森に出る魔物
「こりゃあ……、ランドドラゴン丸ごと生け捕りか。これ生きたままでも売れるんじゃねぇの?」
「コイツが入る檻と運べる馬車を都合出来るなら売れるかもしれないですねぇ」
「まぁ無理だな」
解体班が到着し、冗談をいいつつ、ランドドラゴンの解体を始める。
解体班は10人ほど居て、ギルドの備品の魔法かばんも持ってきたそうな。
「おとーさん、血、もらってもいい?」
「……って言ってますけどいいですか?」
リリィの質問をそのままパーティメンバーにパスすれば、特に問題ないとみんなが頷く。
「一応血も売れるのじゃがな。別にわしらは金に困っとるわけでもないし」
「じゃあ、もらってくるね」
そういってリリィが解体班のもとへ行き、血抜きのためにナイフで首を切り裂いた部分へ蔓を潜り込ませ、一気に血を抜き出していく。
……、下手したらトン単位でありそうなんだけど、全部吸っちゃうつもりなのかなぁ……。
「おそらく、実を育てるのに栄養が必要なんだと思いますよ」
「頭の奴ですか」
「そうそう、頭についとる、お前さんの娘のためじゃな」
「そういえば、娘で確定なんですか?」
「おそらく確定ですね、アルラウネにしろマンドレイクにしろ、オスの個体は今まで報告にありませんし。
あの実を植えてみた人の話によると、アルラウネかマンドレイクしか生えてこなかったそうですし」
「厳密に言えば雌雄同体なんじゃないですか? 雄花と雌花が別れているタイプじゃ無いみたいですし」
「そうですね、多分自分一人でもやろうと思えば増えられるでしょうし」
解体風景を眺めながら、雑談を続ける俺たち。
話題はリリィ……というかマンドレイクを始めとする植物系の魔物の生態について。
こういう事結構研究してる人って居るもんなんだなぁ……。
魔物が生えてくるのがわかってるなら、植えてみる人なんて居ないと思ったけど……。
しばらく話すうちにも解体がすすみ、首からだけでは血抜きに時間がかかるということで、更に手足に傷がつけられ、リリィの蔦はそこからも入り込んでいく。
さすがのリリィでもこの巨体の血を吸い上げるのは結構時間がかかるらしい。
それにしても……、明らかに吸いきれる血の量じゃ無いと思うんだけど、一体どこに消えてるんだろうなぁ……。
まぁ、スキルでバカみたいに食える俺が入れるツッコミでもないか。
それに、今現在地下部分がどうなってるのかわかったもんじゃないし……。
なにか不思議な理屈があるのだろう。
「当分かかりそうですねぇ、解体」
「流石に外で一から十まではやらんし、そこまでかからんハズじゃ。シメて雑に分割して魔法かばんに突っ込んで、細かい所は持ち帰っての仕事のハズ……じゃったよな?」
「そうですね、だいたいそんな流れになるとおもいます。
分割までならせいぜい1時間程度ですかね。甲羅は……、どうするつもりかわからないですけど」
「なるほどねぇ……」
しばらく眺めていたが、手足と首、尻尾をバラしてかばんに詰め、次に甲羅の背側と腹側のつなぎ部分を長剣で切り離して背と腹に割り、中身のモツを別のかばんに詰める。
某猫型ロボのポッケと同じく、かばんの口よりはるかにでかいもんが吸い込まれるように入っていくのは、リアルで見るとなかなかに笑える。
容量自体はそこまででかく無いらしく、手足と尾と頭で一つ、背甲で一つ、腹甲とモツで一つで合計3つに分割して持ち帰るようだ。
ていうか、王都のギルドだけで備品に3つも魔法かばん持ってるってすごいな……。
まぁ、魔法かばんの値段もどの程度希少なブツなのかも俺は知らないけど。
ダンジョンでポコポコ出るのか、滅多に出ないのか、俺が空間収納を使えるから誰にも聞かなかったんだよなぁ……。
「解体も終わったようですし、私達も戻りましょうか」
ミーナさんの言葉にうなずき、解体班とつれだってボチボチ歩いて帰路につく。
「結局ハンマーはふれんかったのぉ……」
「俺なんかお茶の準備しただけですよ? せっかくフローラさんにいただいたんで、思い切りぶん回そうかとは思ってたんですけど」
「……おとーさん、リリィ、やりすぎた?」
不安そうな顔で服の裾をそっとつまむリリィ。何でこう、この子はいちいち仕草がロリっぽいのか。
「いや、冒険者業も工事現場も怪我をしないのが第一なんだから、安全に狩れるようにしてくれたリリィは何も悪くないよ」
ぽんと頭に手を乗せてなでなでと。身長は俺よりちょっと低い程度なんだけど、ついついなでたくなるんだよなぁ、この子……。
……よく見ると頭の金色の実が今朝より色鮮やかになってるなぁ……。ランドドラゴンの血のせいだろうか?
リリィはコレ、どこに植えるつもりなんだろう……。
また植木鉢かなぁ……。ただ、植えて置いといたら掘り返して持って変えるバカが絶対居そうなんだよな、ミーナさんいわく相当なお値段がつくらしいし。
育つまで見張ってなきゃだめなのかねぇ……。
「気を取り直して、明日こそ森の深層にいってみましょう」
「森の深層って、そうとう強いのが出るんですか?」
「出ますねぇ。といっても、相当な群れでなければ多分大丈夫ですけれど」
「トロールなら私でも秒殺できますからね。アルラウネは無理ですけど」
そういうのはアリアさん、確かに、アサシン系だから人間と同じ急所の敵相手なら得意だろうなぁ。
「ミノタウロスがちょっと面倒じゃが、奴らが群れで出る事はまず無いしの。せいぜい2~3までじゃ」
ミノタウロスといえば、だいたいストーリー中~終盤の強敵なイメージだけど、ここだとどうなんだろう。
でも乙級のフローラさんが面倒くさいっていうぐらいだから、強いんだろうなぁ。
「あとはトレントからの奇襲もあるから、面倒ってジャンさんが言ってたかな?」
いつの間に話していたのやら、そういったのはヘレン。
でもジャンさんって丙級だったはずだし、丙級でも行ってこれるってことは、ミノタウロスさんはそこまで強くないのかねぇ?
「トレントを相手にするなら、ハンマーより斧なんじゃよなぁ、素材として持って帰るなら、じゃが」
「幸いトレントでも数匹なら俺が持って帰れそうですからねぇ」
「武器の選択がなかなかに悩ましいの。ワシも斧は持っとるんじゃがのー」
「フローラさんの斧っていうとあの刃先にオリハルコンの粉が塗布してあるやつですよね?」
またシレっととんでもない物が出てきたな!?
「昔ダンジョンで拾った奴だの。本体は鉄じゃし、性能的にもちょっと切れ味がいいかな? 程度なんじゃよ。
なんとも中途半端でのぉ……」
「中途半端っていいますけど、トレントぐらいなら、一撃で真っ二つにするじゃないですか」
「普通の奴ならミーナも出来るじゃろうに。スキルなしのサトルでも魔力をしっかり練れば出来るわい」
俺っていつの間にかそんな人外じみた事出来るようになってたのか……。
まぁレベル自体は相当あがったしなぁ。
「ま、明日を楽しみにするかの」
フローラさんはそういって、わっはっはと、楽しそうに笑うのだった。
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