どうしてこうなった?
「なんでこうなったんじゃろうなぁ」
「リリィの強さが予想外だったんですよ」
「私の仕事、ありませんねぇ」
「私の仕事もそうありませんね」
「私の仕事も終わっちゃった」
「倒さないのー?」
裏返しになったランドドラゴンを目の前にして、遠い目をするリリィ意外の5人。
まぁ、うん……。リリィだししょうがないかなぁ……。
とりあえず、平原に来てランドドラゴンを発見する所までは順調でした。
なにせ遮蔽物らしい遮蔽物も無いし、高さ3メートルはあろうかという甲羅がノシノシ歩いてる姿は遠くからでも簡単に見つけられました。
ランドドラゴンが居るせいか、それとも平原にもともと魔物が少ないのかは、ここに来たことが無い俺にはわからないけど、ランドドラゴンに接近するまでも順調そのもの。
そこからヘレンが精霊化して接近、悲鳴を上げてランドドラゴンの動きを止める。
ついで、リリィがその隙に根を張って甲羅の下から土の壁で突き上げて裏返す。
ここまで予定通り。
そこから、リリィが蔦を出したかと思うと、四肢と首、尻尾の6つに絡みつき、引っ張りはじめたのだ。
そりゃもうぎゅうぎゅう。
リリィはSTRは低いから引っ張る力自体は素だと俺でも耐えられるぐらい弱い。
ただ、VITが高いため逆にリリィを引っ張ろうとするとピクとも動かない。
身体強化を行うとどうやらランドドラゴンでも振りほどけ無いらしいのだ。
頭もぐるぐる巻にされているせいか、魔法も使ってこないし、今やランドドラゴンさんは、地面に縫い付けられた標本のような状態になっている。
「お腹を割らなくても、首を切ってこのまま血抜きすればいい気がしてきました」
「そうじゃのう……。安いとはいえ素材として売れなくは無いからのー……。
血抜きは心臓が動いとる間にしたほうがええし……」
「ギルドの解体班を呼ぶのも手だと思いますよ? リリィさんが拘束しつづけられるならですけど」
「リリィは大丈夫だよ~?」
そうだよなぁ……。リリィは根を張ってるわけだから、地下から養分吸っててお腹も空かないだろうし。スタミナ勝負だとランドドラゴンの分が悪い。
リリィはスタミナが尽きないわけだし……。
首や手足を動かしたら動かした分だけ外に引っ張られてそこから戻せないみたいだし、見てて可愛そうになってきた。
「ピクとも動きませんから、この状態ならいかようにでも料理できますね。私でも止めをさせそうです」
そういうのはアリアさん。斥候系のアリアさんでも勝てそうなぐらいかぁ……。
まぁ、首が引き伸ばされてるから、刃さえ通れば首の血管を切ればそれでどうにかなっちゃうのか。
「やれやれじゃの……。ちょっと休憩してから、呼びに戻るとするか」
「私が行きましょうか? 足の速さには自身がありますし」
「お願いします」
そういってアリアさんが体に魔力を巡らせたかとおもえば、ものすごいスピードで走り抜けていく。
はっやいなぁ……。マッハいっちゃうんじゃないの? 流石にそれは言い過ぎか。
「アリアさんが帰ってくるまで一休みですね。テーブルと椅子、お願い出来ますか?」
ミーナさんに言われるままに、テーブルと椅子を収納から取り出して設置。
直ぐ側にランドドラゴンが居るっていうのに気楽なもんだなぁ……。
まぁ、ランドドラゴンがよく使う土魔法は、リリィが根を張ってるせいで地面に干渉できないみたいだし、口もギッチギチに蔓が絡まって開かなそうだし、すでに完全に身動き取れなくなってるみたいだけど。
「サトルさん、クリーンお願いできます?」
「あぁ、わしも頼む」
自分でも出来るハズのミーナさんとフローラさんが何故か俺にクリーンを頼むのは理由がある。
俺自身、この前モンスターの血抜きしてるときに初めて気づいたんだけど……。
途中で催して、用を足しに行こうかと思い、自分にクリーンをかけた。血まみれの手でご立派様に触りたくないし。
そしたらあら不思議、腹の中がきれいにクリーンされちゃったらしく、便意も尿意も綺麗サッパリ……。
と、言うのをフローラさんに話したら、クリーンを頼まれるようになった。
普通はクリーンの魔法でもそんな事にはならないらしい。
冒険者業において、外で便所に行かなくてすむなら行かないほうが絶対に良い。と、フローラさんにもミーナさんにも言われました。
羞恥心<<<<命を大事に、らしいので割とストレートに頼まれる事も多い。
なお、ヘレンとリリィについてだが、ヘレンはどうやら、食ったものは全部魔力に変わっちゃうらしく、なんと便所に行かない。
リリィについては何故だか謎だけど、やはり便所に行く必要が無い……らしい。フローラさんいわく……。「草はクソせんじゃろ」とのこと。おっしゃるとおりで。
でも草は口から飯食わないんだよなぁ……。ほんとにどうなってんだろ。
この世界は不思議で溢れてるなぁ……。
「そうじゃ、面白い菓子が手に入ったからちょっと食うてみよ」
俺がテーブルと椅子に、ティーセットとお茶請けを段取りしながら、とりとめもない事を考えていると、フローラさんからなにかお菓子らしきものを手渡される。
1センチくらいの茶色い立方体。
ココアの粉をまぶしたお菓子のように見える。バレンタインなんかによく見るあんな感じの。
「チョコレートか何かですか?」
口に放り込む。うん? 中身は飴玉かなんかなのか、ちょっと硬いかもしれない。
見た目より甘さ控えめで美味しい。
ヘレンがいれてくれたお茶と一緒に食べるといい感じ。
「……。普通に食うのぉ?」
「フローラさん、一体何を……?」
「ミスリルの塊に細かくした鉄サビの粉をまぶしたもんじゃが?」
ヘレンの質問にしれっと答えるフローラさん。ミスリルですと!? もはや食い物ですら無いじゃん!
「ぶほぉ!? なんてもの食わせるんですか! 普通に飲み込んじゃいましたよ!? 腹壊したらどうしてくれるんですか!」
「お主が腹壊す様子がもはや思い浮かばんわ。」
「普通にミスリルの塊を噛み砕けるってどういう事なんですか……」
ミスリルの硬さというか、をフローラさんの次によく知ってるであろうミーナさんが、呆れた様子でそういう。
呆れられても俺のせいじゃないんですがね。
「この分だとランドドラゴンの甲羅でも噛み砕けるんじゃないかのー……」
「あんな物かじろうとおもったら顎がハズれますって」
「しかし、お主には餓死だけはありえんのがこれで証明されたの」
「水が無いと死にますが……」
「水は食べ物と違って魔法で出せるよね?」
ヘレンさんのおっしゃるとおり……。確かに石や土さえ「何でも美味しく」の何でもの範疇だとしたら、餓死はありえないなぁ……。
栄養として腹に貯まるかは別としてだけど。検証なんかしたくもないし
でもまぁ、毒草、毒キノコさえもしゃもしゃ食えるから、ある意味生き残るという意味では最強のスキルかもしれない。
「さて、解体はギルドの者に任せるとして、どれだけ売ってどれだけ手元に残すかじゃな」
「ちなみにこいつって食えるんですか?」
「安心せよ、うまいと評判の高級品じゃ。サトルには食わせがいが無いがのー……」
「何でも美味しく食えるっていっても、『美味いかな?』『美味い』『めっちゃ美味い!』と、同じ美味いの中でも格差があるんで、美味しい物は歓迎したいんですがね?」
「まぁ、肉はいくらかこっちで引き取るとしてじゃ、甲羅は武具に使ったりするが、どうするかの」
「重いだろうしほしくないなぁ……」
「そうですね、ランドドラゴン素材で防具を作る方はあまりいらっしゃいません。
重量もありますし、加工難度の都合でだいたいが武器ですね。
たいてい魔法や攻撃で甲羅はボロボロなので、今回のような美品だと高価買取してもらえるとおもいますよ」
「おお、それは期待できそう……。お金はともかく……、そうですねー。いくらかの肉と、牙とか武器に使えそうな所をいくつか残してもらう感じで後は売り払っちゃいますか」
それで皆頷いたので、あとは解体班の到着をのんびりと待つばかりとなった
フローラさんは勝手に動いてくれるのに、他の子がなかなか動いてくれないので影が薄くなりがちです。こんなはずではorz
さて、今回も最後までお読みいただいてありがとうございます。
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