて、トロールの背後に移動していた。
それから一瞬遅れて、トロールの首から血が吹き出し、その場に力なく崩れ落ちる。
え、今何したの!? 動きが全然見えなかったんだけど……。一応レベル80越えたんですが!?
「次はワシじゃの」
フローラさんも、これまた軽い調子で言って駆け足程度の速さで走り出し、トロールの手前で一気に加速、跳躍してトロールの頭に体のひねりの効いた蹴りを叩き込み、それをモロに食らったトロールは吹き飛ばされて木に叩きつけられ、動かなくなる。
フローラさん、スカートでそれやったら下着丸見えっすよ……。しかしフローラさんは黒かぁ……。
「首を折ったからもう動けん」
「次も近いですね、あっちにも2匹」
トロールを空間収納に放り込み、アリアさんの指差す方向へ。
今度はミーナさんと俺の番。
「先にやりますね?」
アリアさんが言う通り、2匹のトロールと遭遇すれば、ミーナさんが駆け出し、腹に槍をぶっ刺したかと思えば、槍ごとトロールの巨体を宙へ放り投げ、
軽く後ろに飛んで腰を落とし、居合いのような構えを取ったかと思えば、瞬間的にその場からかき消え、落ちてきたトロールとすれ違うように、トロールの向こう側に剣を振り抜いた姿勢で現れる。
その直後に地面に叩きつけられたトロールは真っ二つに切り裂かれていた。きっちり槍は斬らずに避けてるあたりすごい。
「じゃあ次、行きまーす」
続いて俺が……。10メートルほどの位置まで寄り、適度な位置までひきつけて魔法銃の引き金を引く。
込めた魔法は衝撃特化の三式弾。いやぁ……、この前気絶しちゃったから効果の程がわからなかったんで、もう一回使いたかったのよ……。
火球はトロールの1メートルほど前で炸裂し、トロールの全身に小爆弾が突き刺さり、轟音とともに炸裂する。
「………」
トロールがひき肉になってしまった……。ちょっと威力が高すぎやしませんかね?
「サトルよ、ひょっとしてこの魔法、リンゴンのご令嬢の前で使わんかったか?」
「使いました」
「あぁ、イザベル様がご執心なのはこのせいもあったんですね……」
「え? でもこれ、ただの火球の改変ですよ?」
俺がそういうと、ヘレンとリリィをのぞいた3人がため息をつく。
「あのな、普通そうホイホイ魔法を改変出来るもんではない。
スキルレベルごとに使える魔法は決まっとるし、改変できてもせいぜい爆発半径や飛翔速度とかそんなもんじゃ。
今のはもはや新しい魔法といっても過言では無い。あのご令嬢は魔法使い系のようだし、おそらくリンゴンの家系自体そうなのではないか?
スキルの枠外の魔法を使えるような魔法使いが居るなら、そりゃ憧れるじゃろうし、ほしいじゃろうよ」
えぇ……、この世界の魔法ってそういうシステムだったの……。
スキルなかったから全然知らんかったよそんなん。
「リリィさん、トロールはまだ必要ですか?」
「んー、みんなも獲って来ると思うし、とりあえずこれでいいと思うー」
と、リリィが言うのでひとまず畑へ。
なんかもう魔王が居なくなったせいか、それともリリィが魔王になったせいか、なんとなーく緊張感がなく、森の深層だというのにだらだらとだべりながら歩く。
そんな中でリリィが首をかしげてポロっと言った一言。
「アリア、アリア、魔王と王様ってどっちが偉いのー?」
顎に手を当てて小首をかしげて、アリアさんに問いかける。
「そうですね。リリィ様はこの森の支配者ですし、同格といっても良いかもしれません。
兵力や国力では劣るでしょうが、そもそも人間と植物型の魔物では基準が違うでしょうし」
「そうなの?」
「考えてもみてください。配下の植物系の魔物には非戦闘員は居ませんし、丸腰、裸でも並の兵であれば5人以上でかかっても勝てるかどうか微妙です。
その上、食事は最悪、水とお日様があれば良いでしょう?
なので、そもそも国力として、食料や武器を計算する必要が無いんです。あればあったほうがいいんでしょうけど。
現金はもしその気があれば、アルラウネやマンドレイクの実は高値で売り飛ばせてしまいますから、いくらでも調達出来ますし……。
それになにより……」
そんなことを言っている間に畑に到着すると……。
すでに畑にはたくさんの双葉の芽が出ていた。成長早すぎません?
「兵士が畑で採れてしまいますからねぇ……」
本当に採れちゃう分ソビエトより怖えな……。
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