無芸大食の真価
本日は例によって森で戦闘訓練中。
ミーナさんにステータス鑑定をしてもらった結果……、ヘレンは支援役って所で落ち着いた。
なぜかといえば、精霊憑依という種族特性が生えていたからだ。
レベルが上って生えたんだろう。
さて、精霊憑依とはどういうスキルかというと、ラノベやなんかによくある通り、大雑把には誰かに憑依して力を分け与えるというもの。
詳しく言えば、ステータスを上昇させるとともに、魔法スキルと種族特性が憑依された側にも使えるようになる。
よくあるように、四大属性の精霊が憑依すると、対応する魔法の威力が上がったりであるとか、火や水を自在に操ったりする。というのは、精霊の種族特性にある魔法強化系のスキルが要因らしい。
絶叫とか金切り声との相性を考えると女性の方が良い上に、そもそもデフォルトでデッドリースクリームという絶叫スキルを持つリリィが良い、ということで憑依される側はリリィということで決定。
なおこの3つのスキル、同時使用が可能という恐ろしい仕様だった。
それはさておき、ミーナさんとフローラさんが引きずり回してつれてきたオークやトロール相手に、憑依状態のリリィが攻撃をしかけるという訓練をやってみたんだけどこれがまぁ……。
無理ゲー。
こんなもんどうやって勝つんですかね?
まぁ、燃費はすこぶる悪いらしいけど。そこは俺がポーションがぶ飲みして、ドレインで俺から吸うっていうね。
先生、ポーション代がバカにならないです……。
「そろそろお昼にしませんか? 今日はお昼作って来たんです」
「え、嘘じゃろ?」
午前中の訓練に一段落つけ、そろそろ腹の減ってきた頃に、ミーナさんからそんな申し出があった。
それに対して、真っ青になった表情を見せるフローラさん。
「本当です。サトルさん、朝に預けた袋を出してもらえます?」
「あぁ、これですか?」
空間収納から、大きめの買い物袋ぐらいの袋を取り出す。中身は……。
サンドイッチと瓶詰めにされたスープが数個に、スープ用の木皿。
いわゆるよくイメージする冒険者の昼飯じゃあないなぁ。
冒険者飯といえば干し肉かじりながら水飲んでるようなイメージ。
「おお、ありがたいです」
さっそく、サンドイッチを手にとってかじりつく。
「待つのじゃあ!?」
フローラさんの叫びに首をかしげる。普通に美味しいサンドイッチなんだけどなぁ。
「……、なんとも無いのかの?」
「美味しいですよ?」
「嘘じゃろ……、ミーナは凄まじい飯マズだったはずじゃぞ……」
そういいつつ、サンドイッチを手にとって恐る恐る口に運ぶ。
普段の豪快な様子とは違い、遠慮がちにパクリと口に含み……。
一秒ほど間があったと思えば少し離れた位置に移動してしゃがみこんだ。
「うぼええぇぇ……」
「嘘でしょ!?」
ガチで吐いた!?
その様子を見て、食べようとしていたリリィとヘレン、アリアさんもピタリと手を止める。
「……昔と何にもかわっとらん……。何をどうやったらサンドイッチがここまでマズくなるんじゃ……」
水が口の端から溢れるのも気にせずに、豪快に水筒から水を口に含み、吐き出す。
そんな酷い味しなかったけどなぁ……。
「この前サトルさんが美味しいっていって食べてくれたので、少しは上手くお料理出来るようになったと思ったんですけどねぇ……」
ミーナさんが遠い目をする。あぁ、自分がメシマズだっていう自覚はあったんですね。
しかしそうすると、何で俺普通に美味しく食べれるんだろう?
「サトルのスキルのせいじゃないのかの?」
「無芸大食ですか? そういえば、スキルの説明は……」
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無芸大食
何でもおいしく、一杯食べられる。
他のスキルを覚えられない。
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「それじゃ、絶対その『何でもおいしく』効果じゃ。間違いない」
「何という便利効果」
「何でも……、じゃろ? んー……」
なにかを考えるように、フローラさんが周囲を探し始め、なにかを拾ってくる。
「ちょっとこのキノコを食うてみよ」
差し出されたキノコは見た目はしいたけ風で、どこにでもありそうな感じのキノコだ。
しかし何故? と首をかしげながらも、口に放り込む。
生だというのに旨味が強くて美味しい。食感も割とシャキシャキしていい感じだ。
まぁキノコの匂いはちょっときついけど十分食える。バター焼きにしたら美味そう。
「普通に美味しいキノコですけど」
「今の、毒キノコですよね? 食べるとお腹壊す程度の毒ですけど。まぁ、死ぬほどくだりますけど、すぐ収まりますし」
「何てモノ食べさせるんですか!?」
「美味しく食えるなら毒も効かんのじゃないかと思っての」
「おとーさん、大丈夫?」
「フローラさん、流石にそれはちょっとどうかと……」
心配してくれるリリィとヘレンが癒やしだ。
「影響があれば、ステータスの簡易表示に症状が出る前から出てきますよ?」
ミーナさんの言葉に、簡易表示を注視してみるが、今の所何にも出てきていない。
「まぁ、食っちゃったもんは仕方ないですし、しばらく様子を見ましょうか」
ため息をつきながら、ミーナさんのサンドイッチをかじる。
相変わらず普通に美味しく感じられるのが不思議だ。
製作者のミーナさんは普通に食べてるものの、フローラさんが吐いた様子を見ていた他の3人は、俺が用意していた食料を食べている。
メニューは、屋台の串焼きとかパンとかの無難な物。
フローラさんも自前で持ってきていたパンと、そこらへんの木から取ってきたらしいりんごっぽい木の実を食べている。
「そろそろステータスに表示が出てこんか?」
「いえ、何にも」
食事を終えてしばし休憩し、例のキノコを食べてから1時間ほど経過しても影響なし。
どうやら、俺は毒を食べても平気らしい。
「じゃあ、コレはどうじゃ?」
そういって差し出すのは俺でも分かる。魔力草だ。
「いやいや……。それって冒険者ギルドで食っちゃ駄目って言われましたよ!?」
「うん、まぁ。普通の人間は食ったら魔力中毒でしばらく動けなくなるんじゃがの? 食いすぎたら死ぬまであるし。
が、まぁ、少量じゃ死ぬ事も無いし、過ぎた魔力はヘレンに吸い出してもらえば大丈夫じゃ。
物は試しで食ってみんか? ワシはおそらく大丈夫だと思うが」
「もう……、他人事だと思って」
渋々ながら、魔力草を口に運ぶ。食ってみた感じは、ミントのような爽やかな香りとともに、甘みと酸味が少しあり、美味しい。
ステータスの簡易表示に視線を向れば、MPの現在値がどんどんと増えていき……。150%……、200%……、250……おいおい、どこまで増えるんだよ……。
魔力ポーションって一体何倍希釈なんですかね……?
「なんとも無いか?」
「なんとも無いですねぇ……。ステータスのMP数値は異常ですけど」
「異常ってどれぐらいじゃ?」
「300%越えました」
「魔力中毒は?」
「ステータス上では表示は無いですねぇ……」
「顔色に変化も無いですし、普通に話が出来ている時点でなっていないのは明らかですね」
そのあとさらに追加で魔力草を食べてはみたものの、1500%を越えても魔力中毒が起きる兆候は全く無し。
いくら食っても大丈夫だろうという結論がベテラン冒険者組の中でくだされた。
「ちなみに味は?」
「美味しいですよ? くどくないですし、おやつ感覚でいくらでもたべられそうです」
「魔力草ってとんでもない味がするハズなんですけど……、そういえば魔力ポーションも美味しそうに飲んでらっしゃいましたね……」
「アレも吐くほどマズいハズなんじゃがのー」
そうだったのか……。
「おとーさんすごい」
「昔はマズいものはマズかったんだけどなぁ。スキルのせいで味覚が変わったのかな?」
「でも、サトルさんはもう料理しないほうがいいかも?」
ヘレンの言葉に首をかしげる。
「だって、何でも美味しいなら味見してマズいのがわからないでしょ?」
「あぁ……」
言われてみればそのとおりだ。
結局このメンバーの中で俺とミーナさんに料理禁止令が出され、料理は主に料理系スキルを持つアリアさんが担当する事となった。
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