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目覚めると知らない天井でした

異世界生活??日目


目が覚める。


ゆっくりと目を開けばそこは宿とは違う天井。


どれぐらい眠っていたのだろう? 顔面を焼かれて良く生きていたものだ。


「おとーさん? おとーさんが起きた!」


飛び込むようにリリィが俺に抱きついてくる。手を伸ばし、頭を撫でると、グリグリと俺の腹に顔を押し付け、抱きつく力が強くなる。


正直痛い。


「身体に痛みはない?」


そういって俺を覗き込んできたのはヘレン。


「……ぁ」


返事を返そうとしても、声がうまくでない。その様子を見てヘレンが水を飲ませてくれるものの、まともに声が出る様子は無い。


しばらく試すうちに、どうにか顔を近づければ聞こえる程度の、かすれた声は出るようになった。


「炎で喉もやられたんじゃろ、あのイザベルというご令嬢も、治癒魔法は得意じゃないから命をつなぐのがやっとだったと言っておったし。


しかし、大物を助けたものだの? リンゴン侯爵家のご令嬢ぞ?」


フローラさんも居たのか。ゆっくりと起き上がりそちらを見ると、なれた手付きでりんごの皮を剥いていた。


Tシャツの胸に縦書きで『背中』と書かれているあたり相変わらずだ。


改めてゆっくりと回りを見回すと、宿に比べると相当に広い部屋だ。10m角ぐらいはあるのかね?


自分の身体に視線を落とすと片腕につる草が根を張るように潜り込み、それはリリィの身体につながっている。


「リリィに感謝するとよいぞ。何しろ4日ほど起きなんだからな。ソレで直接栄養を送っていたらしい」


つまり点滴って事ですか。なるほど、確かに腹は減っているものの、そこまで体調が悪い感じは無い。


りんごをスパスパと食べやすいサイズに切って皿に盛り、俺に渡してくれるのでありがたく口に運ぶ。おいしい。


しかしなぜみんながここに?


「フローラさん達とお買い物をしてるときに、侯爵家の使いの方が来て、サトルさんが死にかけてるから来てくれって教えてくれたの」


「ワシらもお主が倒れたと聞いて心配になっての、こうして侯爵家にお邪魔しとるというわけだ」


ヘレンとフローラさんがこたえてくれる。なるほど、俺のギルド証から冒険者ギルドに照会でもかけたのかな?


良くどこで買い物してるかわかったなぁ……。


「サトル様、気がつかれたんですか?」


噂のご令嬢、イザベルが部屋にやってくる。背後にミーナさんが居るし、多分俺が起きた時に呼びに行ったのだろう。


「申し訳ありません、私が不用意に馬車の外に出たために、サトル様に身代わりになっていただく事になってしまいました」


そう言って頭を下げる。


ご令嬢の姿に何か違和感がある……。目の下に隈はあるし、えらく疲れた様子だ。


「それで……ですね。お礼というとまたおかしいのですが……」


そういってご令嬢が俺に差し出したのは、目と口の部分に三日月型の穴が空いている真っ白な仮面だ。


ハロウィンなんかで見るようなのっぺりしたアレだ。しかしなぜこんな物を俺に渡そうとするのか首を傾げる。


その下にある金色のモサモサしたものは……、もしかしてヅラ?


「あの……ですね……。私の治癒魔法では、お顔のやけどが直せなかったのです……。


ポーションも、先の賊の襲撃で護衛の兵士が受けた傷を治すのにすべて使ってしまっていて……」


「そうじゃな、正直言えば、その顔で街に出ればアンデットに間違えられて討伐されかねん。そんな顔になっておる。


髪もほとんど壊滅しておるし……」


確かに顔にひきつるような違和感はあったけど、そんな事になってたのか……。


そうかー、ハゲちゃったかぁ……。


「ですので、お面と、カツラを用意しました」


「仮面とカツラといっても、とんでもない代物を用意しましたね」


「そうじゃな……、その白い面はミスリルとアダマンタイトの合金じゃし、付与魔法をどれだけ盛ったやら……。


カツラにしても、その素材……、処女の魔術師の髪、それも櫛を通した時に抜けた物ではなく魔術師自ら髪に魔力を込めて切った物。


ていうか、ご令嬢の髪じゃろ? これ……。本人が自分の髪に付与をかけるなら相性バッチリじゃし……」


あぁ、それで違和感あったのか。確かにイザベルの髪は肩の下でバッサリと切り落とされている。森で見た時はたしか腰まであったはず……。


「一応鑑定してもいいですか?」


ミーナさんがイザベルに確認を取り、イザベルがうなずくと、どうやら魔法で鑑定するらしい。


その仮面とカツラの上に魔法陣が浮かぶ。


「国に接収されかねない性能ですよこれ……。顔の傷が治ったとしても、つけない理由が見た目以外無いレベルです」


「大丈夫です! サトル様専用にしてありますからっ!」


「専用化というか、もはや呪詛ですよ……。サトルさん以外がつけようものなら、取り殺されかねないです。


というわけでもらうと良いと思います。もらわなかったとしても壁の飾りになるだけですから。


制作時に何本ポーションを飲んだんですか……。それにこの数を付与するとなると……。いえ、いうのはよしましょう」


なにそれ怖い。というか、何を言いかけたかすごい気になるんですが。


まぁ、俺がつけて大丈夫なら。……あれ? この仮面、紐を通す穴みたいなものもなんにも無いけど……。


「魔力を通せば顔に張り付きますし、着脱はかんたんに出来ますよ」


言われた通りに仮面を顔にもっていって魔力を通すと、ぴたりと顔に張り付き、合金製だという仮面は全く重さを感じない。


視界も何もつけていないのと同じように見える。魔力を通して顔につけると裏からは透明に見えるのか……?


あとは頭にヅラをのせて完成と……。『顔に傷があるから仮面つけてます』を素でやることになるとは思わなかった。


「今他国から傷痕でも治せる神官を呼びにいかせていますので、それまで辛抱してください」


いや、他国からそんな神官引っ張ってくるって一体いくらかかるのさ……。金額を想像すると身体が震えるんですが……。


「侯爵家の名にかけて、恩人であるサトル様のお顔がそんな事になったまま放置なんてできません!


我が家の兵なら私の警護をし、戦うのは義務ですので恩とはなりませんが、サトル様は我が家とは縁もゆかりも無い方ですので……。


なので絶対に治して見せます!


……残念ながら往復で頑張っても2ヶ月はかかってしまうので、おまたせすることになってしまいますが……。」


そんな俺の言いたい事がわかったのか、すごい勢いでそう言われてしまった。


「お布施で金貨の500枚程度ですので、安い物ですわ!」


5000万てあーた……。あー、でも領地経営してるであろう侯爵様からしたら端金なのかね?


「しかし、その仮面とカツラで軽く金貨1000枚行くんじゃないかの。何の付与がされとったのだ?」


「魔法補助系と状態異常耐性ですね。仮面は状態異常耐性がメインで、カツラは魔法補助系がメインに付与されてます」


「それと、お顔につけた状態で魔力を流すとリンゴン家の紋章が浮かび上がりますので、ソレを見せると街門や貴族街への出入り、我が家への出入りができます。顔を見せるように言われた時に、仮面を外さなくてもすみますよ」


この紋章です。と、イザベルさんがペンダントに描かれた紋章を見せてくれる。


教会なんかにありそうな大きなベルが2つ。


リンゴンって家名あれか! 鐘の擬音が元ネタかよ!


いやまぁ、ツッコミはこころの中だけにとどめとくけどさぁ……。


「なるほど」


いいのかなぁ……そんなに色々世話焼いてもらっても……。


鏡を見せてもらうと。うん、真っ白の笑顔の仮面だけどぶっちゃけむっさホラー。不気味ってレベルじゃねぇぞ。


「さて、この後どうする? しばらくここで休養させてもらうもよし、身体に問題が無いなら冒険者業に戻るも良し……」


ここに居させてもらうのもいいかもしれないが、いまいち座りが悪いというか、居心地が悪いのは事実だし、冒険者業に戻りたい気持ちもある。


それをヘレンを通じてイザベルさんに伝えてもらう。


「あの、お父様もサトル様に是非お礼を言いたいとの事なので、会って行っていただけると……」


それぐらいなら、と、うなずけば、すぐに呼んできますと、イザベルさんが部屋からでていき……、しばらくするとすぐにイザベルさんと一緒に中年のダンディなおじさまが現れる。この人が侯爵様だろう。


頭は白髪が多少混じっているものの、顔つきはキリっとしていて背筋もシャンと伸びている。挨拶をしようと立ち上がろうとすれば、手で制され、ベッドで身体を起こした俺の前に椅子をもってきてそこに座る。


「はじめまして、イザベルの父のイザーク・フォン・リンゴンだ。娘を身を挺して守ってくれたと聞いている。ありがとう」


どう回答すればいいのだろう? ひとまずどういたしましてと言ったものの、おそらく声は届いていないだろう。


聞こえていてもかすれた声で何か言ったというのがかろうじてわかる程度か。


「リンゴン様、サトルさんは喉も焼かれたようで、声がまともに出ないのです」


ミーナさんが横からフォローしてくれるのがありがたい。


「そうか……。娘から状況は聞いたよ。君が居なければ危ない所だったとね。その仮面とカツラは私と娘からの気持ちだ、使ってやってほしい。


どちらもイザベルが職人の所に押しかけて制作を依頼し、つきっきりで付与を行った物だ。


だが娘を助けて大怪我を負った君には安すぎる。


これから、何か困った事があればリンゴン家を頼るといい。力になれることもあるだろう。


ふむ……、そうだ。君はたしか異界から来た者の一人だろう? 陛下と何か契約を交わさなかったかい?」


陛下、王様と契約……? あー……。あれかな。


空間収納から、羊皮紙を一枚取り出して、それをイザークさんに見せる。


「やはり君だったか。ここに書かれたアリアという子は確か諜報関係の所属でね。君に知られて困るような情報も当然もっているわけだ。


今は引き継ぎを終えて諜報と関係無いメイド業をやっているだろう。1ヶ月経てば情報の鮮度が落ちて重要度がぐっと落ちるから、そのための1ヶ月でもあったわけだよ。


この契約書を少し預かっていてもいいかい? 責任は私持ちで早めに君の所に行くように都合しよう。もう20日になるのだし、そろそろいいだろう。


君も丁級冒険者となれたようだし、もう金にも困っていないだろう?」


確かに困らない程度に稼げるようにはなったがいいのだろうか? 首を傾げると、任せておけ、とうなずいてその羊皮紙をメイドさんにあずけ、自らも立ち上がる。


「さて、もう少し話していたいところだが、君も病み上がりでは辛いだろうし、喋れない君に私が話し続けるのも悪い。ここで失礼させてもらうよ」


そういってイザークさんは部屋を出ていった。


ちなみに俺が異世界人っていうのをイザークさんに暴露されてしまったわけだけど……。みんなミーナさん経由で知ってたみたいでリアクションは薄かった。


ミーナさんは身分証を見て知ってたんだってさ。

今回も最後までお読みいただいてありがとうございます。


もしよければ評価、感想等いただけると嬉しいです。

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